お客様の懺悔
おはようございます。
春らしくなってきましたね。
寒暖の差はまだまだありますので、皆様体調にはお気をつけを。
あの日から私は夫に会えていない。今まで常に側にいて当たり前の存在を他人に奪われるこれ程の屈辱は味わった事はないが、抵抗もできなかった。
あの施設には化け物が居る。
確かにイチゴ様が出向かれるのは困る。怖いけど、同族だし、自分の夫を取り返す為ならば対することもできた。
でも、あれは無理だった。二人同時は…いや、あの威圧は一人でも無理だ。戦う気がしない。だから逃げた。期間は解らないが、もともと一人で旅もしたかったしー。帰ってくる頃には会えるだろうと簡単に思っていたんだ。
旅は散々だった。
天候は優れず、エルフならば自然に好かれる筈なのにそれが効かない。夜営の為にテントを張っても水没する位に雨が降ったり、雷が近くに落ちたりで、眠れない日々が続くもんだから男あさりなんてしてる暇がなかった。旅は1ヶ月ももたず…2週間程で切り上げてカルミアに戻った。
そして、フィーリングカップルに夫に会わせろと抗議に行った。当たり前の権利だと思っていたんだ。あっちが不法に夫を監禁しているのだ。全くエルフの大使館にも報せないとな。まずはもう一度フィーリングカップルに抗議してからだ。抗議を受け入れなかったという事実も必要だからな。
「あなた様の入館は許可されていません。お帰りください。貴女の指導係から連絡がある筈です。それまで待機なさっておいて下さい。」
門番から弾かれた。今までそんなことどの国の施設でもなかった…。
「な!?連絡なんかなかった!それに、2週間程この国に居なかった!」
「イチョウ殿が連絡がつくように所在を明らかにしておくようにと通達されていた筈ですが?」
「そっそれは…」
確かにあのお見合い係が偉そうに言っていたが…なんで私がお見合い係の言うことを聞かないといけないんだ!
「人の夫を勝手に監禁してる奴らの言うことを聞く必要がないはずでしょう。夫に会わせて!っていうか返して!」
「2週間一度もこちらに伺わずほったらかしにしていたのに今さら抗議ですか。それはそれはたいそうご立派な伴侶で。」
この門番むかつくな!仕方ない力を…
「そこまで。初めまして。指導対象者様。私が貴女の指導係となりました。ヤマブキと申します。これからよろしくお願いします。」
ピリッとした雰囲気のスーツに身を包んだにん族が現れた。
「ストレは…私のマネージャーはどうしたのですか?」
「彼女はこの事態を招いた責任を取り、担当を外すことと謹慎と再教育の処分を受けました。」
責任!?なんで彼女が!
「何故!私の夫を勝手に監禁したのはお見合い係のイチョウでしょう!そっちを責めてくださいよ。」
「可笑しなことを仰いますね。この処置はお見合い係が法に載っとり手続きを踏んで行った正式な物です。それに抗議し、また、手続きを行わせる事となったマネージャーには責を取らせることは当たり前です。」
そんな…法律?知らない。ストレも何も言ってなかったし…。それにこの新しいマネージャーさっきから私の言葉なんて聞く気ないような…。
「じゃあ貴女が私の新しい。マネージャーなんですか?」
「いいえ。貴女のマネージャーはストレを解任したあと決まっていません。私は貴女の指導係と申し上げた筈です。」
「じゃあ…」
何なんですか!貴女はなんか…すごく怖いんだけど…
「その説明の為にご連絡を取りたかったのですが貴女の所在が解らない状態でしてね。フィーリングカップルに登録されていた宿にはいらっしゃらなかったでしょ?」
「旅に…出ていて。」
「へぇ。そうですが。良い旅でしたか?」
「それは…」
何か知ってるのか?
「でしょうね。一週間前に渡すはずでした書類をお渡ししておきます。それにご記入の上で明日こちらへお持ちください。」
「明日!?」
こんなに分厚いのに?目を通すだけでも1日かかるだろう!
「本来でしたら3日は猶予があったのですが…指導対象者様は2週間のロスがありますのでもう猶予が無いのですよ。あと、それ嘘を書くとバレる代物になってますからご注意下さいね。もう、嘘を一つ一つ指摘する時間等無いのですよ。ではお引き取りを。明日に間に合いませんよ?」
顔に早く帰れと言っているのが全面に出ていた。明日になんか間に合う筈がない。私はその足でエルフの大使館に向かった。
いつもは静寂な雰囲気なのに喧騒としている。
何かあったのだろうか…。
私は不思議に思いながら足を踏み入れた。
ブクマ、評価宜しくお願いします。
次回もエルフさんの視点が続きます。
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