3組目 3
おはようございます!
今回から本編に戻ります。
いちょうくん頑張りますよー。
「コール確認しました。ナノハナです。手が空いているので直ぐにそっちに行けます。」
「同じく。アイだ。直ぐに駆けつける。」
「ありがとうございます。お待ちします。」
「本部長の柚子だ。コール確認した。今ナナカマド様に話を通している。二人からの了解が得られたら連絡をくれナナカマド様をお連れする。」
「本部長、ありがとうございます。」
魂の休息とは運命の糸を切って無しにするのではなく、幼体に戻して記憶をリセットすることでもない。魔道具を使って本当に眠らせるのだ。一時的に冬眠して貰うようなことだと思っても良い。身体に影響がない程度の期間なので休息と言われている。幸せな夢を見ながら…。心が回復するように。
僕は一度部屋を出て、先輩達の到着を待った。
二人とも走ってくるのがわかる。それだけ重要なコールの一つなのだ。
「待たせたな。」
「お待たせしました。」
「いえ。まずはこちらを」
僕は書類を渡し、二人が読み込む迄待った。
「浮気か…。まぁ。努力は見えるが…しかし毎回離婚をちらつかせて納得させているようだな。」
「ですが、最初の10年はお客様も我慢していたようですよ…。まぁ。途中から変な方向に努力している様ですが?一回だからって浮気して良いとは言いませんがね。イチョウ?どのように感じたの?」
「ヤバい感じがしました。ピリピリと肌に…」
「決まりだな。」
「ええ。ナノハナは了承します。」
「俺も。アイは了承する。」
「本部長。先輩方二人の了承が得られました。ナナカマド様をお願いします。」
「解った。誰も部屋に入るなよ。」
「はい。」
二人の了承が得られたらナナカマド様が魂の状態を確認する。その結果で魂の休息を実施するか完璧に決まる。糸を切るなどの処置の時の段階はもっと複雑だ。教会やカルミアの王族まで声をかけなければならない。
「ナナカマド様の確認があった。色が真っ黒になりかけているそうだ。傷が無いことが幸いだな。俺が今から魔道具をそっちに持っていく。期間は取りあえず3ヶ月だ。」
僕達は本部長が来るまで部屋の外で待った。この時間がいつも長く感じる。出来ればこんなことをご利用者様にしたくは無いが…今ここで動かなければ恐らくもっと酷いことになる…。
「待たせたな。これが休息の魔道具だ3人共確認してくれ。それともう一度説明しておく。今回お見合い係のイチョウより魂の休息のコールがあり、お見合い係アイとナノハナの了承が得られた。ナナカマド様には本部長である私から要請を行い魂の状態確認を行って貰った。結果は魂の状態が傷こそ無いものの色がかなり悪いとのこと。本部長の権限により、魔道具の使用を許可する。イチョウ、アイ、ナノハナ異論はあるか?」
「イチョウ異論ありません。」
「アイ異論無し。」
「ナノハナ異論ございません。」
「イチョウへこの魔道具の使用を許可する。ご利用者様への説明後魂の休息を行え。私達3人は隣部屋から窓越しに見ているぞ。」
「了解いたしました。」
僕は本部長から魔道具を受け取り部屋へと入った。何だろう…これを渡された時にいつも思うのだが、この魔道具が異様に重い…。
「ご利用者様。そのままで私の話をしっかりと聞いて下さい。私は今回の面会で貴方の心の危うさを感知しました。とても不安定です。それは貴方のせいだけではない。心が頑張りすぎて疲れてしまっているのです。今は少しだけで良いのです。心を休めましょう。色んな事を忘れて。心が少しでも元気になるように温かい夢を見ましょう。よろしいですか?」
ご利用者様は目を閉じているけれど僕は閉じた目蓋をしっかりと見つめて声をかけた。目元からは涙が溢れている。
「うっ…いいの?投げたしたとか言われないかな?俺…休んだらまた、頑張るからさ。少しでいいんだ。休ませてくれるか?」
「ええ。大丈夫ですよ?心配しないで。安心しておやすみなさい。スリープ。良い夢を。」
僕は魔道具を少し回してダイアルを3に合わせ、スイッチを押した。
「イチョウさん…ありがとう。」
どうかこの時間がご利用者様の心の糧となります様に。
浮気を繰り返す人はもう中毒症状みたいな感じですよね。
本当に失って初めて自分のしてきたことに気づく。
彼らの着地点はどうなるのか…