2組目 5
謹賀新年!
今年もよろしくお願いいたします。
作者は正月はひきこもーりです。仕事には行きま
すが…。遊びに行くという行為にだいぶ熱量が必
要なタイプです。
なので、基本もひきこもーりです。巣籠もりをと
言われる前から巣籠もっております。
狼少年のお客様に僕は今日初めて会う。この人との接触は後回しにされてきた。不確かな情報を話しても不安になるだけで良いことはないからだ。
只でさえドワーフ族の番に対する忌避感は強い。エルフ族も結構だが…。
何故ならこの法律ができる前は番を見つけたらほぼ誘拐の様に連れ去るだけの無法地帯だったからだ。本人の意思など聞くこともなく、犯罪にも当たらない状態だった。しかも相手は強い奴らばかり…ペンタス時代ではこちらも禁忌の魔法で他国をずっと抑圧していた為…声高には言えないが…ドワーフは違う。国でも無理やりにならないように何とか対応しようと交渉したり、騎士団を当てて捕まえようとしていたようだが…それも獣人にのみ。魔族やドラゴン族、竜人族に歯が立たなかった。ドラゴン族に至ってはドワーフの赤子を誘拐したばかりか虐待していたクズもいる。これはカルミア国になってから発覚し、このフィーリングカップル設立の法案が作られるきっかけとなった事件の一つだ。だから未だに拒否感が強い人々が多いのだ。
マネジャーはドワーフ族のスイレンさんに任せられた。担当していたカップルは無事ご成婚となったそうだ。心癒されるニュースだ。
部屋に入るとお客様と付き添いのドワーフが…。このカルミアで鍛冶職人をしているバイモ親方だ。この人…実はドワーフ前国王の王弟なのだそうだ。ドワーフのロイヤルが何故カルミアで?と思うが…うん。居ると思ったよ?
「始めまして。お客様とお付き添い様。この度は運命に出会われたとのことおめでとうございます。私は見合い係のイチョウと申します。こちらは貴方の担当マネージャーとなります。スイレンです。よろしくお願いします。」
「めでたくねーよ。」
うん。親方?はぁー気持ちはわかるけど…少し黙っててくれるかな?
「運命のお相手に出会えることは神からのギフトですから。その様に頭から否定なさいますな。お客様の不安を更にあおるだけですよ。」
「師匠は私を心配してくれているだけなんです。だから…その…大丈夫です。私も番には理解しています。この国で教育を受けてきましたから。」
「お客様のご理解に感謝いたします。本来であれば私の挨拶の後はマネージャーに任せているのですが…今回は通常とは異なる状態になったため私が説明することとなりました。もちろんマネージャーも同席しますし、事情説明もマネージャーを望まれるのであればお客様のご意向を優先します。」
2人の顔が陰る。不安を更に煽ってるのは僕かぁ。でもしかないじゃん…狼少年が待つって選択しちゃったんだもん!獣人国へ国外追放できれば簡単だったのにー!僕もこれから4年間もあの狼少年に付き合わなきゃ行けなくなっただぞ。僕の未来の残業が増える…。
「お見合い係さんで大丈夫です…。」
お客様がか細く答えた。
「急に番だと知らされて不安なのにごめんなさいね。でも、貴方にも悪い話ではないから安心して。」
即座にフォローには言ってくれた。マネージャー感謝です。長期戦になると解ったとき握手したもんね!
「お客様の番申請をされたご利用者様は種族としては狼の獣人です。」
ほっ安堵の声が聞こえる。未だにドラゴンは嫌なんだろうなぁ。
「ですが年齢が14歳なのです。」
「ええ!?」
「おい!未成年じゃねぇか!?どうすんだよ!弟子は成人しているが…そんな結婚認められねぇーぞ!」
「はい。こちらも理解しておりますし、その様な未成年の婚姻は我々も国も協会も認めません。これは例外無しです。」
「本当か!」
「はい。もう既にご利用者様と保護者様には説明の上、納得済みです。成人となる18歳まで待つと。」
「そうか…。」
「そうですか…。」
諦めてくれた方が良かったんだろうなぁ~。しかし、認識が中々浸透しないなぁ。国民に番、半身の教育を国も頑張ってはいるが…埋まらないのだ。諦める等の選択肢が有るのならば運命とは言わないんだけど…。それに狼の番執着をなめてはいけませんよ。
「はい。ですから面会権が発生します。これはお客様には拒否できませんので。」
「チッ。」
親方?もう少し包もうとは思いませんか?いちお、ドワーフ国の王弟でしょうが。
「ここからは私が説明しても?」
マネージャーのスイレンさんが手を上げる。うーん。面会に関しては通常マネージャーが説明するしなぁ。僕がすると…やっぱりご利用者様側に立ってしまうし…。
「お願いできますか?」
「はい。先程ご紹介頂きましたが、改めて。初めましてお客様。貴方のマネージャーとなります。スイレンと申します。これから長いお付き合いとなると思います。ご遠慮等なさらず何でも聞いてくださいませ。お客様は運命と出会われたばかりです。戸惑われる事でしょう。一緒に考えて悩ませてください。」
「っ…。はい。うっ。よろしくお願いします。」
気持ちに寄り添う。マネージャーの手腕を見た様だった。見合い係にはないかも…どう抑えつけるか!どう誘導するか!のノウハウしかないからな僕達。番、半身脳に寄り添いなんてしたら…考えたくもない。
「相手が未成年であることに驚かれたと思いますが、悪い事ばかりではありません。他のお客様と違い、時間がたっぷりございます。少なくとも後4年は結婚できませんし、面会も一年間に一回の未成年制度が適応されます。」
「面会が一回?」
「はい。ですからゆっくりお相手と向き合う為の準備を進めることが出きるのですよ?」
「じゃあ4年間会わなくて良いじゃねーか!」
親方が割り張ってきた。これはダメだ。自分が絶対に正しいと思ってる。いい加減わからせらないと!お客様にもご利用者様の為にもならないな。結婚後にもこの人は付いてくるんだ。ずっと否定ばかりされては心がきしんでしまう。どんなに強かろうとも…。
「未成年を犯罪者にしたいんですか?」
「はあ?俺はそんなこと言って…」
「言っているのと同義です。ご利用者様は待つと仰いました。法律に準じて4年間待つと。運命を無しにされたくないからと。あなた様は先程からすべて否定されていますがこちらは法律に基づく行動をしております。何を持って拒否されているのですか?あなた様のお弟子さんはまだ、誘拐や強制もされていないのですよ?あなた様がすべてを拒否し面会すら許されないのであればこちらもお守りできません。」
「っ…。弟子はなぁ。俺の息子と…上手くいきそうだったんだよ!!俺が口を挟めば絶対になってしまうから側で見てただけだが…仲良くて…お似合いだったんだ!それを…この通知書1枚で…台無しだそ!後4年だって言ってたがな!それはそちら側の都合だろうが!4年間弟子は拒否する権利も無いんだろうが!自由に恋愛する事も息子と先を夢見ることもできなくなったんだぞ!」
はいはい。そうだね。確かに4年間は要らなかったかもねー。でも、そんなケースざらに有るからね。
「そうですか。お弟子さんと息子様のお気持ちが強くあれば叶うのでは無いですか?結婚していないだけましですしー。」
「え!?」
「はあ?」
どちらとも驚いている。多分通知書を受け取ってか悲撃のヒロイン症候群に浸かっていたんだろうなぁ。
「イチョウさん言い過ぎです!なんでも冷静になれないときはあるのです。お二方も一度に色んな事を聞かされて動揺されているのですよ。お客様。お付き添い様。今は無理かもしれません、ですが、大丈夫ですよ。長い付き合いになると申しましたでしょ?時間は多分にございます。運命を受け入れる為の準備をしていきましょうね。」
僕的にはスイレンさん。貴方が一番怖いです。
年代別の価値観を埋めるのは世界が違えど大変でございます。
イチョウくん!がんばれー!