第七十七話 リピーター
「次は何にしようかな……槍とか作る?」
『槍いいな』
『鎌作ってほしいです』
『なんかまた変形武器見てみたいわ』
「んー……じゃあ変形機能付き十文字槍で」
最近は、依頼品ではなく自分の作りたいものとかコメントのリクエストとかの武器を作る時間を設けている。
最近の依頼は配信に乗せないでほしいというものがある程度あって、放送出来るタイミングが以前に比べて少し減っているからだ。
これはユニークでなくとも公開しないことがアドバンテージになるようなレア素材があったり、私の配信を見る人間の数が多くなりすぎていたりと色々な理由があるわけだけど。
武器を作るのにも慣れてきて短時間で納得のいくものを作れるようにもなっていたりするし、店に並べる武器も作りたいから何だかんだでこの時間は丁度良かったりする。
……まあ、理由はそれだけじゃなくて、一番の理由はここ最近でユニークに関する情報の量が一気に増えたこと。
攻略クラン【セフィロト】による『統機』ウェルキンゲトリクスの撃破――そこから数日の間を空けて、同日に二体のユニークモンスターが撃破された。
最大規模の攻略クランである【天の最果て】によって撃破された『砂燼』アクエラ=エテン。
同様に大規模なクランである【黒盟騎士団】によって撃破された『異炎』デアリエ。
各地に現れた十二星群の名を持つ謎のユニーク群や、今はまだ公になっていない『採取職でしか入手できないユニークアイテム』の存在もその一つ。
つまりいつユニーク素材で武器を作るという依頼が入ってもいいように時間を空けておいているということ。
生産職の需要が跳ね上がってから結構時間が経っていて、流石にもう何もしなくても客が来るという状態ではない。
現に【天の最果て】はかなりの数の職人を抱え込んでいて、客の取り合いになっていたりもする。
こっちとしては別に良いんだけど、相手が結構バチバチにやってくるというか……一度【天の最果て】のサブマスみたいな人が私をスカウトしに来たんだけど、報酬はともかく同盟を結んでいるクランのプレイヤーにしか武器を作れないっていう制限があったから突っぱねて、それ以降敵視されているというか。
とにかく、腕のいい職人が他にもいる現状で、ユニーク素材を使うチャンスを逃したくない。そのための時間だ。
『ほんと一気に来たよなあ』
『順当に進んでるって感じなのかな』
『プレイヤー全体がユニークを倒すことのできる段階になったってことだろうしな』
という感じなので、なんだかんだで雑談配信みたいな状態になっていたりする。
『生産職とか採取職にもユニーク的なのないんかな』
『なんかしらありそうだけどね。ユニーククエストとか』
『クエストはあんまり聞かないよな』
『まあユニークモンスターは倒したらアナウンスされるけどユニーククエストはクリアしてもそういうの無いっぽいしな』
「そろそろまたユニークモンスターのアナウンス来そうだよね」
『流石にそれはラッシュ過ぎるww』
『ありそうなのが怖い』
『まあ裏で挑戦してるとこ結構ありそうだしな』
ガコン! という聞き覚えのある音が鳴ったのは、まさにこの時だった。
「……え、ほんとに?」
『!?』
『マジ!?』
『タイミング良すぎて笑う』
[プレイヤーの皆様にお知らせです]
[ユニークモンスター[花螂]エルバガモールの初討伐が確認されました]
[討伐者は『エリエザ=エクトラージ』、『煌 狼真』の二名です]
『あー!』
『エルバガモールは有名だよな』
『場所は分かるけど出現条件がよく分からないやつ』
『結局発見者が倒したんだ』
『掲示板で有名になってたんだっけ』
コメントが盛り上がる中、私はさっきのアナウンスに少し引っかかるものを感じた。
具体的には、二人の討伐者の名前に。
「この名前、確かどこかで……」
誰だったかを考え始めたのと同時に、メッセージの受信を知らせる音が鳴る。
その差出人の名前を見て急いで開封すると、それは武器を作ってほしいという極めて簡素な内容で――
「……じゃあ、雑談配信はここまで。急遽依頼が入ったから、それを作っていくよ」
『マジでか』
『このタイミングで?』
『エルバガモールのだったりしないかな』
『いや流石にそれは……あるのか?』
「その通り、依頼人はさっきの二人。今思い出したけど、前に武器作ったことあるよね」
もう何か月も前のことだし、当時は今みたいな方法でやっていなかったけど、武器に関することは大体覚えている。
叛く鉄の薔薇とリガーラットワース。どちらもかなり気に入っていた武器で……ユニーク素材を使うからには、造形的にもそれを超えていないといけない。
緊張感と、それを上回る高揚感と共に、私は二人を迎える準備を始めたのだった。
本来はもっと出番のある予定だった二人です。
アリフラの方に出てもらう予定……なんですけどアリフラがちょっと重大なミスで……ちょっと今の状態で続けられそうになかったり。




