第七十四話 真なる聖剣
間違えてアリフラをこっちに投稿してました!申し訳ないです……
あとこの話すぐに投稿するって言ってたんですけど自分の中でUNITがごちゃごちゃになってうまく書けなかったので遅れてしまいました
さて、次はどれから手を付けようかな……まあとりあえず内側の剣身にしておこう。
ここはいろいろとまとめてやる必要があるので、ここで一気にUNIT化までやってしまう。
まず剣身と柄を繋ぐ部分のパーツを作って結合させ、ついでにその部分のUNIT化を行う。ここに使うのは[暴走]で、効果時間は……後で決めよう。今はとりあえずデフォルトにしておく。
[暴走]のUNITに関しては、さほど見た目的な変化が起きないので目立ちにくい場所に設定しておいた。暴走状態は武器全体に適用されるので刃部分に設定する必要もないし。
逆に言うと、その部分にしか適用されないUNITは場所を考えていかないといけない。これから設定しようとしている[解放]がまさにそれだ。
陽の薄氷で作った剣身に[解放]のUNITを設定する。これは[魔力装填]で武器に集めた魔力を消費して、特殊な効果を引き起こすためのUNITだ。
魔力そのまま放出して一時的にまとまった量のMPを得て通常よりも強い魔法を撃ったり、武器に魔力を流して強化したり。[暴走]が使った後に冷却が必要になるのに対し、こちらは使う前にチャージが必要になるという感じ。
ただ、今回設定するのは少し特殊な強化。[解放]の項目の下の方にある『巨大化』……これが今回使うものになる。
これはもうその名の通りで、設定したパーツを一時的に巨大化させることができる。原理はよくわからないけど魔法で何かしているんだろう。
横幅は一回り大きく、縦の長さは少し長めに設定。これで中身の方の剣身は設定できた。
ここまで来ればあとは組み立てつつUNITを設定していくだけ。
まず、大体のキャパシティが分かったので鍔を組み立てる。剣身側に溝を作りつつ、雑多なパーツを組み合わせて機械的な鍔を作成。UNITを設定できる部分を三つ作ったのでそれぞれに適用していく。
溝の部分には[変形]を適用。外側の剣身と組み合わせて、分離した剣身を移動させる役割を持たせる。
モーター型のパーツには[属性付与]を設定。一時的に武器に属性を与えるためのUNITだけど、今回は戦闘面ではなく演出面での採用だ。一連の動作の中で電流が走るような演出を入れたいだけなので、効果量は最低値。発動時間も短く、ステータス的には一瞬だけ「雷属性強化+1」が付くだけになる。
キャパシティがかつかつなのでこういうところでも削っていかないといけない。
そして、細かいパイプのようなパーツには[冷却]を設定する。[暴走]を使う以上[冷却]も設定しておくのは当然ではあるけれど、設定次第で蒸気を吐き出させることができるのでそれも演出に加え入れるつもり。
柄には弱めの[振動]を設定し、更に柄頭に陽の薄氷を球状に加工したパーツをはめ込んで[魔力装填]を設定。
二つの剣身に柄と鍔。それらをすべて合体させて、一番最初に作った炉心と輪のパーツも鍔の真ん中にセット。
最後にそれぞれのUNITの効果時間を合わせて――
「これで完成……かな」
正直に言うと、まだ本当に完成したかどうかはわからない。全てのUNITが上手くかみ合って初めて完成したと言えるので、ずれていたら調整しないといけないので。
変形する武器を作るだけでもその辺は結構気にしないといけないのに、今回は[回転][振動][魔力装填][分離][変形][解放][暴走][冷却][属性付与]……炉心に設定した[真化]も合わせれば、合計で10個のUNITを使ったことになる。
計算上は完璧なんだけど……どうかな。
「最後に調整をしたいんだけど、カトレアは……剣持てないよね」
「ああ。弓使いだからな」
「だよね。それなら私がやるしか――」
「じゃあ僕がやってもいいかな」
「うん……って、え?」
聞き覚えのない声に振り替えると、見知らぬ少年が立っていた。
癖のある白髪に、灰色の目。全体的に不思議な雰囲気を纏っている。
もしかしてこの人が――と私が思ったのと同時に、カトレアがため息交じりに呟く。
「やっと来たのか、アイン……」
「ちょっと彷徨ってて遅くなっちゃった」
予想通り、この人がクランマスターのアインで間違いないようだ。
彼はカトレアに礼を言って、こちらに向き直った。
「ごめん、約束の時間に間に合わなくて」
「私は気にしてないけど……それより武器作っちゃったけど大丈夫?」
「大丈夫。実は、昔からファンなんだ。だからどんな武器でも嬉しい……というより、絶対に最高の武器を作ってくれるって信頼してる」
おお……プレッシャーが凄い。
まあ私も今回の武器はこれまで作った中でも最高クラスに気に入ってるので、自信はあるけど。
「使ってみても?」
「もちろん。ただ、ちょっとまだ調整しきってない部分があるから、その辺は後でどうにかするつもり」
いつも通り地下空間に案内して、配置した仮想敵を相手に戦ってもらう。
流石【セフィロト】を束ねるクランマスターだけあって、動きが段違い……というかなんか異次元?
なんというか、全部分かってるみたいな動きをしてる気がする。死角が存在しないというか、全ての行動が一手先を行ってるというか。
私は戦闘職の経験がないのでうまく言い表せないけど、数秒後の未来でも見てるんじゃないかって動きだ。
そんな風にアインの動きに魅了されていると、彼は途中で戦闘をやめ、こちらを見た。
「これ、もしかして変形する?」
「え……うん。武器の名前を唱えれば変形するようになってる。ちょっと調整が甘いかもしれないけど、使ってみて」
何で分かったんだろうと思いつつ、アインに答える。
既に武器の名前は付けてある。なんというか、元になったユニークモンスターがフランスの英雄の名前を冠しているので合っていないかなって思ったんだけど、やっぱ武器職人としてはいつかあの名前を使った武器を作りたいという気持ちはあったし、名づけるならこの武器にって思うくらい、私はこの武器を気に入っていた。
私から武器の名前を聞いて、アインは武器を構える。そして――
「――EX-CALIBUR!」
アインがそう唱えた瞬間、中央の歯車が回転し、それに合わせて武器全体が動き始める。
剣身に一直線に薄い線が走り、噴出する蒸気とともに左右に分かたれ、内なる刃が露わになる。
その透き通った氷のような刃の表面を電光が迸り、一瞬のうちに巨大化。[暴走]によって剣全体が炎のように赤くゆらめき――最後に炉心の固有効果[汪溢]が発動。
剣の節々から光が放たれて辺り一面が白く染め上げられ、その全ての光が捻じれるように剣へと吸い込まれていく。
そうして、その剣は完全な状態へと生まれ変わった。
眩く輝くその剣は機械の武骨さと聖剣の神々しさを併せ持っていて――当然、見た目だけじゃない。
この状態の持続時間は三分。しかしその三分に[暴走]と[解放]、そして[汪溢]のバフが乗る。
ユニーク素材を使ったからか、武器自体の攻撃力も高い。そこにそのバフが乗れば……もはや敵なしと言ってもいいんじゃないだろうか。
「……よしっ」
その光景を見て、私は小さくガッツポーズをとった。
調整を加えるまでもなく、全てのタイミングが完璧に噛み合っていた。
「うん。やっぱり流石だね……ありがとう」
龍を模したマネキンを一瞬で斬り伏せながら、アインはかすかに笑ってそう言ったのだった。
――――
EX-CALIBUR
武器種:直剣 必要STR:72
[汪溢]、[複数UNIT]、成長装備、攻撃力強化+78、斬撃強化+51
かつての伝説の聖剣の名を冠する機械の剣。
その剣身の内には真なる聖剣が封じ込められており、資格を持つ者がひとたびその名を唱えれば、剣は分かたれて雷鳴とともに光を編み、一時的に真なる姿を取り戻す。
――――
というわけでこれで第五章終わりです。短い……。
本当はここまで含めて四章だったんですけど、長くなりそうだったので二つに分けたら大して長くなりませんでした。
次は第六章「抗天機神ヴェインスター」。こちらもそこまで長くなさそうですが、よろしくお願いします。
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