第八話 血を啜る器官
[Alisphere Fragments 配信者スレ Part.5]
728:マキシ
面白いの見つけた
[URL (リンク先:E-Vault)]
729:ミシラヌ=バルサン
>>728
生産職? 見てみるわ
〜〜〜〜〜〜
735:ヨサクァ
>>728
ええやん。ちょっと追ってみようかな
736:コンコン
生で見てたわ。
E-Vaultの新規配信者ランキングの結構上位行ってるんだな。視聴者多くなりそう。
737:仙
全体的に珍しい感じだな
738:黒井戸
生産職メインのプレイヤーがそもそも多くないし、配信者ってなると尚更な。
739:アンキ
他はエボニーくらいだよなぁ。
出資者がいるってのは共通してるけど
740:エフェク=ルーオ
>>739
あっちは防具職人だっけ。
配信すると結構技術とか盗まれそうなもんだけど気にしないんかな
741:熊本
俺武器職人だけどマニュアルであんなに上手く作れないわ。そもそもの造形センスが高いんだと思う
742:デスワーム
商人になって金稼いで目立ちそうなプレイヤーに出資して配信者にするってビジネス、普通にありかもな
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配信開始早々、視聴者が貼ってくれたリンクを見てみると、殊の外私の放送が人気だったことがわかった。
「へー、ランキング乗ったんだ。だから今日は人多いのかな」
『ランキングから来ました』
『初見』
『わこつー』
『用語覚えた?』
「わこつは覚えたよ。配信開始の挨拶みたいなやつだよね」
今私が配信しているサイトはE-Vaultと言って、その「わこつ」ってスラングが出来るきっかけとなった配信サイトとは別のものなんだけど、語感が良いのかここでも使われているみたい。
配信者によってはその人特有の挨拶みたいなのもあったりするらしいけど、私には今のところ縁のなさそうな話だ。
と、そんな感じで、E-Vaultには独特の言語文化がある。
配信をやっていくにあたって、とりあえずこの辺りのスラングに関しては覚えておきたい。
そういえばE-Vaultの略し方にも派閥があるんだっけ。正式な読み方はイーヴォルトらしいので略すならイーヴォなのかなと思うけど、日本ではエボルト派も多いらしい。
あとは少数派だけどイーブイとかEVaとかもいるみたい。
「さて、じゃあ今日も武器作って行こう。……と言いたいんだけど、その前にちょっと気になるもの見つけたんだよね」
湧き立つコメントを流し見つつ、アイテムボックスから赤い球体を取り出す。
「[啜血球]って言うアイテムなんだけど、知ってる人いる?」
『赤血球?』
『赤血球じゃなくて啜血球。血鬼の眷属ってモンスターのレアドロ』
『そんなモンスターいるのか』
「血鬼の眷属ってことは、血鬼ってモンスターもいるのかな」
『いるかもね。まだ見つかってないけど』
『どっかのボスか?』
『漢字二文字はユニークの可能性ある』
「ユニーク?」
『ゲーム内に一つしか無いって設定の要素のこと』
『ユニークモンスターは一匹しかいないし、ユニークアイテムは一つしか無い』
「へー……それってどうなの? 一人しか入手できないって批判されそうな要素だけど」
『あくまで物語上の設定だから一人しか恩恵を享受できないってわけじゃないみたいだよ』
『まあユニークモンスターとか強すぎてまだほとんど未討伐だけど』
『オレ“蜃焔”と戦ったけど粉微塵にされたわ』
ユニークモンスターか……いわゆるエンドコンテンツ的な立ち位置なのかな。
戦闘職をやるつもりはないので恐らく目にすることはないだろうけど、もしかしたら生産職の前にしか現れないやつとかがいる可能性もあるし、もしそうなら私の前に現れて欲しいところだ。
「まあ、それはともかく。この啜血球って説明見る限り血を吸って力に変える機能があるみたいなんだよね。ってことは多分、武器に組み込めば血を吸う武器にできると思うんだ」
つまりは、敵を斬り、血を啜り、力に変える魔剣。
「それってめちゃくちゃ良くない?」
『最高』
『ええやん』
『感性が中学生男子』
『だが嫌いじゃない』
「ちなみに名前は[魔剣ヴィドランゼ]。デザイン面でもちょっと禍々しい感じにしようと思ってる」
良いよね、魔剣。
それっぽい響きにしようと思って考えた名前なので、ヴィドランゼという言葉には特に意味はない。でもなんかそれっぽくなったので良いと思う。
「さっきシダに聞いたんだけど、この啜血球って最新のレアドロだから全然流通しないらしいんだ。だから別の素材で試作して行こうと思ってる。入れてみたい要素も色々あるし、キャパシティの計算もあるし、後は私自身のDEXも上げていきたいね」
やるべきことは多いけど、これも素晴らしい武器を作るためだ。
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