第七十話 バーサーカーようじょ
おかげさまで評価ポイントが10000を超えたり評価者数が1100人になったりブックマークが5500を超えたり総合評価が21000ptを超えたりと一気にいろいろキリのいい数字になってました。いつもありがとうございます!
ヘルメスの話によると、現時点でセフィロトのメンバーの中でユニーク素材を武器にしたいプレイヤーは二人いるらしい。
二人だけ? と思うかもしれないけど、素材は防具やアクセサリーに使うこともできるので何に使うのかを決めあぐねている状況なのだとか。例えばヘルメスは武器か防具かで迷っていると言っていた。純タンクならともかく、最近転職した職業が物理攻撃とタンクの複合系みたいなものらしいので、確かにそれは悩みそう。
さて、今日は二人のうちの一人が来ることになっている。名前はガルヴァド=ガルヴァスで、純粋な物理アタッカーらしい。
そろそろ来るかなと考えていると、バタン! とドアが勢いよく開いて一人のプレイヤーが店に入ってきた。
ぱっと見の印象は、まさに美少女。
ツインテールに結ばれた金色の髪に、宝石のように輝く青い瞳。小中学生程度の身長の華奢な体躯はフリルの多いひらひらとした衣装やリボンで飾られて、まるで精巧な人形のようだった。
これが噂に聞くキャラメイクガチ勢というやつか……今まで見た中にもかなり凝ってる人はいたけど、これはなんか一目見ただけで別格って感じがする。
そんな整った見た目の中で唯一両手を覆う無骨なガントレットだけがとてもアンバランスで、彼女もMMOの住人であるということを表しているようだった。
……いや、アンバランスだけど浮いてるようには見えないし、このアンバランスさまで含めた造形をしてるような気がする……。
何にせよすごいな。戦闘職ではあるけれど、彼女もれっきとした職人の一人だと思う。
……と、少し見惚れてしまっていた。
「えっと、セフィロトの……」
「おう! おれがガルヴァド=ガルヴァスだ! よろしくな!」
彼女は右手の親指をぐっと自分に向けて、舌ったらずな喋り方で答えた。
待って、情報量が多い。
無骨な巨漢みたいな口調は置いておいて、なんでこう若干舌の回りが甘い感じの喋り方なんだろう。VRだし実際喋ってるわけじゃないから意識的にやらないとそうはならないと思うんだけど。
「くちょうが気になるのか? まあいいじゃねーか。もっとすごいロールプレイしてるやつもいるしな!」
まあそれはそうなんだろうけど……気にしててもしょうがないしさっさと仕事に移ろう。
事前の情報によるとガルヴァドの職業はフィストマスターで、使用する武器はガントレット。
フィストマスターは名前の通りの職業で、殴ったり掴んだり手を使ったあらゆる攻撃を得意とするものらしい。
パワーとスピードを両立した柔軟性の高い立ち回りと圧倒的な火力。バフは対象が自分のみのものだらけで、当然魔法は使えない。清々しいくらいの純粋な物理アタッカーだ。
ガントレットはあまり作ったことがないし、とりあえず試作からやってみようということで早速手の大きさを測ろうとすると、ガルヴァドは何かを探すように辺りを見回していた。
「なんだ、今日ははいしんしねーのか?」
「しないというか、ユニーク素材を使うならあんまり見せないほうがいいのかなって」
「あー。おれはべつに気にしないぞ? というかむしろ出てみてーな!」
私なりに気を遣ったつもりだったけど、思ったよりも乗り気だった。まあ本人が良いって言ってるなら良いんだろう。
ということでシダに急遽セッティングしてもらって配信を開始する。事前の予告をしていないのに最初から結構な数の人が見てくれているのはありがたい。
『ゲリラ配信だー!』
『乗り込めー!』
『ゲスト?』
『!?』
『あっ、やばい人だ』
『え、これ本人?』
『バーサーカー幼女だ』
「だれがバーサーカーようじょだ」
間違ってない気がする……と心の中で思っただけなのにガルヴァドがジト目を向けてきたので目を逸らす。
ガルヴァドがいることに気づいたコメントの反応は徐々にユニークモンスターに関する話に変わっていった。
色々な質問を重ねてくるコメント群に対し、ガルヴァドはインベントリから大きなインゴットを取り出す。
「おれが手に入れたのは、この『統機の烟鏡鋼』ってそざいだ。ほかのメンバーの中にもおなじものを入手したやつがいたから、ゆいいつのものってわけじゃない。ちなみにほかにもいろいろそざいが手に入ったが、ユニークそざいはこれだけだったな」
磨かれた鏡のように周囲の景色を反射し水蒸気のような薄い煙を放出し続けているインゴットをカメラに近づけながら、ガルヴァドは視聴者が欲しているであろう情報をこともなげに晒していく。クラン的に問題ないのかなって思ったけど、特に隠すような内容でも無さそうだしいいのかな。
「まあ、ユニークモンスターはおれもよくわかってないことがおおいからあんまりくわしいことはいえねーな。ってか、今日のもくてきはぶきだぜ?」
『そういえばそうだな』
『ってかもしかしてユニーク素材使って武器作るのか!』
『まあそうなるよな』
『どんな感じになるんだろう』
『ユニーク武器だからなんか特殊効果とかあったりするんかな』
コメントの流れを戻してもらったので、今のうちに武器を作ろう。
まずは元となる形を作っていく。
と言っても、そこまで難しいことはしないけど。
ガントレットみたいな武器は装着すると武器がそのまま身体の一部になったみたいに動かせるようになるので、内部まで厳密に作る必要性はない。
少し前まではある程度作る必要があったけど、ソルレットっていうガントレットの足バージョンみたいな武器を作った時にかなり苦戦したので運営に要望を送ったら一週間くらいで仕様がゆるくなった。ダメ元だったんだけど言ってみるものだね。
そんなわけで、ガントレットは元の腕より大きいサイズになってさえいればいいのでそこまで難しくはない。
ということでまず初めに粘土を使って大体の造形を作る。この工程はもうそのまま腕に装着した状態で作った方がやりやすいので、ガルヴァドの腕に粘土をくっつけることにした。
『そういうプレイ?』
「違うからね」
指は比率を見ながら同じくらいに調整して、関節部分をわかりやすくするために痕をつける。
手の甲にあたる部分はとりあえず六角形の板を上から重ねておく。細かいデザインは後から考えればいい。
大きさは相談しつつ進めていく。長さは手首と肘のちょうど半分辺りまでを覆うくらいで、全体的に少し大きめに調整することにした。
「こんな感じかな」
出来上がった試作品を形が見やすいように台に置いて、これでよし。
この形状をお手本に本番を進めていくとしよう。
「じゃあ、さっきの素材を」
「おう!」
ガルヴァドがユニーク素材を雑に取り出して放るように渡してきた来たことにビビりつつも、落とさないようにしっかりと受け取って——
[UNIT[真化]が解放されました]
えっ。




