第六十六話 髑髏の禍剣士
素材のネタが尽きてきてるのを感じる今日この頃。
一応新章ではあるんですけど章ごとに何かイベントがあるとかそういうわけでもないので……
物心ついた頃から、私は武器に憧れていた。
最初に武器というものを知ったのは、確か日曜日の朝にやっているような子供向けアニメだったはず。
普通の女の子ならひらひらの衣装を着た主人公たちに憧れるのだろうけど、私はなぜか主人公たちが振るう武器に対して憧れた。
その理由はもう覚えていないし、そもそも言語化できるようなものではないのかもしれない。
ただ、そこからどうして武器を作るほうに憧れたのか。その理由だけはおぼろげながら未だに覚えている。
小学校二年生の頃のある日、図工の授業でのこと。
学年の全クラスが合同で行う授業だったのであまりなじみのない顔が多く、新鮮に思って辺りを見回していると、壁際に佇む浮かない顔の女の子が目に入った。
クラスメイトではなく、面識もなければ名前も知らない。ただ、一人だったから話しかけてみようと思ったというそれだけの理由で、私は彼女に武器を作った。
確か、そのときは段ボールで好きなものを作る……みたいな授業だったと思う。だから周囲には自由に使っていい素材が散らばっていて、私はそれをかき集めて魔法の杖を作った。
形は前日に見た魔法少女の杖を再現したもので、当時の私が作るものだから当然クオリティは低かったはず。
それでも、私が杖を渡したときの彼女の笑顔は今でも覚えている。
シダを見ているとついついその時のことを思い出す。
私の作った武器をキラキラとした目で見ている様子はそのまま記憶の中の少女に重なって見える。
結局彼女と話したのはそれっきりで、それ以降は顔を見た記憶もないほどの希薄な関係ではあったけど、もしかしたらシダがその時の女の子なのかもしれないと思ったこともあるし、そんな奇跡が起こるはずがないとも思っている。
ただ少し気になって、私はシダに遠回しに聞いた。
「シダって、どこに住んでるの?」
「徳島です!」
「……徳島なんだ。生まれも?」
「いえ、生まれは高知ですね」
どっちも四国だ。……四国であってるよね? なんか私の中で四国の中の位置関係が若干あいまいになってる。
ともかく、シダが四国に住んでいるなら私と生活圏がかぶったことはなさそうだ。私はずっと東京の区外に住んでいるし、四国の土を踏んだことは一度もない。
「どうかしました?」
「いや……いつもありがとうね」
「いえいえ! 先生が作った武器を特等席で見られるなんて、それだけで私の全てを捧げるに値することですから!!」
「重い……」
そう思ってもらえるだけのことをできているのなら、それはとても嬉しいことなんだけど。
……なんて思っていたら、不意にコンコンとドアを叩く音が響いてきた。
「あ、そういえば依頼入ってたんだっけ」
「私が出ますね!」
来客を出迎えるためにシダがドアを開けて——
「どうも」
「ひゅっ」
ドアの隙間から現れた頭蓋骨を見てシダが倒れた。
「おっと……装備を外すのを忘れていた。申し訳ない」
髑髏頭のプレイヤーがウィンドウを操作すると、頭防具だったらしい頭蓋骨が消えて精悍な顔立ちが露わになった。アリフラって種族すごい多いし頭が骨になってる種族とかいるのかなって本気で思ってたけど流石に防具だった。
応接用のソファに座ってもらって、それから今回作る武器に関して質問する。
「えっと、ルイス=フリードマン……で合ってるよね。武器種とかは事前に聞いてるけど、具体的にこういう武器を作って欲しい、みたいなのはある?」
「ああ、ホラー要素のある武器を作ってもらいたいんだ」
「ホラー要素……」
さっきの登場の仕方から既にホラー感溢れてたけど。
というか武器にホラー要素? なんか概念としては遠いものでもないはずなんだけど……考えたことなかったな。
今パッと思いついたチェンソーは既に作ってるし、血塗られた感じにするというのもそのアイデアだけで作るには少し物足りない。
「UNITって使える?」
「ああ。一昨日、イクテュエスに行った時にね。それで面白そうだったから君に依頼をしたんだ。現状UNIT武器を作れるのは君だけのようだし」
なるほど。UNITが使えるならやりようはあるかも。ある意味、勝手に動くものは怖いし。例えばポルターガイストとか。
まあ、結局ポルターガイストだって不気味に動くから怖いわけで、すごく綺麗な動きで動いてたら恐怖は薄れるはず。
理屈としてはそれに似ていて、武器を動かすUNITの場合、基本は滑らかな動きだったり直線的な動きだったりをさせればそれらしくなる。というか初期設定でそうなってる。
しかし逆に軋ませるような動きをさせることができれば、ホラーっぽい演出をすることができる……と思う。
ホラーゲームとか基本やらないからなぁ。正直あんまり詳しくないんだけど、出来る限りやってみよう。
彼の武器は剣。ただ、下位カテゴリーとして『禍剣』というものが設定されている。
これは剣そのものに呪いの素材を使った上で何らかの呪術的加工が施されているものを指すようで、攻撃とある程度のデバフを一人で使える武器種らしい。ソロで便利そう。
「呪術的加工は完成後に僕が行うから、必要なのは呪われた素材だね。剣身に使ってくれるとありがたい」
呪われた素材と聞いて思い浮かぶものが一つあるんだけど、アレは使いたくないな……でもホラー感を演出するってなるとあの声の性質は捨てがたいというか。
メインで使う素材は別としても、ちょっとだけ使うのはアリかも。
なんとなく感覚が狂っているけど、ネルフラの怨嗟鉱は結構なレア素材かつ一個一個がかなり小さい。この前はアリアが大量に持ってきていたので剣身に使うことができたけど、同じことをやろうとすると値段がとんでもないことになりそう。
というか入手エリアの人気があまりないので流通する量も少ないらしく、金を積んでどうにかなるようなものでもなかったりする。
というわけでそれらしい素材を探してみることにした。
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横死竜骨
イドラフィアロ大竜墓に眠る、望まれぬ生と非業の死を遂げた竜の亡骸から採掘できる骨。
魔力密度の高い大竜墓の地中に長く存在したことで性質が変化しており、鉱石と同様の性質を持っている。
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望まれぬ生と非業の死……流石にこれは呪われた素材だと思うけど、一応ルイスにも見せてみる。
「予想以上に呪力数値が高いね……これなら充分だよ」
呪力数値という聞き慣れない単語が出てきたけど、とりあえずこれで問題ないということなので横死竜骨をメインの素材とする。
ちなみに横死竜骨は同じ採掘ポイントで採れるレア素材がかなり重要なものらしく、それを目当てに採掘する人が多いため、同時に採れる横死竜骨が安い値段で流通しているらしい。
これもかなり良い素材に見えるんだけど、まあ倉庫も圧迫するだろうしさっさと売ってお金に換えたいということなのかな。
……なんて考えていると、素材からの連想で少し良いアイデアを思いついた。
横死竜骨は骨のような形状をしていないけど、そこは後から加工して骨っぽくすればいいし、金属的性質を持っているなら刃を作るのも簡単そうだし……行けそう。
「ちょっと特殊な背負い方になるんだけど、大丈夫?」




