第四十五話 熱塊ガガル
そろそろ作中に登場した素材とか武器とかを把握できなくなってきました。
こういうのどうやってまとめたらいいんでしょうね
疾空槍ヴィルガンを作り終え、次の武器に取り掛かろうとしたところで不意にシダが声を上げた。
「あ、そういえばお伝えしなければいけないことがあったんでした!」
「どうしたの?」
「ヘルメスさんから素材を頂いたんです。最新のエリアで手に入る素材みたいで、使い道も加工方法もよくわからないから良ければ使って欲しい……とのことです!」
「そっか。特に依頼とかではないのかな」
「そうみたいですね。アイテム化すると危険そうなので、インベントリ内で渡しますよ」
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ガムザ灼纏鋼
炎を纏う鋼。
厳密には炎ではなく、高純度の熱の魔力が目に見える状態で揺らいでいるのであり、この炎が他の物質に燃え移ることはない。
金属のそのものの性質としては扱い易いものの、揺れ動く炎により加工は困難を極める。
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「なんか凄まじいアイテムだね……入手エリアはイザム山ってなってるけど、どこだろう」
『九連霊峰の一つだったはず』
『九連霊峰って?』
『あれじゃね……パルテノスの』
『あー、グラカム山付近のやつか』
『本当の最前線って感じだね』
「なるほど」
最新のエリア過ぎて、コメントの反応も結構曖昧な感じになっている。
実際、アリフラのエリアは数も広さも凄いので、メインで訪れる場所以外は把握していないという人は多そう。私はグラカム山の場所すら把握してないけど。
「というかこれ、加工できるのかな。困難を極めるって書いてあるけど」
『気合で、行こう』
『そういうアイテムって実際に触れただけでもダメージ受けたりするん?』
『こういうのは大抵効果あるよ。ダメージ受けるアイテムを新規プレイヤーに譲渡するテロとかもある』
『知らない人からアイテムを貰うのはやめようね!』
『不審者に近づかないようにって小学生に言うときの文言』
『逆に考えるんだ、加工しなくてもいいさって』
「加工しない……あー。いけるかも、これ」
インベントリ内で見る限り、ガムザ灼纏鋼は粗く削られているような感じで尖っている個所がいくつもあるけど、全体のバランス自体は良い。そのまま使ったとしても問題はないはず。
今思いついた案だと一切加工しないというのは無理だけど、それでも最小限に抑えられるし……これで行こう。
「まず必要なのは、熱に強い金属。いくつか候補はあるけど、少し前に使おうとしてたやつにしようかな」
素材箱から鈍色のインゴットを取り出し、カメラの前に持っていく。
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ガザリウムインゴット
蒼炎火山アンティシアで採掘することのできるガザリウム鉱石を精錬したもの。
周囲の熱を吸収して蓄える性質を持ち、その量によって密度や硬度が変化する。
同じくアンティシアで採ることのできるイグザリウム鉱石やアルザリウム鉱石などは、実はガザリウム鉱石と同じ鉱石であり、これらは全て熱の蓄積量に応じて区分されているものである。
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3日くらい前の放送で、私はこのガザリウムインゴットを使った弓を作ろうとしていた。
飛炎の矢という高い攻撃力と引き換えに番えた弓の耐久力にダメージを与えるというデメリットを持つ矢があるらしく、リクエストされていたのはその飛炎の矢に耐えうる耐火性能を持つ弓だったけど、試作段階で要求STRがリクエストを上回ってしまったので結局別の素材で作ったという感じ。
今回は要求ステータスに関する制限もないので、問題なく使用することができる。
「で、次なんだけど……シダ、鎖鎌とか持ってる?」
「持ってますよ! それほど強いものじゃないですけど」
そう言いながら、彼女は武器を一つ譲渡してきた。
名前はシュトゥルムカッテ。見た目的にも、変わったところのないシンプルな鎖鎌だ。
まあ、これ自体の能力に関しては正直どうでもよくて、必要なのは柄と刃を繋ぐ鎖部分。
これを一から作ろうとすればかなり時間がかかるだろうし、見た目的にも不格好なものになってしまう。
「でも、ここでラーニングが活きてくるって感じ」
スキルを発動し、シュトゥルムカッテの鎖部分のラーニングを行う。前提条件は既にクリアしていたので、問題なくテンプレートが作成された。
後から識別しやすいようにテンプレートの名前を変えておきつつ、早速武器用のパーツを作成する。
使用するのは先ほど取り出したガザリウム鉱石。テンプレートの要求量を消費すると、すぐにガザリウム製の鎖が出来あがった。
『結構工程省略できそうだよね』
『ほかの生産職もこれくらい変わってるんかな』
『俺薬師だけど、バフデバフの効果量が増えたくらいだったな。まあ元からそこまで難しいものじゃなかったし』
『防具職人とかアクセサリー職人とか、その辺のマニュアル生産がむずい奴が対象っぽい』
『見てても面倒そうな工程多かったしな』
実際、作りたいイメージがあってもそれを作るために必要な工程が多すぎるって思う人は少なからずいただろうし、手間というハードルをかなり下げられたというところで、このラーニングというスキルの追加は良い方向に作用すると思う。
例えば連鎖剣を作ったときには刃の部分を作るために結構時間がかかっていたけど、これからは似たような構造のものさえ見つければ簡単に再現できるわけだし。
まあ、今のところチェンソーみたいな武器は見たことないけど。
というか、ラーニングって自分が作った武器とか他のプレイヤーが作った武器にも効果あったりするのかな。今度試してみよう。
「持ち手もガザリウムで良いかな。耐熱だし」
持ち手は自分で作ることにした。と言っても、特に何か凝った加工が必要な部分ではないけど。
ここは極端にシンプルでいい。そのほうが武骨な感じが出て、コンセプト的にはぴったりだし。
……と、ここまで作ったあたりでコメントからツッコミが入る。
『持ち手まで金属だと熱そうじゃね?』
『熱を蓄えるって特性的に、結構ヤバい気もする』
「あ……確かに。ふふっ、どうしよう」
よくよく考えたら、持ち手に必要なのは耐熱じゃなくて断熱だった。まあ、上からグリップ的な感じで断熱素材を巻けばいいか。
「断熱性能がありそうなものは幾つかあるけど、色で選ぶとしたらこれかな」
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ルーシャドーの黒炎革
火山地帯に生息する黒炎蜥蜴の革。
火山という極限の環境に適応する過程で得た直接的な炎にも耐え得る外皮は、耐熱装備の素材として重宝される。
黒い炎がうねるような独特の模様を持ち、かつては儀式にも用いられていたという。
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見た目が結構気に入っているのでいつか使おうと思っていた素材だ。今回は確実に火属性の武器になるし、丁度いい。
革を柄に巻き付けて……良い感じ。
「最後はガムザ灼纏鋼とつなげる工程なんだけど……まずはアイテム化しないと始まらないか」
金床の傍に立ってメニューからガムザ灼纏鋼を選択し、インベントリから取り出す。手に持つように現れた燃える鉄塊を即座に金床の上に置き、一先ず私は距離をとった。
一瞬持っていただけなのに、確認してみたらHPが二割くらい削れている。防御系ステータスが貧弱だから、これだけの接触でも危険らしい。本当に行けるのかなこれ。
魔導コテで熱して変形させたところに鎖を接続しようと思っていたけど、ちょっとコテの長さが心許ないかも。
「トングでコテを掴んでみるとかどうですか?」
「なるほど。やってみよっか」
シダのアドバイスに従って、魔導コテをトングで掴む。
少し安定性に欠けるけど、これなら熱を気にせずに加工できそうだ。不格好なのは気にしない。
出力を高めて一部分だけを融かし、そこにもう一つのトングを使って鎖の端を差し込む。
状態が安定するまで少し待って、それから鎖を引っ張ってみると、鉄塊の方もしっかりと付いてきた。無事に接続出来ているらしい。
「って感じで完成。いわゆるモーニングスターってやつ、作ってみたかったんだよね」
『めっちゃ無骨』
『88888888』
『これはこれでカッコいい』
『蛮族のボスが使ってそう』
『どうやって持ち運ぶんだろう』
『名前は?』
「名前どうしよう。流石に名前のストックが無くなってきたかも」
『まあこれだけ武器作ってたらそうなる』
『安価とかにする?』
「武器の名前は自分で決めたいかな。とりあえず使った素材の頭文字を取って……ガガル。熱塊ガガルにしようかな」
『凄い名前』
『数十年前のロボットアニメの武装にありそう』
『むしろ敵の名前』
「敵っぽいなら、むしろ武器のイメージ的には合ってるよね」
とりあえず、ラーニングの仕様に関してはあらかた理解できたと思う。
他にも良い使い道があるかもしれないけど、コラボで話す分には問題ないと思う。
そんなわけで、いつも通りフレーバーテキストを募り、一つの武器が完成したのだった。
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熱塊ガガル 武器種:フレイル
必要STR:71
特殊強化【戦闘時間】、攻撃力+68、打撃強化+7、火属性強化+6、刺突強化+3、装甲貫通+3、火傷付与+3、粉砕付与+2
熱を生み出し続ける鉄塊と熱を吸収し続ける鎖が噛み合って生まれた武器。
その熱により携帯性は著しく悪いが、一度戦闘になれば自らの熱を喰らって強くなり続ける暴れ馬と化す。
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次はコラボ突入かもしれません