第四十四話 疾空槍ヴィルガン
毎日投稿したいと言っておきながら。いきなり二日も開ける作者がいたんですよ。
やっちまいました。一度投稿が開いてしまうとペースを直すのが難しいですね……今は説明パートなのでなるべく早くコラボに移りたいところです
配信を開始して1分ほどで、ログインしたシダがやって来た。
「おはようございます、先生! ログイン制限に引っかかってたみたいで少し遅れました!」
「ん、おはよう。やっぱログイン制限だったんだ。自分はすぐに入れたからよくわからなかったけど、どんな感じなの?」
「ログイン待機中ですって表示が出るくらいですね。スキップを選べばちょっとの間眠ってるような状態になるので、体感時間では一瞬ですよ!」
なるほど。まあ、確かにそういう感じになるか。
「そういえば、前に見せてもらったあの歪んでる剣って今もある?」
ゲーム内時間で大体一週間ほど前に、私は武器生産の参考にするために、シダが収集している武器を見せてもらった。
シダが選ぶだけあってどれも凄く良いデザインだったけど、中にはかなり奇抜な造形のものもあって。
思い出したのは、まさにそんな奇妙な形状の武器だった。
「デミトラードならまだ持ってますよ! 何かに使う感じですか?」
「うん。武器の参考にしたくて。壊したりはしない……と思う」
「それほど珍しいものではないので壊してしまっても問題ありませんけど……これですね、どうぞ!」
シダが、武器を保管するために使っているクローゼットのような形状の収納用オブジェクトを開き、一本の剣をアイテム化して取り出した。名前は歪捻剣デミトラード。
その名前が示す通り、この剣はかなり歪な形状をしている。
弧を描くように曲がった刃を、更に柄を軸に捻ったような形状。
曲剣と呼ぶには立体的過ぎる形状で、見るからに扱い難いこの武器は、要求STRに対する攻撃力こそ高いものの使用する技の威力が下がるデメリットスキルが付いているため、正直実用的ではない。
前回見せてもらった時には、むしろこの形状なら別の武器にしたほうがいいんじゃないかと思った程だけど……今回はまさにその通りにしてみたいと思ってる。
「改めて見ても使いにくそうな形だよね」
『これそもそも武器として使えるのか?』
『使えなくはないけど使わないよね』
『一応デミトラードのデメリットスキルは武器熟練度が上がれば外れるし、数値的には強めではあるんだけど』
『ぶっちゃけデメリット外れる頃にはもっと強い武器に持ち替えてるよな』
「まあ、そういう武器もあるよね。……ってことで、《ラーニング》」
デミトラードを手に取ってスキル名を唱えると、同時にウィンドウがポップアップする。
[スキル《ラーニング》は所有状態のアイテムにのみ使用できます]
「あー……これ、所有してないとダメみたい」
「あ、そうなんですね」
『そういう仕様なのか』
『手に持ってるけど所有してないの?』
『持つだけだと所有にはならない』
「[所有]は完全に自分のものとして扱える状態だからね。プレイヤーから武器を奪って売り払う、みたいなのが出来ないようにしてるんだと思う」
VRが現実に限りなく近いとは言え、その辺りはゲームなのでシステム的に制限されている。
武器や防具などの装備品は装備メニューで装備しなければその効果を発揮しないので、メニューを通さずに重ね着しても意味がない、みたいなものに近いかな。
消費アイテムとかは所有していなくても使えたりするので、分かりにくいところではある。
ラーニングに関しては、街ゆく人の武器をすれ違いざまにラーニングする辻ラーニングも視野に入れていたけど、とりあえずそんな不審者になる必要はないようでよかった。
「それじゃあ、譲渡の方で渡しますね」
「うん、よろしく」
シダが手元のウィンドウを操作して、それからすぐに私の目の前にシダからアイテムが渡されたというメッセージが現れる。
その状態で同じように剣を手に取って……これでシステム的に所有したことになった。
今回はアイテム化したものの譲渡だったためこんな感じになっているけど、インベントリの中にあるものを譲渡する場合はそのままインベントリに入ることになる。
『渡す時って毎回これ必要なの?』
『渡し方によるけどこれが一番多いんじゃね』
「後は、売買とかも所有状態になるよ。殺した相手から奪ったりとかでも所有状態にはなるけど……そういう手段で手に入れたアイテムは盗品タグが付いたりするから、また別の話かな」
『PKerもいるゲームだもんな』
『まあ他に比べると少ないけど』
『そうなん?』
『そんなにメリットがないからな。PKやりたいやつは大体虎狼零かUKnight行くはず』
「まあ、私はPKerに会ったことがあるわけじゃないからよくわかってないけど。改めて……《ラーニング》」
所有状態の武器に向かって、先程と同様にラーニングを行う。
すると、今度は別のウィンドウが開いた。
表示されているのは、柄の部分が光で強調されているデミトラードと、それに関係するらしい幾つかの情報。とりあえずラーニングは成功しているらしい。
「えっと……一部分だけ光ってるのは、その部分を選択してるってことかな」
今回欲しいのは刃の部分なので、ウィンドウ上で刃をタップする。
刃が強調表示され、選択パーツが変わると同時に、横に表示されていた情報も変化する。
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武器名:歪捻剣デミトラード
武器種:片手剣/曲剣
部位:刃
条件:武器職人レベル10以上
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「そっか、普通レベル制限もあるよね」
当然だけど、最初から全ての武器をラーニングできるわけではないらしい。
どういう法則で必要レベルが決まるのかは後々調べていきたいところだけど、とりあえず今は条件を満たしているのでラーニングを進めよう。
ウィンドウの下部、テンプレート作成のボタンをタップすると、テンプレート一覧が開き、その一番上に『刃-歪捻剣デミトラード』という名前のテンプレートが追加された。
「これで出来たのかな」
早速、テンプレートをもとにパーツを作ってみる。
必要素材として書かれているのは、金属系素材というもの。素材の縛りは緩いみたいだ。
今回使おうと思っていた素材はアールゲン流鋼という金属系素材なので問題ない。
素材の量は一から作る場合に比べると少し多く要求されるようなので、希少な素材を使う場合は一から作ったほうが良さそう。
そんな風に考えつつ、インベントリから使用素材を選択してテンプレートのパーツを作成すると、出来上がったパーツがインベントリの中に現れた。
アイテム化して並べてみると、元の武器と完全に同じ形状をしている。結構作りにくそうな形だし、わかりやすく便利だ。
「これを三つ作って、渦を巻くような形に重ねて…………なんか上手くいかない」
パーツ自体はいい具合に噛み合ったけど、形状が想像と少し変わってしまった。
まあ、思い描く形にするにはテンプレートだけではダメだろうというのはわかっていたことだし、いつも通りマニュアルで加工していく。
「大体の形を作れるってだけでも相当便利だし、これからも使っていこうかな」
『時短になりそう』
『リクエストすごい来てるらしいし使えるものは使おう』
形を整えて、柄の部分を作り、それぞれのパーツを一つの武器として組み合わせ、細かい調整をする。
そんないつも通りの工程の後、思っていた通りの武器が完成した。
「よし……名前は疾空槍ヴィルガンにしよう。これ、いい感じに風っぽくない?」
『なんか突風のエフェクトみたいな形で好き』
『その金属、色めっちゃ綺麗だな』
『槍使いだからこれめっちゃ欲しい!』
「普通に商品にするつもりだから、欲しかったら売るよ。まあ、性能はそんなに重視してないから強くはないけど」
それにしても、ラーニングのシステムは思ったよりも使いやすかった。
正直、新たに人を呼び込むためのものというので今までとは毛色の違うものになるかと思っていたけど、問題なくこれまでの生産工程に組み込めそうだ。
となれば、色々な武器をラーニングしておきたい。
武器の下取りとかもやると良いのかもしれないけど、その辺はシダと相談して行こう。




