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第三十三話 魔剣試作初号機



「……と、初めての依頼はこんな感じの内容。完全に未知の内容で難しいけど、いつも通り頑張るよ」


『内容よりもまずは依頼人についてさ』

『バスタブ=アドルフってマジで本人?』

『このゲーム同姓同名とかありだっけ……』

『完全一致は無理。仮に出来たとしてもそんな名前被らないだろとは思うが』

『まあマニュアルで武器職人やってる中では確実に一番有名だからね。そりゃ有名プレイヤーも集まるわ』


「あー……やっぱ有名人なんだ。なんとなくそんな感じはしたけど」



 確か、【家具大隊】という名前のクランのリーダー……と言っていたような気がする。


 コメント曰く、家具大隊はいわゆる攻略クランというやつで、先陣を切って敵を倒し道を切り開くというのを目標とした廃人達の集いなのだとか。

 同じ括りだと、ヘルメスが所属する【セフィロト】というクランも攻略クランらしい。

 さっき見た掲示板もそれ関係の話だったっけ。


 あ、そういえば武器を作る様子を配信にのせる許可は貰っている。むしろ今度は配信に出してほしいとも言われたので、武器を渡すときにでも出てもらおうかな。



『武器職人になれば人脈開拓できるってマジ?』

『一応ちょっとレベル上げだけしてみてる』

『魔剣ってどう作るんだろう?』

『魔剣士がそもそも全然いないしなあ』


「まあ、とりあえず作りながら考えて行こっか。魔剣については」



 というわけで、喋ってる間に用意した素材類を台に並べていく。



 ディリオンの赫灼骨(かくしゃっこつ)、ガイライト鉱石、黒蛇骸、センジンの解球などなど。

 これらはwikiにあった焔耀魔剣バーナードという魔剣のレシピそのままだ。

 武器職人は少ないとは言え、いないわけではない。マニュアルの方はやるプレイヤーが少なすぎて全く情報が無いけど、レシピから作るオート生産の方であればwikiにも情報が載っていたりする。

 初めて魔剣を作るということで、とりあえず既存のレシピをマニュアルで再現してみるという形で試してみようというわけだ。



「キーアイテムになるのは……これかな」



————————

ディリオンの赫灼骨


火竜ディリオンの赤く輝く骨。

魔力を通すことによって超高温のオーラを発生させるという性質を持ち、ディリオンはこれによって常に焔を纏っている。

————————



 説明を読む限りでは、これがキーアイテムと見て間違いない。

 魔力を通すことによって、というのは魔剣の説明に一致するし、それによって焔を纏うというのも良い感じだ。

 キャパシティ値も高いので、これをベースにやっていけば良いかな。



 金床に赫灼骨を乗せ、出力を上げる。

 大体720くらい。魔力を通すことで効果が発動するというものなので、耐性が高いのかもしれない。

 まあ、炉の魔力はプレイヤーが魔法を使うときに使っているMPとは別物らしいけど。


 さて、次に魔導ハンマーを手に取って、力の入れ具合を確認するために少し素振りをしてから赫灼骨を叩いていく。

 このハンマーの使い方にもだんだん慣れてきた気がするな。叩く素材は様々で、反動も変わってくるので常に一定というのはまだ難しいけど、よく使う金属系素材に関してはもう問題ないくらいには使いこなせている。



『魔剣ってジャンルあるんだ』

『このゲーム、職業多いから武器種もめちゃくちゃ多いんだよな』

『VOX-0もこんなんだったから気にしてなかったけど、普通はこんなに多くないか』


「やっぱり多いんだ、このゲーム。というかみんなは他のMMOやってるの?」


『アリフラとUknight掛け持ちやで』

『虎狼零やってる。来週大会あるから練習の休憩中に見てるよ』

『MMOの掛け持ちってキツくない?』

『VOX-0は良いぞ』

『ミュージックブレイバーおすすめ』

『実はアリフラやってないけど配信見てる』

『アリフラ、アカウントだけ作ってあるんだよな』


「なるほど……みんなアリフラのプレイヤーなのかと思ってたけど、そういう訳でもないんだ」



 ……と、そんな具合に雑談をしつつ武器を作っていく。

 とりあえずベースは作り終わったので、次の工程に移ろう。

 刀身の素材は錆色のガイライト鉱石。説明によると、かなり強い耐熱性を持つらしい。

 一見ゲーム的な意味を持たない単なるフレーバーテキストのように見えて、何かを作る上ではこの辺りが作用してくることもあるので気をつけたほうがいいとエボニーが言っていた。

 もしかすると、逆に熱に弱いような素材を使ってしまった場合はデメリット的なスキルがついてしまうのかもしれない。この辺りも今度試してみよう。


 そんなことを考えつつ、残りの素材もどんどん付け足していき…………



「出来上がり」


『888888888888』

『シンプルな感じ』

『試作品だからな』



 とりあえず出来上がった武器には仮の名前をつけておいて、武器種を確認してみる。

 これで魔剣の表記があれば問題なく本製作に移っていけるわけだけど……



「……魔剣になってないみたい。なんでだろう?」



 魔剣は[武器種:大剣/魔剣]のように付与される形で表記されるらしいけど、残念ながらこの剣にはその表記が無かった。

 つまりこれは魔剣ではないということになる。



「前提条件となる設備とかがあるのかな……」



 そう思ったけど、調べてみてもそれらしい記述はない。

 とすると、あとはスキルぐらいか。

 現時点で覚えているアクティブスキルは《フルスイング》《フィクスマテリアル》《シルクタッチ》の三種のみ。当然、それぞれ関係しているようなスキルではない。


 というかそもそもアクティブスキルが少ないな……と思ったけど、オートとマニュアルの二種類の製作方法がある時点でパッシブに偏るのは当然か。オートだとアクティブスキルは使うタイミングないだろうし。


 一応パッシブスキルも見てみたけど、特にそれらしきものはない。


 どうすればいいんだろうと頭を悩ませていると、不意にコメントが目に入った。



『魔剣士って中級職だし、作るのも同じ中級職じゃないとだめなんじゃない?』


「中級職? あー、職業に段階があるんだっけ」


『せやで』

『武器職人の次は武器匠だっけ』

『魔剣士って確か複合中級職だし魔剣の条件も厳しそう』

『武器種ごとにこんな覚えることあるとか頭パンクするわ』

『生産職は特にクエストとかやらなくてもレベルさえ足りてれば中級職になれるからやって来たら?』


「そうなんだ。……うん、他に思いつかないし、とりあえず中級職になってみようかな」



 今はどんな情報でもありがたい。武器職人始めてからコメントに助けられることは多々あるけど、これが無かったらもっと進行は遅れていたと思う。

 中級職には職人ギルドでなることができるという情報を貰って、私はコメントに感謝しつつギルド区域へとワープしたのだった。


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