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第二十六話 大通りの店々


 ケルベラの薬屋を訪れた後も、私は大通りを見て回った。

 やはり開いていない店は多かったけど、いくつかの店は開いていて、実際に中を見てみたりもした。というか無理やり引きずり込まれたこともあった。


 まあそれはともかく、他の店を見てわかったことが一つある。

 それは、今のところこの大通りに存在するプレイヤーの店は10軒にも満たないということだ。


 確かに生産職をメインにするプレイヤーは少ないのだろう。いろんな人がそう言ってるし、実際そういうものなのだろうというのは分かる。

 それに、生産職をメインにしようと思えば当然戦闘能力は捨てることとなる。そうなれば現状の最前線であるレオーネにたどり着くことは、少なくとも自力では無理だ。私みたいに他者の力を借りることが前提となってしまう。


 そして、そんな条件を乗り越えてレオーネにたどり着いたとしても、店を開かない理由がある。

 以前シダも言っていたことだけど、このゲームの都市名は十二星座をもとにしている。そのため、レオーネから先にまだ七つの都市エリアがあると予測されているのだ。

 仮にレオーネに店を構えたとして、将来的に別の都市の居住区が商業的に有名な場所になったとしたら、レオーネで店を開くための費用は無駄になる。そう考える人が多いのだろう。

 正直言って私は早い段階で店を立てたとしても無駄になるとは思わないけど、そこはまあそれぞれの考え方か。

 そういうと思ってました! ってノリで土地を買うシダがおかしいんだよね。わかりきってることだけど。



 ……と、そんな理由の数々によって、レオーネの大通りにはまだ店が少ない。

 現状営業しているらしい店は七つ。

 薬屋『薬』。

 想像レストラン『MACK SING』。

 家具屋『ルナティック』。

 甘味処『悠永庵(ゆうえいあん)』。

 魔道具屋『ワールド・ビザール・ウィザード』。

 そして、私の武器屋『ユーカリの葉』と、その向かいの『黒檀防具店』だ。


 店の数が少ないとはいえ、店の内容は被ってないらしい。

 甘味処と想像レストランは飲食店というくくりなら同じだとは思うけど、スイーツを専門とするなら競合するようなものでもないだろう。というか想像レストランって何? 開いてなかったからどういう店なのかは確認できてないけど、一般的なワードが二つ並ぶだけでこんなに得体の知れなさが出るのはある意味凄いな。


 ちなみにこの中で営業していたのは『悠永庵』だけだった。まあ、平日だし仕方ないか。

 ちなみに悠永庵はファンタジー食材で作った和風スイーツを食べられる店で、はっきり言ってすごく美味しかったので、多分これからも結構通うことになると思う。


 そんなことを考えながら歩いていると、先の方に私の店が見えてきた。その向かいの黒檀防具店には、まだ人がいる様子はない。


 そういえば、悠永庵の店主に耳寄りな情報を教えてもらったんだった。

 プレイヤーが経営する店は、店主がログアウトしてたり別のことをしていたりといった理由でどうしても開店時間が不定期になってしまいがちだ。客からしてみればそれは結構困ることで、だからこそ、それをどうにかするシステムがある。

 簡単に言えば、店が開いたときに通知がくるようにするシステムだ。

 他にも登録した店の情報を受け取れたりするようだけど、その内容に関しては店主が決められるらしい。


 ウィンドウを開いてメニューを呼び出し、通知関連の項目を開く。

 そこにはもう既に大通りに存在する店が登録されていて、一覧で情報が見れるようになっていた。

 開いているのは相変わらず悠永庵だけ。選択してみると、混雑情報も見ることができるようになっていた。

 通知機能のオンオフは店ごとに切り替えられるらしい。すごく便利だ。


 そんなわけで、この黒檀防具店も登録してみようと思った私だったが、店の前まで来たところである変化に気付いた。



「……あれ? 開店中になってる」



 先ほどは閉店中という札のかけられていたドアには、代わりに[開店中]という札がかけられていた。

 私が他の店を見て回ってる間にログインしたのかな。

 まあ、開いているのならとりあえず入ってみよう。

 重厚感のあるドアを開けて、私は黒檀防具店に足を踏み入れたのだった。



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