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第二十四話 ブルームーン



「金床の接続部分は……これか」



 購入した工具のコードっぽい部分を金床に接続すると、埋め込まれたオーブが淡く光り、魔力のパスが通ったことを示した。

 なんか普通にコンセントみたいなシステムだ。炉から金床へ、金床から工具へと魔力を流している感じらしい。

 一応全てダイヤルを回してみて異常が無いか確認してみるけど、特に問題はなさそう。



「よし、いい感じかな。じゃあちょっと説明しようか」


『わーい』

『まあ選ぶところも見てたんだけどな』


「そこはまあ、今から見始める人もいるかもしれないし。というわけでまずは魔導ハンマー。ダイヤルで威力を調整できるし、単純に今まで使ってたハンマーより高性能なやつ」



 使いこなすのは少し難しそうだけど、叩く強さを常に一定にすることさえできれば後はダイヤルの数値で威力を調整できるので、従来とは違うデジタルな形成を行なえるはず。



「で、これね」



 取り出したのは、グリップの先に平べったい金属質のパーツが付いた工具。近いものはコテかな。

 先程のハンマーと同じく、金床に接続されている。



「簡単に言えば、小型の金床って感じ。これを必要な部分に当てることでその部分だけ変質させる……っていう使い方をするらしい。武器の幅が広がりそう」



『これ凄いよな』

『便利そう』

『結局いくらだったの?』


「シダは教えてくれないけど、百万は超えてそうだよね……」


『うわあ』

『俺に恵んでくれ』


「流石に懐が寒くなってきましたけどね。最近あまり金策してないので当たり前ですけど。でも近々補充出来ると思うので平気ですよ!」


「一応聞いておくけど合法だよね?」


「当然合法ですよ!?」



 むしろ違法のほうが納得がいくレベルだけど。

 ……と、そんな感じでいつも通りシダの資金に驚いてるわけだけど……ここで一つ宣言しておくべきか。



「早速この魔導コテ使って武器を作っていこうと思うんだけど、その前に一つ、目標を立てようと思うんだ。店も手に入れて本格的に活動していくことになるだろうしね」


『目標!』

『同接1万人とか?』

『生産職プレイヤーの柱になれ』


「私はこれまで……というか今も、これからもそうだと思うんだけど、金銭面でシダに依存してる。そういう契約だからそれ自体は別にいいんだろうけど、正直言って私は頼りっぱなしにはなりたくないんだ。だから私の目標は、活動にかかる費用の全てを自分で賄えるようにすること」


『なるほどね』

『そういう感じか。確かにそれはいい目標なのかも』

『そう考えると既に凄い借金があるな』



 確かに。ここまでにかかった費用も全部返せるぐらいになりたいな。

 まあそれはともかく。



「つまり……最終的にはこの契約を解消したいと思ってる」



 私の言葉を聞いて、シダは目を伏せる。

 悩むような、悲しむような、そんな顔で。 



「…………分かりました。それが先生の望みなら」



 少し逡巡したのち、彼女は私の申し出を承諾した。

 ……自分でも分かってる。これは彼女の心を利用するような行為なのだと。私の言うことを断れる人じゃないというのが分かり切っていたからこその申し出だった。

 それでも、これだけは譲れない。まだ知り合って数日しか経っていないけど、私はシダとは対等な関係にありたいと思っている。だから、これは必要な約束だ。



「……さあ、目標の宣言もしたし、お待ちかねの武器生産に移って行こうか」



 そう言って、私は今回使う素材を素材台に並べる。魔導コテの試運転なので、使う素材は必要最低限のものだ。

 メイン素材は[海洋涙鉄(かいようるいてつ)]という、青色の綺麗な金属系素材を使うことにした。

 クラーケンがいるあの海岸エリアで採れるらしいこの素材はかなり粘り強いようで、今回私が作ろうとしているものにぴったりだった。



 さて、まずはいつも通り金床を使って海洋涙鉄を変質させ、叩いていく。

 今回作るのは片手剣。片手で持つ都合上、当然大剣ほど重くは出来ない。分類上は直剣よりも軽いけど、この辺りは武器種違いでも使用できるスキルが被ってたりと複雑なのでそこまで気にしなくてもいいと思う。

 ただまあ、片手剣専用のスキルには盾を持つことが前提となるものがかなりあるので、やはりある程度軽くはするべきか。


 というわけで、今回海洋涙鉄はかなり少なめにし、薄めに伸ばしていくようにする。フィール輝鋼よりも粘り強いという性質を活かす形だ。


 そんな感じで、まずは両刃の剣を作った。

 まだ整えていないので切れ味は無さそうだけど、今鋭くしても次の工程で潰れてしまうので今はこのままにする。



「で、ここで魔導コテの出番」



 金床の出力を下げ、反対にコテの出力を上げる。

 そうして刃にコテを当てて部分的に変質させ、叩いていくことで刃を曲げていった。

 上手い具合に曲げていき、剣の形が「?」マークのようになった時、コメントに正解が出てきた。



『ショーテルかな』


「ん、正解」



 ショーテルとは、エチオピアの方で使われていた両刃の曲剣の一種のこと。

 弧を描くように湾曲した刃によって盾の外側から敵を攻撃することが出来るほか、単純な切れ味でも優れている武器だ。

 よく「弧の内側でしか斬れない」と誤解されがちだけど、実際は両刃なので当然外側でも斬ることが出来る。というか、むしろ内外で素早く切り返すのが強い使い方だったり。



『ショーテル良いよな』

『実物提示教育?』

『そっちじゃない』

『ショーテル初めて知ったわ。面白いなあ』

『直剣も良いけど俺は曲剣が好き』



 やっぱり武器を作ってる時のコメントの盛り上がりは好きだな。成り行きで始めた配信だけど、既に私の一部になってる気がする。


 そんなことを思いつつ、私は小気味よくハンマーを振り続け、綺麗な青色のショーテルを作り上げたのだった。



————————

ブルームーン

武器種:片手剣 必要STR:18

攻撃力+18、斬撃強化+3、水属性強化+2、光属性強化


水面に映った三日月を、掬い上げて研いだような片手剣。水と光の性質を併せ持つ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] > 「そして、それを達成した日には……シダ。私は、この契約を解除したいと思ってる」 ユーカリさん、対等なゲーム友達として遊びたいって言葉を付け足してあげてー 私がライブで配信を見てる視聴…
[一言] MoMa…ではすまなさそうなものが
[良い点] 前作から読んでます。面白いです。 [気になる点] 24話の『ブルームーン』のステータス補正がありません。 [一言] 前作含めこれからも更新楽しみにしています。
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