第二話 キャラメイク
アリフラの世界にダイブした私の目の前には、広大な銀河の様子が広がっていた。
その様子は徐々に一つの星系にクローズアップされていく。
太陽系……ではないか。多分全く関係ない場所の話なのかな。
なんて思っていると、どこからともなく声が響いてきて、それに合わせるように周囲の様子も変化し始めた。
――――
かつて、人々は隕石から生じた「魔族」と呼ばれる侵略生物との戦争下にあった。
長きにわたる戦いの末、現生人類は惑星マルキスの放棄を決定。星渡の秘儀によって隣星エルセヴィータへと移住することとなる。
その星を星歴元年とし、人々は新たな地での暮らしを始めたのだった。
時は流れ、星歴百五十年。星の加護を受けた「開拓者」達の存在もあり、人々は無事にエルセヴィータへと根付いた。
――しかしながら、この星は未だに開拓の余地を残している。
生命を拒む死の領域、人の手に負えぬ異形の獣、継承者を待つ光の剣、砂塵に埋もれた古代の遺構。伝聞にて語られる噂に過ぎないが、いずれも存在するものだ。
貴方たちは「開拓者」として未知の領域を開拓し、伝承を解き明かしていくことができる。無論、新たな伝承を創り出すことも。
見果てぬ大地に夢を追うもよし。強敵との戦いに生を見出すもよし。伝説に比類する武具を作るも、古文書に記された謎を追い求めるもよし。
出来ることは――いや、すべきことは山ほどある。
それが「開拓者」の使命であり、全ては貴方の手に委ねられているのだから。
――――
壮大な音楽とともに、<Alisphere Fragments>のロゴが浮かび上がる。
こういうオープニングは新しいゲームを始めたって実感できるので好きだ。
さて、若干のロードが入り、[キャラメイクを開始します]という表示が現れた。
それから、目の前にデフォルトのアバターが現れて、そこに並ぶように複数のウィンドウが展開される。
さっそく見た目からいじってしまってもいいけど、とりあえずここは他の部分から見てみることにしようかな。
「名前と見た目は当然として、選べるのは種族と職業か」
ざっとスクロールしてみて分かったけど、選べる職業の幅は結構広い。
職業ごとに使える武器種がいくつかあって、それによって育成方針も結構変わってくるみたいだ。
それに伴って武器種が多い。
もしかしたら武器職人も作れる武器種に制限があったり……と不安になったけど、さすがにそこまで細かくは分かれていないようだった。
さすがに武器や防具、アクセサリーなど、カテゴリーによって分類はされているものの、武器だけを作るのならこの武器職人というものになればいいらしい。
防具とかに興味がないわけではないけど、多分そこまで手を回す余裕はないだろうし。
「職業は武器職人でいいとして……種族どうしよう」
種族はざっと10種類以上はある。エルフとかドワーフみたいなお約束的な種族はいないけど、それぞれ人型をベースに種族ごとの個性がある。
さて、種族は見た目も結構大事ではあるけれど、なによりも重要なのはステータスの差。
種族によってステータスの上昇に差があったり、種族特性というものがあったりするらしい。
まあ、それがそこまで大きな差になるのかはわからないし、ゲーム開始後に種族を変えることもできるらしいので……とりあえず武器生産に影響のありそうな種族を選ぶことにしようかな。
と、そんな感じでキャラメイクを進めること一時間、ようやくアバターが完成した。
落ち着いたオリーブ色の髪の毛と、金色の目。身長は大体160cmくらい。
種族は鍛紋族というやつで、外見的にはベーシックな人族(このゲームでは普人族と呼ばれる種族)と変わらないけど、生まれつき身体に刺青のような紋様が入っているという設定で、実際にキャラメイクでは紋様を入れる項目が必須のものになっていた。
私はとりあえず首の右側から右手までの部位に、複数の直線的な紋様を入れてみている。
紋様は自分で描くこともできるらしいけど、まあそこまで凝るつもりもないのでデフォルトのものを使用した。
ちなみに何故鍛紋族を選んだのかというと、DEX(器用値)が上がりやすいというのと、種族特性が武器生産に関係のある種族だったからだ。
基本的に、このゲームでは生産時にDEXを参照することが多いらしい。STR(筋力)とかが必要になる場合もあるそうだけど、DEXに比べると設備なんかで代用しやすいのだとか。
種族特性の【炉の神】というのも武器生産に関係していて、武器や防具などの生産速度がアップしたり、生産に必要なキャパシティとやらが増えやすくなったりするのだとか。
現段階では用語とか正直よくわからないけれど、まあこれが大外れってことはないでしょ。
一番しんどいのは、プレイヤーが作る武器よりもドロップする武器の方が強いという場合だけど……まあさすがにそんな調整にはなっていないだろうし。もしそうだったら暴動を起こそう。
という感じで大体のキャラメイクを終え、最後に私は自分の名前を登録した。
手元に表示された端末を操作し、入力を終えると、続けて案内が表示される。
[イントネーションを登録します。名前を声に出して読み上げてください]
「ユーカリ=スターク」
本名である按樹がユーカリを表す言葉だから、名前を付ける時は基本ユーカリにしてる。
スタークというのは何となく。フルネームで登録可能だったので、せっかくだから付けてみた。
[これでキャラメイクは終了です]
[これより貴女が足を踏み入れるのは、未知の領域の残る星]
[自由で無限で、それ故に残酷な世界]
[何を為すのも為さぬのも、全てが貴女次第なこの世界で]
[――どうか貴女の旅路に、幸と苦難の多からんことを]
先ほどとは声質の違うナレーターの台詞と、暗転する視界。
引きずり込まれるような感覚とともに、<Alisphere Fragments>での私の職人生活が幕を開けたのだった。