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第十六話 聖なる銀に夜を想う

この小説の書き方について未だ模索中です。



「とりあえず、カルジール純聖銀の加工出力を確認してみようかな」



 最も一般的な素材である鉄インゴットの加工出力は300。よく使われるらしいフィール輝鋼の加工出力は500。

 カルジール純聖銀がどのくらいの位置にあるのかはわからないけど、一先ず300からやってみることにする。


 金床に純聖銀を置いて、ダイヤルを回し、300に合わせ――瞬間、ぼごぼごっと低い音が鳴った。



「!?」


『めっちゃ変質してる!!』

『300でこれかよ』

『音が凄い』



 金床の上に置かれた純聖銀は煮立つようにぼこぼこと泡立っていた。

 炉の魔力によって素材が急激に変質したときに発生する現象だ。理科とかでやった突沸というやつに似ているような気がする。

 慌ててダイヤルを0に戻すと反応は収まったが、若干形は変化してしまった。



「300で強すぎるんだ……じゃあ200とかかな」



 出力はさらに低く、少しずつ上げていく。100辺りから始め、200を超えたあたりで変質が始まり、大体220くらいで適切な状態になった。



『鉄よりも低いんだな』

『やわらけえ』


「やっぱ混ぜるのが前提って素材みたいだね。これ単体でできたら面白そうだけど、今回は素直に混ぜていこう」



 フィール白輝鋼、青輝鋼、金輝鋼を並べ、その上に置くような形で純聖銀を配置。ダイヤルを480に合わせると輝鋼が変質し始め、その魔力が間接的に純聖銀に伝わって変質が始まった。



「さて、今回はスキルとか魔法も使っていくよ」


『おー』

『何があったっけ』

『フルスイングとシルクタッチだっけ?』


「その二つと、さっき確認してみたら獲得してた《フィクスマテリアル》っていう魔法もあるよ。素材を固定させるスキルみたい」



 いままで素材を成型するときには素材を固定する都合上片手で叩くしかなかったけど、このスキルを使うと両手で叩くことができるようになる。

 金属を融合させるためのハンマーがあって、それが明らかに片手では扱えない代物だったのでどうすればいいんだろうと思っていたけど、こういう便利なスキルがあったらしい。丁度今回は金属を融合させる工程が入るので、早速使っていこうと思う。



「《フィクスマテリアル》」



 魔法の名を唱えると、鎖のようなエフェクトが一瞬光った。

 見た感じではわからないけど、アイテムステータスには【固定】という状態が付与されているので問題なく使用できているらしい。



「《フルスイング》は……今は良いかな。やりすぎちゃう可能性もあるし」



 融合用ハンマーを両手で持ち、アイテムに狙いを定め、勢いよく振り下ろす。

 普段アイテムを叩く時とは異なった感触が手に伝わってきて、妙な感じだ。多分融合の時特有の感触なんだと思う。

 そのまま打撃を繰り返すと、やがて感触が通常のアイテムと同じような感じに変化したので、ここで一旦叩くのをやめてアイテム情報を見てみることに。


[フィール・カルジール合金]

フィール輝鋼とカルジール純聖銀の合金。聖なる力を増幅させる効果を持つ。



「うん、出来てるね」


『アイテムの名前とかそういう感じになるんだな』

『まあ組み合わせごとに名前あったらさすがに狂気感じる』


「とりあえず合金はこれでよし。一旦素材台の方に戻しておいて、ベースを作ろうか」



 蒼黒骨をベースに、フィール・カルジール合金で大まかな形を作り、カムラン青皮を柄に巻き付ける。

 その後微調整もかねて刀身を磨いていき――



「完成。夜想剣ニュイ・エトワーレ」


『88888888888』

『めっちゃおしゃれ!』

『いいね』

『聖剣っぽさはないけどかっこいい』



 夜想剣ニュイ・エトワーレ。星夜の名を冠したその剣の濃い青色の刀身には金色の線が伸び、星や月を模した装飾が並ぶ。

 ……あれ、なんか考えてたのとかなり変わってる気がする。青はアクセントとして使う予定だったんだけど、気が付いたらメインになっていた。まあいいか。


――――

夜想剣ニュイ・エトワーレ

必要STR:36

攻撃力+24、斬撃強化+5、聖属性強化+2

――――


 目的の聖属性強化もしっかりついていた。ヘルメスのアルケヴル・キーに比べると弱めではあるけれど、必要STRの割には強いような気がする。合金がよかったのかな。



「武器製作を見たのは初めてだが……凄いな。かなり融通の利くシステムのようだ。技術的に成熟すれば、職人は様々なクランから求められる存在になるだろうな」



 ニュイ・エトワールを見ながら、感心したようにヘルメスが呟く。



『こんなに凝ったやり方してるのこの人ぐらいだけどね』

『ぶっちゃけ生産職のマニュアルシステムってどれもめちゃくちゃポテンシャル高いと思うんだけど、いざやろうと思うとできることが多すぎてどうしようもなくなるんだよな』

『というか今更だけど生産工程配信したら技術とか盗まれそうだけどいいのか』


「技術かー……正直盗まれたほうがよくない? 今のところ全然情報がないからやりにくい部分もあるんだよね。別に利益独占しようとかは考えてないし、むしろある程度賑わってほしいかなって」


『実際マニュアルでここまでやるの難しいからな』

『ユーカリの登場で生産職スレも結構にぎわってるらしい』

『防具職人のエボニー、アクセサリー職人のスパイダー、薬学者のケルベラときて、武器職人のユーカリって感じだったな』


「有名なの? その三人って」


「ケルベラは私と同じ【セフィロト】のメンバーだ。妙な男だが……腕はいい。生産職なのに普通に戦闘もこなすしな」


『ちなみにシダPがクラーケンに使ってたやつも多分ケルベラが作った薬品』

『エボニーはユーカリさんと同じく配信者で、よくわからないんだけどメイドさんがいつも傍にいる』

『ていうかスパイダーって誰?』

『実際に見たことはないけど、流通経路不明で高性能なアクセサリーが軒並み[製作者:スパイダー=リリィ]になってて都市伝説化してるんだよな』



 なんかすごい人ばっかだな。



「……え、私ってそんな人たちと同列に扱われてるの?」


『まあ、これまで目立った武器職人がいなかったからな』

『初心者なのにアイテムの性能の引き出し方うますぎるし充分怖い』

『武器、種類多すぎるしな……』



 人気なのは良いんだけど、話聞いてる限り珍獣っぽい扱われ方してない?

 それはちょっと複雑なんだけど……少なくとも現状の武器職人の中では凄いほうらしいので、このまま突き進んでいくことにしようかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 彼岸花とか怖っ!
[良い点] そりゃまあアクセサリーや防具とちがって 現実とは違うといえ、その違うからこそアレンジ大変そうなオシャレ度も確保出来る武器作れる可愛い女の子なんて珍獣です [一言] 謎のアクセサリー職人………
[良い点] 名前かっこいい!
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