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第一話 〈Alisphere Fragments〉

ゆるく書きます。ゆるく読んでください。

よろしくお願いします。



 将来の夢。

 それは、小さい頃から漠然と考え続けて、高校生になった今でも考えなければいけない、学生の大きな宿題。

 年を経るごとにその真剣さは増していって、パイロットになりたいとか、ケーキ屋になりたいとか、何かの競技選手になりたいとか、そういう夢は徐々に消えていく傾向にあると思う。

 小学校の卒業文集に書いた夢を今でも持ち続けているという人は、そう多くはないんじゃないだろうか。


 そんな中で、私は昔からずっと変わらない一つの夢を持ち続けている。

 幼稚園の頃にはすでに考えていたような気もするし、難しいとは分かっていながら、今でもずっと胸に抱いている。


 押入れから引っ張り出してきた卒業文集には、拙い字でこう書かれていた。




 私の夢

 六年二組 星野(ほしの)按樹(あんじゅ)


 私の将来の夢は、武器職人になることです。




————————



 ある土曜の昼。宅配を受け取った私は、すぐに自室に戻って開封の儀を執り行うことにした。



「うん、ようやく来た」



 小躍りしそうになるのを抑え、丁寧に段ボール箱を開封する。

 そこから取り出した箱に書かれていたのは[Greed W-MODEL HEADGEAR]という文字列。

 ヴィムラ社が製造する、最新モデルのヘッドギアだ。


 これまでは姉のお下がりを使っていたのだけど、せっかくだからゲームソフトを買うのに合わせて新調することにした。

 同じようなことを考えていた人が大勢いたのだろうか。同時期に多数の予約が入ったらしく、二週間ほど遅れての配送だったけど、それは仕方ない。

 これでようやく待ちに待った〈Alisphere(アリスフィア) Fragments(フラグメンツ)〉を遊べるのだから細かいことは気にしないでおこう。


 ヘッドギアの初期設定と引き継ぎを済ませ、〈Alisphere Fragments〉をインストール。

 ゲージが伸びるのを見ながら、まだ見ぬ世界に想いを馳せる。


〈Alisphere Fragments〉、通称『アリフラ』とは、超有名ゲーム会社「Solar Ray」によって作られた新作VRMMOだ。


 様々な職業、多様な種族。

 広大な世界を舞台に、唯一無二の冒険を。


 そんなキャッチコピーと共に先々週発売されたアリフラは、予想通り売れに売れているらしい。

 剣や魔法を手にファンタジー世界を冒険していくというまさに王道な作品で、内容を絶賛するレビューも多く、GiiMoのクロスレビューも最高評価だった。


 どんな世界観も好きだけど、やっぱりファンタジーが一番好き。自由度が高いのも良いところだ。

 なにより、生産職があるというのが良い。

 生産職があるということはつまり武器が作れるということ。最高。


 ぶっちゃけ、私は冒険にはそこまで興味がない。ないというよりは、武器を作るモチベーションが高すぎて二の次になっているといったほうが正しいかも。

 なら武器を作るだけのゲームをすればいいじゃないかと思うかもしれない。

 確かにそれ専用のゲームというのは武器の作成手順などかなり凝った仕様になっているだろうし、ただ武器を作るというだけならそのほうが良いとも思う。


 ただ、私は作った武器を誰かに所有してもらいたいと思っているし、誰かのために武器を作りたいとも思っている。

 だからこそのVRMMOだ。

 VRMMOなら、作った武器を実際に使ってもらえる。最高。



 さて、プレイ可能という表示が出て、遂にゲームの準備が整った。

 インストール自体はまだやっているようだけど、恐らくキャラメイクとかに必要なデータを先に入れたとかそういうことなのだろう。

 眼前に浮かぶ星を模したロゴデザインに視線を合わせ、そうして私は、〈Alisphere Fragments〉の世界にフルダイブしたのだった。

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