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第84話

 一か月前、歩美からその訃報が伝えられ、花予は愕然した。命を狙う者達を避けて転々と逃亡生活をしながらも笹城家のため、そして歩美のためにも頑張っていた湖都美が死んでしまったことに。


 早々に諒花に出張しないといけない用事が出来たと嘘をついた花予は急いで支度をし、彼女が登校している間、同じく学校を欠席した歩美と東京駅で合流し、新幹線で大阪へと早々に出発した。お通夜と告別式に参列し、歩美とは一週間半行動をともにした。


「湖都美さんはどうして亡くなったんだよ、ハナ」

『交通事故。姉さん──お前の母さんと同じだよ』

 それは父親も死に、諒花だけが生き残った高速道路での事故。が、今は置いておく。

 そのあっさり言い切った花予の声は無念さを帯びていた。今にも苛立ち泣きそうなくらいの思いが。諒花は歩美が大阪へ行く前しか交流はなかったが、花予はそれ以降も離れていてもずっと交流していたことがひしひしと伝わってくる。


「諒花、替わって」

 そこで零にスマホを渡す。

「花予さん。歩美とも湖都美さんの秘密を共有していたんですよね?」

『勿論そうだよ。二人だけでね』


 それにこれも初めて話すけどさ、と前置きをした上で花予は続ける。

『歩美ちゃんが京都からこっちに戻ってこれたのは、あたしが湖都美さんから面倒見るの引き受けたからなんだ』

「引き受けた……? それってつまり──」

『そう。戻ってきた歩美ちゃんのお目付け役はあたしさ。何かあったときはすぐに助けられるようにね──』


 歩美については最初は大阪に戻り、やがてそこから京都の別荘に移り住ませたりもしていた湖都美であったが、歩美の面倒を見切れず、やがて限界を感じた彼女は一か八かある場所にメールを送り、電話をかけた。その相手こそが花予。

 泣きつくように事情を話し、とにかく歩美を笹城家と敵対している関西に拠を持つ者の手の届かない安全な場所に移すことだけを二人で夜通し議論した。


 そして毎晩、いくつもの夜を経て、花予は承諾することとなる。もしもの時は自分が代わりに面倒を見る。諒花と零もいるからと近い所に歩美を引っ越させても構わないということを。

 最初は北海道が有力だった。湖都美のコネで歩美を移せる別荘がある。だが、それ以前に歩美は姉と離れて暮らすならばどこがいいかと訊かれた際、東京と強く希望していた。

 理由は諒花をはじめ昔の友達がいるからに他ならない。それを汲み、花予は快く歩美を迎えることにした。


 歩美は家事もできるため、一人暮らしはできる。しかし異人(ゼノ)ではない。剣道は出来ても戦闘のプロフェッショナル達には敵わない。仮に彼女の身に何かあったとしても助けを呼べるだけでなく、日常の中で近くにいて暖かく見守れる人が必要と湖都美は結論づけた。


 学費や生活費、住まいなど、お金の絡む問題は実家から振り込まれるので心配ない。だが行政手続きなど大人の手を借りないと出来ないものは子供を見る大人でなければ出来ない。関東にも笹城家の者はいるにはいるが、いずれも仕事で歩美のことばかり見ていられない。


 隣じゃなくてもいい。とにかく近くに頼れる大人や仲間がいる場所。それこそが歩美には必要であった。家の都合で住む場所を転々とさせられ、振り回されるよりはずっと。それこそが湖都美の願いであった。


『これが全ての経緯さ。湖都美さんはあたしより若いけど、歩美ちゃんのことをとてもよく考えてる、良い子だった……』

 電話の向こうから寂しく懐かしむ声が聞こえてくる。それは今はもういない彼女との思い出が花予の中でも次々出てきている証拠なのは明らかだった。


「ありがとうございます。花予さん。やはりお二人は歩美のためにずっと私達に隠れて動いていたということですね」


 スマホをあて、聞く耳をじっと傾けていた零はその裏での事実をじっと噛み締める。真実を目の前に、裏でこんな事が起こっていたとは全く想像もしていなかったという顔でもある。


『零ちゃん、ごめんね。湖都美さんが亡くなったことと歩美ちゃん疎開計画に関しては落ち着いたら、どこかのタイミングで諒花には話すつもりだったんだけど…………迷って話せなかった──』


 直後、零の耳に当てられているスマホが強引に引っ張りあげられた。


「ハナ!!! どうして今までこんな大事なこと黙ってたんだよぉぉぉ!!!」



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