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第59話

 あの学校を見て一つ思うことがあった。廃墟を壊してまで作った学校をもってしてもダメなのか。

「なあ、零。話変わるけど、志刃舘みてえにスポーツが強い学校に仮にアタシが入れても、メディカルチェックのせいで授業ぐらいしかスポーツやらせてもらえないのは変わらないよな……?」

「メディカルチェックは国の義務だから、どんな学校に入ってもスポーツの道を目指そうとするなら必ず諒花にとっては必ず障害になる」

「そう……だよな……」

 ベンチでうなだれる。いくら学校でも国の決めたことには逆らえない。決められたルールの下で動いているにすぎないのだ。


 大多数の人間がチカラを持たずに生まれてくるこの世界において、異人(ゼノ)として生まれてきた者には必ず降りかかる宿命がある。それはスポーツの道を行くならば、普通の人間達を基準とした厳しいルールに従わなければならないことだ。

 誰かが競技の前にドーピングをはじめとした不正を働けば公平性は失われる。不正を排除するには不正の全てを消すしかない。

 ドーピング対策とその教育のためとか、表社会にとって都合の良い言葉を並べて本当は自分達だけでスポーツを独占しようとしているのか。いや、それは断じてないはずだ。何かある。いつかこの目で確かめたいから歩き続けるのだ。


「零。あの時アタシに言ってくれた言葉、覚えてるか?」

「勿論。今も覚えてるよ」


『異能の蔓延る裏を知れば、生きる答えを必ず見つけられる。他人に教えてもらうのではなく自分自身で納得いく答えを見つけること。でなければあなたの答えではない』


 その言葉は今も前を向いていくための支え。なぜこういう仕組みが出来たのか。なぜそれが夢を阻んだのか。それは表から見るだけでは全く分からない。


「ずっと思ってたけど、アタシを励ましてくれたんだよな……お前がいてくれて本当に助かるよ」

「諒花にはあそこで挫けて欲しくなかったから。あれから一年半。色んな敵と戦って、色んなことがあったよね」

 表の裏に広がる、異能の蔓延る裏社会。世界は表と裏で成り立っていてどこかで何かしら繋がっている。そんな世界を見て探している生きる答え。それを求め、今もひたすら突き進んでいる。


「そうだな。ついにアタシ達、滝沢家にも目をつけられるようになっちまったしな」

 謎の女騎士事件と、それに端を発する滝沢家の襲撃。青山という一つの土地の裏社会を支配するかつてない大勢力。

 今はこれらの問題を解決することが先決だ。女騎士、円藤由里、滝沢家。この三つは何かしら交わっている。だがその先に何があるのかは今は想像がつかない。今までも戦いの果てに何があるとか、そういうことは目の前の問題を片付けてるうちは浮かばなかったし、たとえ浮かんでもそれはよく当たるとは言えない。


 そういえば、滝沢家というと気になることがあった。紫水は初めて会った時から健康的な腹部を出した活発で動きやすい軽装姿。秋風も吹くことのあるこの季節なのにだ。その見た目から容易に想像できた。でなければ、あんな格好をするわけがない。彼女も同じだろう。


 異人(ゼノ)としての宿命。彼女も異人(ゼノ)である以上、例外ではない。これも、どこかで確かめてみるしかなさそうだ。 



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