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第53話

「シャワー、私は諒花が起きる前に入っちゃったからどうぞ」

「マジかよ、はええな……じゃあ、借りるな」


 朝食をとって、布団を畳み、シャワーを浴びた。降りしきるシャワーの中、諒花は悪夢に落ちると同時に自分はよく眠っていたんだと実感する。少し悪いことをしたかもしれない。零にとってはこちらが寝て欲しかったのは分かっているが。


 洗面所で歯磨きをし、普段着に着替えた。家から着てきた黒いジャンパーの下は実は白いシャツ、動きやすい紺色のランニングスカート。いずれも歩美にプリント返すだけのために着たものだが、まさかこれでこのまま宿泊することになるとは予想だにしなかった。

 正直な話、着替えたい。これも家に帰れない状況を作った青山の女王のせいだ。零から服を借りることは出来ない。サイズが合わないからだ。それに似合わない。身長も零より高く、体格も小学校を出る頃には大きくなるのを肩幅や胴体から実感していた。

 着替えについて、花予に相談してみようとスマホを開くとちょうどそこに新規の吹き出しが来ていた。零も支度をし、白いコートに袖を通している。


「おい、零! ハナからだぞ」

『夜はこっちは何もなかったから殆どゲームしてたよ。全然やれてなかった積みゲーの一つが終わっちまった……良いエンディングだったから零ちゃんに見せたかったなー』


「諒花、花予さんがなんだって?」

 支度中の零が呼ばれて近づいてきたのでスマホをそっと見せる。

「花予さん……何のゲームか分からないけど一緒にエンディング、見たかったな」

 ホッと息をつく零。

 早速、夜は大丈夫だったという現状を打ち込んで吹き出しを送るがここであることがふと浮かぶ。着替えよりも先に知れば現状を打開するのに近づくかもしれないアレ。

「そうだ零。円藤由里のことだけどさ、左利きなんだろ?」

「その可能性が極めて高い。普通、片手で剣を持つ時は利き腕で持つものだから」

「じゃあ──」


 思い立ったらと早速花予に送ってみることにした。

『ところでハナ、この前やってたテレビで円藤由里の利き腕は左利きって聞かなかったか?』

 その吹き出しに対してすぐに既読と返事が来た。

『ごめん。聞き覚えないなー。ご飯作りながらテレビつけてたし』

 すると続けて花予から新たな吹き出しが来る。


『そうだ。あれから蔭山さんに二人のこと相談してみたんだ。忙しいらしいけど車で助けに行けるかもしれないって。どうせ渋谷に留まるつもりはないんだろ? せめてこれから行く場所は教えてほしいな』

「零、ハナに三軒茶屋って言っとくか?」

 自分だけでは決められない。零にスマホを見せた。

「向こうに行ってどんな結果になるか分からないけど、花予さんには言っておこう」


 これから円藤由里の情報を求め三軒茶屋──通称、三茶に乗り込む。だがその目的までは伝えなかった。この作戦も上手くいくかは分からない。が、総勢2500人との直接対決を回避するにはこれ以外方法は無い。説明するのは全て終わってからでも遅くはない。

 行き先を伝えた所で、ここでまた花予から吹き出しが来る。


「え?」

 その内容に思わず見開いた。

『そうだ。今朝早くからウチに歩美ちゃんが来てさ、諒花の私物をいくらか預けたんだ。たぶん、もう零ちゃんの家に着いてると思う』

「零ー、歩美がこれから家に来るんだってさ。アタシの私物をいくらか届けてくれるらしい」

 スマホを開いて何やらいじっている零がこちらを見た。


「歩美、体調は回復したのかな。ちょっと待とうか」

 ついでにその私物には間違いなく、洗面所で欲しかったアレも入っていることだろう。



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