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第50話

「諒花、滝沢家の目的ってなに? 何か知ってる?」

 通話が終わり、横から聞いていた零からそうくると思ったと、すぐにありのままを話す。

「まあな。アタシ、滝沢家の紫水って奴に遭遇して戦ったんだけど、向こうはアタシらがあの謎の女騎士じゃないって分かると引き上げていったんだ。でもトップはアネキの翡翠だから、みんなアタシ達のどちらかが女騎士だと思って必死に捜し回ってるらしい」


「滝沢家は謎の女騎士と因縁があるようね」

 零に紫水から聞いた話を説明する。謎の女騎士は六日前、港区の青山に本拠地を構える滝沢家に甚大な被害をもたらし、そのため滝沢家は仕返しのために女騎士打倒に燃えていると。

「……私達の噂が広まってそう思わせてしまったのかも」

「あのカニ野郎──シーザーもアタシ達のことは裏社会に広まったって言ってたもんな」


「偶然にも程がある……六日前の日付は私達があのビルで樫木麻彩を倒した翌日のことよ」

 女騎士が青山で被害をもたらしてから、まだそれほど経っていない。膨れた胸元、太ももからその鎧の形状から中身が女性であることは明確、ちょうどその手前に目立っていたがために、疑いの目が向けられたとしか言えない。

「零、アネキを止めるしか方法はないよな」

「だけどいくら私達が力を合わせても、滝沢家と真っ向勝負することは戦力差の意味で厳しい」

「だよな……」

 諒花は俯く。500人が渋谷に来ていても相手はまだ2000人いる。たとえ女騎士の被害に遭って体制が崩れていても二人を迎撃するならば充分に磐石だ。その大多数が普通の人間だとしても、敵の中心に正面から突っ込んでいくことは無謀でしかない。集中砲火だ。


「ねえ、紫水とは何か話したの?」

「なんつうか、紫水一人ではアネキを止めることを躊躇ってる様子だった。自分が止めないとやばいことは分かってる様子だったんだけどな……」

 頭をかき、腕を組みながら話すとその時のことが蘇る。どうも不安のある返しだった。

「いくら妹とは言っても異議を唱えにくいのかもしれない。相手は青山の裏社会を統べる女王だから」

 相手は青山の女王。その権力の前には逆らえばどうなるか分からないほどの圧力があるのだろう。


「なあ、零。アタシ達も青山へ行って紫水に手を貸せばすぐ終わらせられるんじゃないか? ハナのためにもこの騒ぎを早く終わらせること優先した方がいい」

 零は苦悶の表情を浮かべる。

「……諒花、分かる。花予さんのためだよね。だけど、向こうは敵の本拠地。そうやって突っ込んで諒花が死んじゃったら花予さんも悲しむ……私や歩美もそう」

「だけど、このままだったらハナが……!」

 一刻も早く終わらせられるならそうしたい。そんな諒花を零は手を前に出して制する。

「気持ちは分かるけど、急いては事を仕損ずる。私に一つ、考えがある。少し時間はかかるけど、上手くいけば戦わずに全て終わらせられるかもしれない」


 そう言われると途端に今にも飛び出そうな気持ちにブレーキがかかる。

「じゃあどうするんだよ? 殴らないで、話し合いで終わらせるってことか?」

「単純な話、滝沢家は女騎士を捜してる。つまりその正体を私達が先に暴けば、こちらを狙う理由も無くなる。それがたとえ、私達どちらかが女騎士だと思っている青山の女王でも」

「あー、なるほど! そういうことか!」

 納得がいった。同時にあることを思い出す。謎の女騎士に関しては行方を追いたくても手掛かりが殆ど無かったことを。まさか。

「零。もしかして女騎士について何か分かったのか?」

 たまらず期待の眼差しを向ける。


「うん。明日、三軒茶屋へ行こう。そこに女騎士に繋がる手掛かりがあるかもしれないから。私の考えをこれから夕飯用意しながら話すから聞いてくれる?」

「勿論だ」


 行方を追おうにも尻尾を掴めなかった女騎士。その手掛かりがある可能性があるのならば、食いつく以外ない。

 零のことである。ただのデタラメではなく、何かを考えての発言だというのは諒花には分かっていた。



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