第35話
「いたぞ!! 一気に動けなくして仕留めろ!!」
最初の五人組の三下をぶっ倒した所で、右の周り角から次々と様々な色のスーツ姿のヤクザが十人ほど徒党を組んでなだれこんできた。
「援軍のお出ましか!! 喧嘩売るってんなら遠慮なく買うぜ!!」
先ほど電話してた奴の呼びかけに応じてやってきたのだろう。向かってくる所を待っているのは面倒だ。真正面から一気に突っ込み、真ん中にいる黒サングラスの野郎の頬を拳で粉砕すると、
「初月流・竜巻旋風投げ!!」
込めた声とともに力強くそいつの胸ぐらを掴み、周りにいる敵の群れを巻き込みながらグルグル回して投げ飛ばし、灰色のアスファルトに叩きつけた。大の男を長柄の武器代わりにすることで敵の群れを瞬く間に蹴散らしていく。
──カチャ。カチャカチャカチャ……
背後より金属音。銃の安全装置を外した音が聞こえた。まだ生き残りがいた。振り向いた直後、背後から不意打ちの雷弾が放たれた。が、何も不意打ちになっていない。青白く燃えるオーラを纏った人狼の右腕で素早くなぎ払ったからだ。稲妻が辺りに飛び散る。
「うわ……コイツなんだよ!! 勝てるわけねえよ!! グァァァァァァッ!!」
狼狽えている所に、人狼少女は飛びかかる。体制を崩された所で彼女のトドメの鉄拳で頭をやられ、不意打ちヤクザは意識を失った。
辺りには倒したヤクザ達が這いつくばっている。皆、気を失っていて動くことはない。
「ったく、何なんだこいつらは……」
苦戦する相手ではなかったが、何者かが気になる。辺りを見渡すと、近くに倒れていた黒スーツの胸ポケットについている黄金で小さく丸いバッジに目がいった。
それは代紋だ。ヤクザの証である。立ち位置はギャングやチンピラと同じだが、このバッジは彼らよりも格上であることを示している。車を乗り回したり数が多かったり規模がまるで違う。それでも雑魚は雑魚であることに変わりはないが。
ぶんどってバッジを見てみるとその円の中央には縦に『滝沢』と書かれていた。
「おぉー、そのワイルドな腕、やっぱり噂通りだ!」
「……!」
死角から女の声が聞こえた。こちらを見て、まるで小さい子供がヒーローに目を輝かせるような。
声がした背後に視線を向けると、そこには一人の少女が左手を腰に立てて堂々と立っていた。海のように青い色をした美しい双眸、束ねた長い黒髪を横にたらし、整った顔立ちで頭にある水色の玉の装飾が電灯の光によって輝いている。
水色シャツの上に真ん中を開けた裾の短い青いコートを着ていて健康的な腹部を露出、下はホットパンツに柔らかく艶やかな太股。非常に軽装で年も近そうだ。
「この街に巣くっていたギャングだけでなく、大バサミのシーザーや死神の樫木麻彩も倒した人狼の女の子って、キミのことでしょ? ──初月諒花!」
彼女は笑みを崩さずそう語りながらそっと一歩ずつ歩いてこちらに近づいてきた。
「ああ、この街を脅かす、こっちに喧嘩売ってきた奴らはみんなぶっ倒してやったぜ! お前の名前は?」
威勢良い諒花の挨拶に痺れたのか、その言葉を待っていたを言わんばかりに訊かれた彼女は満面の笑みを浮かべ、
「あたしの名前は滝沢紫水! 滝沢家の組員を倒したからってさ、調子乗らないでね。今度はあたしと勝負だ!」
紫水と名乗った女は拳を前にその場で両手の拳を敵に向けるファイティングポーズで構えた。なるほど、親玉の登場というわけか。
「お前も喧嘩師か。いいぜ、こっちだって手加減無しだ!」
向こうのポーズに合わせてこちらも両手の人狼の拳を前に同じポーズで構える。向こうの広げる太股、腹部はとても艶やかだが引き締まっていてよく鍛えられているのがよく伝わる。
伝わってくるこの強者の雰囲気は先ほどまでの三下ヤクザ軍団とは明らかに違う。内側から熱いオーラとなって伝わってくる異人特有のエネルギー、異源素。それは明るい水色に燃えていた。




