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第34話

 歩美のマンションを後にし、再び住宅街の来た道を戻っていく。暗い夜道の先にはたまに通行人とすれ違う以外は何もない。

 そういえば歩美が早退したことを花予は知らないことに今更ながら気づいた。後で話す旨を返信して帰路につく。


「ん?」

 路上の前方に何やら黒い人影が密集しているのが見えた。ちょっと立ち止まって様子を見てみる。とはいえ、すっかり夜でこの距離からでは顔はハッキリと見えない。


「おい、この女の顔見たらすぐここに知らせろ!」

 その問いかけを振り切るように人影は夜道に消えていった。待てよという男達の引き止めも無視して逃げ去る早歩きで。

 目を凝らして見てみるとそこには五人組の男どもがふんぞり返っていた。赤、青、黄、黒、紫。様々なジャケットのスーツに崩して着ているワイシャツ、髪を立て、デコが真ん前に出たイカツイ頭に無精髭とサングラス。この時点で一般人ではない。


「あー、そこのお嬢さん。ちょっといいかな?」

 五人組のうち、リーダー格と思われる赤スーツにサングラスをした中年男は一枚の写真を取り出した。先ほどよりは多少やんわりとした口調だ。

「この女見かけたら、ここにすぐ知らせろ」

「──!」 


 突きつけられた写真を見て、思わず見開いた。美しい銀髪に右目を覆う黒い眼帯、自分も袖を通しているお馴染みの紺色セーラー服。写真左上には10桁の電話番号がハイフン付きで記載されていた。


「お前ら。なんでコイツ捜してんだよ? 見つけたらどうするつもりだ?」

 その写真を見て出た静かな声音は内側に溢れる熱い怒りのもの。それもそのはず、そこに写るのは紛れもない親友の顔であるからだ。それがどういうわけか指名手配されていることに苛立ちしかなかった。それもこんな汚い三下どもに。


「あぁーん? なんだよアマ。いっちょまえの口を効きやがって。そりゃ、ギタギタにするに決まって──グォァァッ!!」

 突っかかってきたそのリーダー格の中年臭いツラに一発の鉄拳をぶちかましてやった。


「あ、兄貴ィ!! 大丈夫ですかい!!」

 周りの下っ端たちが兄貴と呼ぶその男を心配して集まる。

「くっそ……コイツに写真見せた俺がバカだった……お前ら、すぐ応援を呼べ! コイツ、よく見たらもう一人の捜してるアマだ!」

「ま、まさか初月諒花!? お前ら、コイツからまずやっちまえ!」

「こちらF班! 初月諒花を見つけた! 至急応援求む!」


 リーダー格の赤スーツは顔がぐしゃぐしゃになりながらも立ち上がり、取り巻きは切り替えて拳を前に突き出してこちらを囲み、一人がスマホでどこかに電話を始めた。


「何のつもりか知らねえけど、アタシと零を狙ってんなら──もう──いいよなぁ!」

 まずは真っ先に後方で電話している奴の前に瞬時に跳んでいき横から思い切りストレートで殴り倒すと、背後から鉄パイプを下ろしてくる奴の顔面に向かって右足を直撃させ、サングラスを割るほどのローキックが炸裂する。


「くそっ、これでも喰らえアマ!!」

 足を思い切り伸ばす技は隙が出来がちだ。そこをを狙ったか、下っ端の一人が懐から拳銃を向けて躊躇なく無双する人狼少女に引き金を引いた。

 その銃口から放たれた銃弾は光弾とも言うべき光を帯びていた。それは夜道を照らす稲妻弾。


 こんな攻撃は何発も砕いてきた。恐るるに足りない。向こうの本気だという挨拶代わりと受け取っておこう。前方に蒼白い光を帯びた人狼の鉄拳で稲妻の銃弾を粉砕すると、その弾丸の飛んできた方向に高く飛びかかる。

 こっち来るなと言わんばかりに迎撃の引き金が次々と引かれるが、飛んでくるそれらを人狼の豪腕で飛引き裂き、拳銃ごと最初に撃ってきたその男を突き飛ばした。



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