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第109話

 その呼吸の通り道であり生命を繋ぐ華奢な喉元を消し飛ばさんと、標準を定めて静かに向けられる翡翠の細い指。


 その爪の先端が静かに輝き、それは放たれようとしていた。下手に動けばその指は的確にこちらの喉元を指してくる。デタラメに走り回っても、違う重要な部位に向けられる恐れもある。心臓や脳とか。


 相殺か交錯か。前者狙いでやるしかない。左手に握る黒剣を向け、剣先から放たれた氷弾。こちらに狙いを定める翡翠の右手をピンポイントに狙った氷弾。それが翡翠に迫る──


「くっ!」

 右手を氷弾で撃たれ、やむを得ず断念した様子で左手で右手を抑えながらそっと下ろす。が、同時に何かを床に落とすようなそぶりをして翡翠が一歩後退する。

 すると落とされたそれは突如、足元から巨木の根がどこからともなくグングン膨張して出現し、縦に伸びて根で出来た壁を形成、怯んだ翡翠を狙おうと更にもう一発放った氷弾は壁に阻まれて見事に砕け散った。


 先ほど床に落としたものは何なのか。さながらマジックのような技のトリックはもう分かっていた。

「植物の種──あなたにとっては武器にもなるということね」

「またしてもご名答です。ええ、私が操るこの森で収穫した植物の種。私の合図で発芽し、牙を剥くのです」

 追撃の氷弾を防いだ植物の壁が役目を終えてしおれて消えていく中、その影に隠れていた余裕な笑みを見せる翡翠が現れた。


「役目を終えた植物はまた大地に還り、新たな芽の糧となる。ですが、これだけではありません」


 翡翠は右手から、持っていた別の種をこちらに目掛けて投げつけた。宙に浮かんだ種は一気に中身が膨張し、尖った葉に覆われた枝や幹が伸びて襲いかかる。放たれたのはまさに無限に巨大化する植物の網。木は膨張を続け、生々しく拡大し、零を飲み込もうと辺りを覆い尽くそうとする。


「斬っても、斬ってもキリがない……!?」

 膨張し迫る植物の枝や幹は剣で斬り裂いても、それらが溢れ出る中枢からまた続々と植物は手を伸ばし、零を捕らえるべく襲いかかる。剣から繰り出す氷の刃に斬られて凍り付けにされても、自らそれを打ち破ってキリなく膨張を続ける木。


 その木の後ろで腕を組み、高みの見物をする翡翠。涼しげな様子で、

「ふふっ、そんなちゃっちな氷では私のチカラは抑えられません──では動きが鈍った所で、これはどうでしょう?」


 翡翠は懐から黒い何かを取り出した。それは六枚の漆黒のカラスの羽を扇状にした羽扇(うせん)


「それは──!」

「それっ」

 正面に広げて持てば羽で顔が隠れるほどのそれを、横に大きくひと振りすると残像で描かれた三日月の斬撃が高速で放たれる。


 零の目の前でうごめき、暴れる植物の隙間を通り抜け、植物と応戦する零を、植物とともに挟撃するように襲いかかる。



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