↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/175

第12話

「くっ……! どういうつもりなの?」

「うるせえ、こっちに来い! 言う通りにしなかったら……こうだぞ?」


 赤バンダナの男は右手でピースサインをし、その中指と人差し指を首元に近づけてくる。

 逆らってはいけないという直感を生み、息を飲んだ。こいつの手はそのまま人を傷つけられるほどのチカラを持つ。

 誘導されるままに歩道に停車していた黒の乗用車の後ろの座席に乗せられ、赤バンダナの男も隣に座った。ハンドルは黒スーツにサングラスをかけた短髪の男が握っていた。


「待たせたな! さあ、オレがこれから言う場所まで運んでくれ」


 赤バンダナの男がそう指示をすると、黙って車にエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。沢山の人と車が行きする渋谷の大通り。

 五分、それほど遠くには行っていない。車を走らせた先で強制的に下ろされると、そこはちょうど建物と建物の間にある路地裏への道。言われるがままについていくしかなかった。


「バーッハハハハ! 着いたぞ。ここだぁ!」

 コンクリートに囲まれた、誰もいない狭い空間にたどり着くといきなり背中を後ろから強く押し倒された。

 体を強く地面に叩きつけられるとすぐに手をついて立ち上がった。


「さーてと。逃げられない程度に痛めつけるか」

 直後、赤バンダナの男の両手が巨大なハサミに変化したのとほぼ同時に、零も一瞬の白い残光とともに両手に黒剣を出現させる。


「あなた、私をどうするつもりなの?」

「ぷっ」

 真剣な零の表情とは対照的に、赤いバンダナの男は吹き出した。

「バーッハハハハハハ!! こんな状況で抵抗するつもりか? この大バサミのシーザー様を知らねえのか!」

 腹の底から大笑いする赤バンダナの男。


「……知っている。あなたが現代の切り裂きジャック……!」

 監視対象である彼女の監視の傍ら、裏社会の情報を定期的に集める中で名前は聞いたことがあった。三か月前の池袋の件もそうだが、以前から裏社会で名をあげている猛者の一人だ。

 その能力から想像できるような無差別殺傷こそ起こしたという情報は表立ってないものの、彼と戦ってやられた者はその体をズタズタのボロボロに、惨たらしい所まで引き裂かれるという。

 そうやって狙った獲物を両手の大バサミで引き裂き、返り血を散らし、豪快に高笑いする姿から彼についた渾名は"現代の切り裂きジャック"。


「そうさ、その通りよォ! オレの目的はつええ奴をぶっ倒して、オレの名を更に轟かせることだ!」

 大バサミを広げ、咆哮をあげるかのように高らかに宣言する。きっと三か月前の池袋もそんなノリで参加したに違いない。


「隻眼の女。まずはお前を料理してやる。でもって次はあの黒髪の女だ。大人しく助けを呼んだ方が身の為だぜ?」

「断る。諒花は私が守る。絶対に……!」

 挑発に乗らず、地面を強く踏みしめ、両手の剣を構えた。


「バーッハハハハハハハ!! 凛としていて勇ましいじゃねェか!! じゃあ、嫌でも呼ばせてやるよ!!」


 ──来る。

 その両手のハサミを前に突き出し、飛びかかってきた。

 重さ充分なそれを軽々と振り下ろし、両方の口を開けていざ食いかからんと襲い来る。それはまるで双頭の怪物だ。


 二刀の剣で打ち合おうにもヘタすれば押し込まれる危険がある。敵はハサミ一つにつき二つの刃。実質四刀の武器を持っているに等しい。

 口が開いた時、とっさの判断で二刀の剣で双頭の怪物たる大バサミの口に斬りかかった──しかし、それは馬鹿すぎる誤算だった。


 ガガガ……ガシャーーーーーーン!


 二刀の黒剣が双頭の怪物の頑丈顎に耐え切れず、三秒も持たずに砕け散ったのだ。その破片が白い残光となって消える。

 新たな剣を創造し、手に出現させた時には遅かった。腹部目掛けて、長い脚が伸ばされ、靴のつま先が突き刺さって視界がメチャクチャになった。目まぐるしく視界が変わると背中から硬い何かにぶつかった痛覚が全身を駆け巡った。

 顔を横に向けると、それは都市の一部分たる巨大なコンクリート壁だった。同時に自分の懐から、何か硬いものが地面に転げ落ちる音がした──ような気がした。


「バーッハハハハハハハ!! 剣なんかで挑むから、こうなるんだよォ!! さっきまでの威勢の良い姿はどこいったんだ?」

 シーザーはその近くに転げ落ちたものを拾い上げた。それは懐のポケットから滑り出ていたスマホだった。それを倒れているこちらに突きつけた。


「ほら、死にたくなかったら、さっさとこれであの黒髪の女を呼べ。お前はあいつを誘き出すエサだ! バーッハハハハハハ!!」


 勝ち誇る彼の笑い声。それを堪(こら)えながら、スマホを出し、文字を打ち、緑の吹き出しにして送信した。電話も考えたが、この高笑いが向こうに聞こえると思うとたまらなかった。自分が諒花を守らなければいけないのに──



 この後、諒花が駆けつけて助けに来てくれた。その戦いを覗き見ていて、あれだけ勝ち誇っていたシーザーが倒れる姿は見ていてとても心地の良いものだった。

 だが──自分が情けなくて嫌になる。戦う際、考えればこうなることは予想出来たはずなのに。もっと冷静に対処出来なかったのか? 最近、監視の仕事で戦闘力が鈍ってしまったのだろうか。

 いや、ここで挫けることは許されない。何としても果たさなければならない。自分の望みのために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。