傘
傘をさす仕草で
恋に落ちるような春です
緩いぬくみにかどわかされて
雨の香は
知らない街へいざなう
とんたんとんと
雨粒が踊る
街の景色はうららかで
この恋を知っているのは
まだわたしだけでいいよ
春は
ささやいている!
いま飛び込むことは彩りだと
春は
ささやいているよ
雨音はたしかに夢を目醒めさせると
耳を澄ませば
ささやきが聞こえる
とんたんとんと叩く粒の
いじらしさとか憎らしさが
いまこの季節を彩るよ
雨は清流となり
脈打つ世界の中心へそそぐ
いま奔流に従えと
傘を叩く雨粒のおと