高校生活の始まり 3 ドッヂボール大会
明日もテスト&レポートだけれど、僕はそれでもプリコネをする(中毒者
トイレで胃の痛みが治まってから教室へ再び向かうと、クラスは先程とは違い活気が増してきていた
僕は小声で「おはようございます」と言いながら教室のドアを開けると、少し目線をみんなから集めたがすぐにそれぞれの会話に戻っていく
僕は自分の席がある真ん中の列の一番後ろの席を見ると、先程まで僕の机を蹴っていたと思われる「竹内緑」さんが僕の机の上に座り、友達と楽しそうにお喋りしている姿が見えた
あの光景は幻想だった?と勘違いしてしまうほど爽やかに笑い、穏やかな空気を作る彼女はそれだけで絵になっていた
僕は自分の見たものはやはり間違いだったのだろうか?と考えながら自分の席の近くまできた
でもあれ事実だったんだなぁ
思いっきり机の足を繋ぐ支え棒曲がってる(白目
「今年から机1年生用に新しくされたから、とても綺麗なんだ!」
と一番最初に説明してくれた先生ごめんなさい。早速傷ついてます…
完全に折れきってはないにせよ、明らかに湾曲しているその支え棒を僕はポカーンと見ていると
「あ、守君おはよう!」
と向こうから話しかけられた
僕は下の名前で呼ばれた事に胸がドキンとしたけれど、それよりも竹内緑さんの笑顔の下に般若が見えて、僕はたじろぎ返事が出来なかった
「ここ邪魔だね!自分の席の戻るね!」
いこ!と周りにいた女子を引き連れ、左斜め前ら辺の自分の席に移動した竹内緑さんと他の女子達を目線で見送った後、僕は自分の席に座った
心なしか少し甘い香りが机周りに残っていてこれまたドキンとさせられた僕だが、あの光景をフラッシュバックさせ僕は真顔になった
その真顔はSHR(ショートホームルーム、朝の会的なやつ)が終わるまで崩れなかったので担任の先生をビビらせていたのはまた別のお話。
1,2,限と授業が終わり、3限はA,B,C,Dの4クラス合同の体育の時間となっていた
ここの学校は体育館、校庭がとても広く4クラスぐらい一斉に体育が出来るのだ
今日の内容は体育測定が先月終わったので、交流目的のクラス対抗ドッヂボール大会となっていた
うちのクラス、A組は初戦B組との対戦となり、準備を進めていると
「なぁ?君どこの小学校だった?」
と突然声をかけられた
僕はそーっと後ろを振り返ってみると、小学生高学年と言われても納得が行くぐらい小柄な男の子がこっちを見つめていた
話しかけられることなんて中々ないから僕は焦りながら
「ちょ、ちょっとだけ待ってもらえますか?」
と言った
少しでも通っていた小学校の名前全てを言うとしたら沢山になっちゃうな。
僕が回答に悩んでいると
「ん?そんなに考えるもんか?」
と、言われてしまった
たしかに、自分でも何でそんなこと考えていたんだろう。と思いそのまま口に出した
「いや、沢山転校してたから、どこの小学校だったか聞かれたら難しいんだ…小1ぐらいの時はここら辺にいたんだけどね」
僕のこの言葉を聞くと目の前の男の子は凄い目を見開いて
「やっぱり!そのおでこあたりのカッコいい傷!小学校一年生の時に怪我したか!?」
と周りにも聞こえるぐらい興奮した大きな声で言ってきた
僕は驚いてその男の子の顔を始めてマジマジと見た。
身長は160cmないであろうその小柄な男の子はそれでもしっかりと細身でも筋肉のついた体をしており、目がぱっちりしている。胸には体育着に「椎名」とかいてあった。
特徴的だったのはすごく柔らかそうな短髪
彼の喜怒哀楽に合わせ、ふわふわ踊るその髪は思わず撫でたくなる印象。
僕は頭の片隅にある細い記憶をたどっていくと、あの病室の光景が頭に残った
「君はもしかして…」
「こらー!話してないで準備手伝えー!もう試合始めても良い時間だぞー!」
「やべ、先生だ!後で昼飯一緒に食おうぜ!約束!あいつも呼ぶわ。ドッヂ全力だからな!」
「う、うん!わかった!」
僕は色々聞きたいことだらけで困惑もしていたが、同級生と話すという事が久々すぎてそれだけで嬉しくなっていた
そして、おでこから右眉にかけて痛々しく残るこの傷が久し振りに「かっこいい」と言われたこと
僕は僕自身でもよく分からない高揚感が体をウキウキさせていた。
その後、ドッヂボール凄い頑張ったんだ
僕は3人の相手にボールをヒットさせたけど、あの小さな男の子、椎名くんに当てられてしまった
椎名くんは軽そうな体を俊敏に、しなやかに動かしボールを避けたり、キャッチして瞬く間にそのボールを投げヒットさせたり
男でも惚れ惚れするようなプレー。女子の目線を集め、うちのクラスの女の子達まで応援していた
結果は椎名くんの活躍でB組の勝ち。A組は惜負だった
授業の時間的に、決勝と3位決定戦は次の体育の時間に回されお終いとなった
僕は急いで椎名くんを探したけれど、クラスメイトと和気藹々としている彼をみて、寄り付せなくなってしまってそのまま僕はクラスへ帰った。
彼はお昼を一緒に食べよう!と言ってくれた
今思えばどこで食べるか、どうやって食べるかも決まってないただの口約束だけれど、この約束をした事実が僕にとって胸を温かくする出来事だった
僕はきっと4限の間、ずっと笑顔だったと思う
オメェ…主人公なんて…なんて健気なんだよぉ……
俺、オメェの可愛さでご飯一杯は食べれるよ(犯罪者予備軍




