成仏出来ないくらい強い思い
初投稿です
1日目
「幽霊ってさ、絶対いると思うんだよね」
彼女は真剣な顔をしてそう言っていた。幽霊に会ったことはない。しかし必ず幽霊は居ると。なんの根拠もなく、ただ単純に居ると思うからだ。と
「え、怖いから嫌だよ」
「そうだよ。幽霊なんて居たら絶対見てるし、」
周りの女子生徒達はそれを否定した。教室が騒がしくなり、端から、端へと。今や教室中幽霊談義をしている。そんな中、僕は彼女達の話に聞き耳を立てて幽霊談義の結果を見守ろうと思った。
「絶対!絶対居るもん!」
居ると言っているのはあの子だけで、他の娘はみんな否定している。だが、あの子の容姿は綺麗だから、周りの男子生徒はみんなあの子の肩を持って、幽霊は居ると思うななんて話をしている。話題に入って居ない僕には関係が無かったから、窓の外を見てぽけーっとして居たら
「ねえ、滝沢はどう思うの?」
「えっ?」
不意をつかれた。まさか僕にまで聞いてくるとは、思っても見なかった。
「 滝沢、どうした?早く答えんか」
って言うか、いきなり呼び捨てとはいくら容姿が優れて居て人気者だからと言って礼儀が欠けているんじゃないのか。先生みたいな言い方してるし。僕はそう思って、あの子の意見を真っ当から否定する事にした。そんな事を考えるのは時間の無駄だ。「幽霊は絶対に、絶対に居ないと思う。」
「ほう、お前は、授業を聞かずにそんな事を考えて居たのか?」
「へ?」
また不意を突かれた。どうやら、いつの間にか寝て居た様だ。教室からクスクスと笑い声が聞こえてくる。それに混じって女子生徒から盗み聞してたんだ、とか言う声も聞こえてくる。そんな事を言ったって教室の真ん中で大声で話してたら聞き耳なんか立てなくても聞こえる。あの子の方を見て見たら、あの子と目が合った。すぐに目を逸らされたから、今以上に変な奴だと思われただろう。来週からどんな扱いになるか、週末なのに休みを楽しめる気がしない。
「 まったく、滝沢は後で職員室に来るように。では、今日の授業はここまで。皆、週末だからと言ってコイツみたいに気を抜いて過ごすと職員室でみっちり説教してやるからな」
なんてこった!職員室とか、入学した頃にしか行った事はないぞ、呼び出しゼロ記録をどうしてくれる。話はちょっと長くなりそうだし、荷物は持って行こう。
とてつもなく長かった。さっきまで明るかったのにもう日が落ち始めて居る。さっさと家に帰ろう。
「ねえねえ」
家に帰って何をしよう、説教されて癪だから勉強はしないでおこう
「ねえってば、おーい。聞こえてる?」
今日は散々だったし、散歩をするってのはどうだろうか、気分転換になるかも
「もしかして、私幽霊になっちゃった?」
「そんなわけないだろう」
悔しい。スルーしきれなかった。玄関で出くわすとは僕もタイミングが悪いな。幽霊話引きずってるし、気まずいなあ
「あ、やっと反応してくれた。もう、反応が無いからスルーしてるのか私か貴方のどっちかが幽霊になっちゃって届いてないのかと思っちゃった」
「僕は幽霊にはならないし、君も幽霊じゃ無い。あと、スルーされてるって思ったならなぜ最初に幽霊の方を選んだわけ?」
「だって、スルーなんて普通しないじゃない?他に人が居ればまだしも、この教室には今や私と君だけなんだから」
普通しないと言うが、しようと思ってしたわけなんだがややこしくなると嫌だし、心の内に秘めておくとしよう
「それはごめん。それじゃあ僕はこれで。もう外は暗いし、なるべく早く帰りなよ」
「えー?こんな暗いのに、女の子を1人置いて帰るの?送ってってよ!方向一緒でしょ?」
「いや、全然違うし、むしろ逆なくらいじゃない?」
「ふふっ、バレたか。じゃあ、また月曜日ね!」
彼女はそう言って笑ってみせた。夕焼けに照らされた彼女の顔は、笑顔なのにどこか寂しげで、2度と会えない別れを惜しむような、そんな表情に見えた。
僕はたまらず、彼女を呼び止めてしまった。
「ははーん、やっぱり!そうだと思ったわ!うんうん、貴方はそうだよね、女の子を1人残して帰れるような子じゃないと私は思っていましたとも!
「あ、それとも私に気があるとか!?いやぁ、私ってモテるなー!よっ!モテ杉美!」
「呼び止めたのをもう後悔し始めてるんだけど」
「わー!ごめんごめん、冗談だよ冗談!さ、帰ろう?君の家はこっちの方面だったよね?」
「いや、君を送って行くよ。女の子を1人夜道を歩かせる訳にはいかないからね」特に彼女はなんか危なさそうだし
「いやー、貴方って凄く優しいんだね!なんで教室で1人なのかわからないくらいよ」
「痛いところを突くって言うか、君はデリカシーが無さすぎるんじゃないのかな。今まであまり話したこと無い相手にいきなり教室で1人とか言って」
「だって事実じゃない」
事実なんだけどさ、もっとこう、いい方ってもんがあると思う。僕らはトボトボひたすら彼女の家の方に向かって居た。日はすでに落ち、ちらほらと商店の電気も消えてきて居る。
「さて、そんな事はどうでもいいの。本題に入りましょう!私、貴方に聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと?君の方が頭はいいはずだから、ご期待に添えるか不安で仕方がないよ」
「ほら、今日教室で言っていたじゃない。幽霊は居ないんだー!って。なんでそう思うのかなって」
「そんな言い方はしてなかったと思うんだけど」
「まあまあ、そこも置いて置いて。で、実際どうなの?教えて欲しいな」
「単純だよ。もし幽霊なんかが存在して居たら、この世界は色んな幽霊で埋め尽くされて居るから、一人二人見たなんて話はちゃんちゃらおかしいからね」みたいなことをテレビで言ってたし
「それ、この間テレビでやってた奴でしょ」
バレたか、流石幽霊が居るって言うからにはそういうのチェックしてるんだろうな
「だいたい幽霊ってこの世に強い未練があるとなるって言うから、その強い未練ってのを満たすのが難しくて少ないんじゃない?だから、幽霊でいっぱいにはならないんじゃないななって私は思うの」
「未練か。だとしたら僕は絶対に幽霊にはならないね。なりたくもない。死んだ後まで彷徨って、出来ないことをしようと延々に生き続けるなんてさ」
「ふふふ、幽霊なのに生き続けるなんて、面白いこと言うのね」
「そりゃ、幽霊は除霊で消滅とか昇天とかするんだし、この世にいる限りは生きてるようなもんじゃないのかな」
そんなことを言ってしまったから、彼女を調子に乗らせてしまった。やっぱり貴方も幽霊を信じているんじゃない、とか幽霊が生きてるか死んでるかとか散々論議をかまされて正直滅入ってしまった。そんなこんなして居る内に街を抜け、畑道を通り彼女の家に着いた。
「学校から家、ぼちぼち遠いんだね」
「うん、結構ね。毎朝早起きが大変ですぞー!でも今日は早かった。すっごく早く着いちゃった気分。あーあ、もっとお話ししたかったのになー?誰かさんが話し相手になってくれればいいのになー?」
いや、勘弁してください。確かに楽しくはあったけど、これ以上遅くなると親が心配するし
「あ、そうだ。連絡先、交換しよう?」
「えっ、あ、うん」
またまた不意を突かれた。高校に入って女子と初めて個人的に連絡先を交換した。
じゃ、また明日ね、と彼女は颯爽と家に入って行ってしまった。なんか淋しいような、気が楽になったような。僕も早く家に帰ろう。ちなみに、帰る途中もメールの受信は止まなかった。
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