最終話【真のリーダー】
刺ノ坂と情熱丸の世紀の一戦から3日後のこと。病院のベッドの上に舞い戻ってしまった情熱丸を訪れる男たちがいた。
彼らは3日前、土俵に倒れ込んだ情熱丸を担架に乗せて救急車に運んだ初老の男たちだった。そして彼らはベッドの上の包帯だらけの情熱丸にいう。
「情熱丸くん、我々は君のような人物を待ち続けていたのだ」
『えっ?』となる情熱丸。
「我々は日本相撲協会の幹部だ」
「現在の相撲界は賭博や八百長などで腐敗しきっている。そんな相撲界を一新してくれるようなリーダーを探し続けていたのだ」
「で、でも、なんでオレなんですか?」戸惑いを隠せない情熱丸。
「肩書きも実績も関係ない。また、口先だけではない、真の勇気と誠実さを持った力士を我々は探していた」相撲協会の幹部はいう。「そこで刺ノ坂という力士を送り込み、刺ノ坂に対して真っ向から戦いを挑んでくれる勇者があらわれるのを待っていたのだ」
「あらわれることはないのか?とあきらめかけていたとき……」
「そう、情熱丸くん、君があらわれたのだよ」
言葉が出ない情熱丸。
「君こそ真の力士だ!」
退院後、情熱丸は20歳という異例中の異例の若さで日本相撲協会会長となり、腐敗しきった相撲界の改革のために生涯を捧げたのであった。【終わり】