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Route.out -ルートアウト-  作者: ヘイル
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1章 1話「終わりへの始まり」

 たった今、眼前に広がる光景を一言で言い表すのならば、そう……絶望。俺を取り囲む様にして、半円状に何十体ものモンスターが虎視眈々と狙いを定めていた。俺はそんなモンスター達から一切目を逸らすことはせず、ただ静かに、一歩、また一歩と後ずさりをする。それに倣うかのようにモンスター達も一歩、また一歩と俺の方へと歩を進めた。

 これ以上にないまでの緊迫した状態に、体中の汗腺から嫌な汗が止まらず、乾ききった地面に幾つもの黒染みを作る。それと同様に、俺を狙うモンスター達は低く唸り続けていた。月明かりだけが頼りな中、モンスター達の目が奇妙に光る。

 さぁ、どうする……!?

 俺の頭の中は半分混乱状態に陥り、正常な判断も儘ならなくなっていた。先程から巡ってくる思考は同じものばかりで、結果的に行きつく先は決まって「絶命」という言葉で終わる。

 何か……!!何か、方法がある筈だ……!!

 それでも一生懸命抗おうと機能しない頭を必死に働かすが、何一つこの最悪な状況を打開する術は見つからない。

 あぁ……、せめて予備の剣を持ってくるんだった……。

 終いには俺の脳が打開策を考える事を完全にやめてしまい、走馬灯の様に過去の記憶が脳内を駆け巡る。そんな俺は、ほんの数十分前までの自分を殺してやりたいほどに憎んでいた。確かに、俺が生まれ育った故郷であるリマジハ村を出発する前、新しく拵えた剣があった。しかし、それも使いようによっては僅かな寿命で終わりを告げる。そんな事もあり、モンスターとの交戦の真っ直中にその剣の耐久度は0を迎え、一気に形勢逆転を喰らう羽目になってしまった。その結果、今の俺はここから反撃する術を何一つ持っていませんよ。と体全体で表現しているかの様に……丸腰だった……。

 今更になって訪れる後悔に、「おいおい、時間は戻らないんだぜ?」と言われている様な気さえしてくる。いや、第一後悔と言う物は、後から悔やむという意味なのだから、今回の様な"事"が起こる前に「危険があるから、予備に剣をもう一本持って行った方がいいよ」なんて優しく教えてくれるはずもない。後悔先に立たずとは、まさに今のこの状態の事を指すのだろう……。

「……っ!?」

 突如俺の背中に硬い何かが触れ、つい一瞬前までの思考は一気に何処かへと吹き飛ぶ。それと共に、俺の心臓は飛び出してしまうのではと言う程に、大きく一度だけ脈を打った。俺はそんな心臓を落ち着けながらに、少し顔を後ろへと向け、横目でその正体を探る。そこには、俺の何十倍にも大きいであろう岩が立ちふさがっていた。それが目に入るや否や、顔を再びモンスター達の方へと向け小さく呟く。

「あぁ……。……終わった……」

 まさか、こんな所で俺の人生に終止符が打たれるとは思ってもみなかった。ここで言うのもなんだけれど、俺が村を出た事は、誰一人として知らない。と言うのも、長い年月の間、両親に交渉という名の土下座を繰り返したのだが、結局許しは貰えず、それに耐え兼ねた俺は村一番の剣士である父親の剣を盗んで村を飛び出したのだ。門番を撒かす事に加え、早く世界をこの目に入れたいと囃し立てる心に踊らされ、俺は走っていた。振り返る事もせず、ただ走っていた。

 村は徐々に遠のき、行先も決めず好奇心だけが俺を動かしている最中、数十体のモンスターに出くわす。普段から冒険に憧れるだけで、大して修行を積んでいなかった俺は、それこそ最初は威勢がよかったのだけれど、現実はそんなに甘くはなく、借りるという形で盗んできた父親の剣も儚く散って行った。そうして今に至るのだ。

 あぁ……こんな本能剥き出しのモンスター達でさえ、俺が逃げ場を完全に無くすまで慎重に追い詰めるのだから、俺はそれ以下という事になるなぁ……。

 こんな状況なのにも関わらず、そういった思考ばかりが正確に働く。いや、違う。多分悟りを開いたのだろう。今の俺は、先程とは打って変わって絶命に怯える事はなく、ただ目の前のモンスター達を目に入れながら、時折瞬きをすると言う何の苦労もない作業を淡々とこなしているだけだった。

 もう、一心に殺してくれ。

 心の中でただその一言を紡ぐ。それと共に、俺は右足を思い切り後ろに引き、音を出す。

 ザッ

「「ギギィ―!!!」」

 モンスターの唸り声だけが届いていた耳を、劈く叫声。モンスターたちは一斉に俺の方へと飛びかかってきた。俺はそんな状況に、強く目を瞑る。そうして最期を迎えようと思った。

『空太!!』

「っ!?」

 刹那、突如として聞こえてきた怒声に俺の意識は揺らぐ。それと共に俺は目を開いた。

「え……?」

 確かに今、俺の目の前には数十体ものモンスターがいて、俺はそのモンスターに食べられ最期を迎え様としていた筈だ。それなのに俺の目に映るのは、月夜の乾いた大地に目を光らせ俺に飛びかかってきたモンスター達ではなかった。

 徐々に視界が鮮明になっていく中眼前に広がるのは、中々寝付けない夜、考え事をしてはそれを止め、再び考え事をすると言う眠れなくなる典型的な悪循環を繰り返しながらに、呆然と見つめていた天井だった。そこで漸く、俺がベットの上で寝ている事を理解する。そんな中、何かの気配を感じそちらへと顔を向けた。其処には、とてもよく見慣れた女の人が立っていた。

「何時まで寝てるの!何度起こしたと思ってるのよ!」

 母さんだ……。

 母さんは鬼の形相で、まだベットに横たわっている俺に大声で怒鳴り散らす。何時もならば鬱陶しく思う毎朝のイベントも、何故か今日は奇妙は安心感に駆られる。それも全て、先程まで見ていた夢のせいだろう。何せ、あまりにも現実離れした体験をしていたのだから……。

 そんな事もあってか、俺は溜息をつくと共に心底母さんに感謝する。

「はぁ……もう少しで短い人生を終える所だった……。ありがとう、母さん……」

 朝から意味不明な言葉を浴びせられた母さんは、キョトンとした顔つきになる。しかし、それもほんの一瞬の事で、すぐさま呆れた表情へと変わった。

「何寝ぼけた事言ってるのよっ、学校遅刻するわよっ!」

 捨て台詞の様にそう言い残しながら俺の部屋を出て行く母さんの言葉に、俺は完全にその意識を現実に引っ張られる。勢いよく起き上がると、目覚まし時計に目をやった。

 時刻は7時40分。

「っ!?やばっ!!」

 先程までの安心感やらは一気に消え失せ、今の俺は焦り一色になっていた。急いで階段を駆け下りると、洗面所で御座なりに顔を洗い、再び階段を駆け上がる。半ば息切れ状態なのにも気を留めず、制服へと着替え鞄を手に取ると、一度リビングに入り仏壇にお線香を焚き、今度は台所へと駆け込む。朝食の良い匂いが鼻を付く中、テーブルに置かれていたおかずを一口、二口つまんで玄関へと急いだ。

「い、いってきまーす!!」

「いってらっしゃーいっ」

 家の中に向かって一言、いってきますと言い放つと、母さんの返事を耳に入れつつ玄関を豪快に開き、そのまま学校へと向かった―――




 清々し過ぎる程の晴天な空。時折、耳障りに鳴り響く小鳥の声。太陽は既にその姿を現し、煩わしくも世界と言う物に光を与えていた。目に入るもの、耳に届くもの全てが「今日」という一日の始まりを祝福しているかの様だった。一方の俺はそんな世界とは対照的に、地面に広がる灰色のアスファルトを見つめ、俯き加減に歩く。そうしてやさぐれた様に世界を見下していた。その目つきは悪く、目の下にはクマが出来ていた。と言うのも、俺が溺愛している「ルートイン」と言うパソコンゲームを、彼是6時間程プレイした結果、時計は0時を回り、流石に起きれないだろと我に返ってベットに入ったのが朝方の4時30分頃。そんな事を此処数年続けているのだから、そりゃあクマも出来る。と言うよりも出来ない方がおかしい。それに加え、今日は一段と目つきが悪くなっていた。それも全て母親のせいだ。

 毎夜毎夜、貴重な睡眠時間を削りゲームに熱中した後、朝はギリギリまで眠っているというのが俺のスタイルなのだけれど、どうも母親が俺の目覚ましの時計を30分早めていたらしい。つまりは、俺が今朝、目覚まし時計を目にし焦っていた時は、まだ余裕で登校できる時間帯だったという事だ。

 朝ごはんも裕に食べる時間があったのにも関わらず、自らの手でそれを捨ててしまった。それに気づいたのも、学校まで40分程の道のりを30分程来てしまっていた時の事。たまたま公園に設置されていた時計に目をやったのだ。俺は一瞬目を疑い、何度も目を凝らして見たが、明らかに時間が遡っている。そんな中、「後10時間は寝たいよ」と言っている頭をフルに回転させながらも、何とかたどり着いた思考が母親の仕業だという事だった。確かに、毎朝声を張りながら俺を起こしている母親の気持ちを考えれば、それくらいの事を仕出かす気持ちも分からなくはない。けれど、だからと言って折角朝ごはんを食べる時間がある日まで、急いで学校に行かせなくても……と言うのが俺の心情だった。かと言って、ほぼ学校側まで来てしまっている時点で、今更家に戻るのも正直面倒くさい。そんなエゴから来る苛立ちもあり、今日の俺は一段と「世界」と言う物を鬱陶しく感じていた。

「はぁ……」

 無意識の内に溜息をつく始末だ。まぁ、自業自得ではあるのだけれど……。

 そんな感じで通い慣れたこの道を黙々と歩いている中、きっと何一つ変わらないであろう世界を目に入れてやろうと、何気なく顔を上げた。そんな俺の数メートル先、住宅地の十字路を一人の女の人が横切る。その姿は目を奪われるもので、一言で言えば「美人」。この距離でも分かるその綺麗な顔立ちに、抜群のスタイル。着ている制服からして、この近くにある高校の生徒だという事が分かった。

 しかし見慣れない顔だ。何時もここを通って学校まで行っているのだろうか。だとしたら、俺が知らない筈が……。

 ……いや、待てよ……。

 確かに俺は、自分が通っていた小学校と隣接する中学に通っている訳だから、目を瞑ってでも学校までたどり着ける道ではある。しかしここ数年、余裕を持って学校に登校したためしがない。そんな俺が、こんな時間にこの道を通ったのも、あたりまえだけど数年振りだろう。だとしたら、俺が知らなくてもおかしくはない……。

 その場に佇み、俺が眼前の女の人を知らない理由をあれやこれやと考えている最中、女の人は反対側に渡り見えなくなる寸前だった。俺はそんな女の人を目で追いながらに、自然と駆け足でその十字路まで進む。けれど、相手はすぐさま住宅地の細道へと入って行ってしまい、完全に見えなくなる。再び呆然とその場に佇んだ俺は、その方を数分見つめた後我に返り、学校までの通学路に足を運ぶ。

 それにしても、正直、朝からこんな美人な人を目に入れられるとは思ってもみなかった。

 もしも、あの女の人が毎朝この時間に、さっきの道を通っていたのならば……と考えると、俺はなんて勿体無い事をしていたのだと後悔する。生きてる中で、楽しみがゲームしかないと言う、何とも詰まらなく腐った凡人の俺に、目にするだけで一日を頑張れるイベントが毎朝待ち受けていたと言うのに……!!

 俺は今すぐにでも、其処ら辺の電柱に頭突きを喰らわせてやりたい衝動に駆られる。しかしそれは現実的に考えて絶対に病院送りになるので、拳を強く握りしめる程度で何とか自分を落ち着ける。そうして平然を装った。そんな中、今の今まで忘れかけていた事を思いだす。と言うよりも、先程の女の人を目にした時から頭の片隅でちらついていた記憶だ。

 ……そう言えば、今朝見てた夢って、俺がルートインの主人公になっている夢だったなぁ……。

 俺が最期を迎える寸前で、母親に起こされたあの夢。あれは紛れもなく、毎晩徹夜に明け暮れてまで熱中しているゲーム、ルートインだった。俺の目の前を横切った女の人を見て思い出したのも、その女の人がルートインに出てくる「アリサ」というキャラクターに似ている事にあった。俺がその人に目を奪われた理由の一つに、それがあるのかもしれない。そんな俺の中で駆け巡る思考が行きつく先。それは……、

 ゲームのやり過ぎで、遂には夢にまで見てしまう程に俺は侵されていたのか……。

 ただそれだけだった――――――


人目に触れる処女作品となりますので、話の作りが下手かもしれませんが大目に見ていただけたら幸いです。

頑張って連載させていこうと思います。よろしくお願いします。

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