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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
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魔力のことわり

「それであなたは誰なの?」

 わたしは目の前の…おそらく人族と思われる少女を見据えた。

 見た目の年齢は15.6歳ぐらいかしら、肩にかかるぐらいの癖のないストレートの薄い青色の髪と同色の目の色。顔立ちはとても中性的で凛々しい中に幼さを残している感じかしら。何故か深い藍色の帯に真っ白な着物を着て、それが彼女の髪を更に鮮やかに映えさせているように見える。…この世界で初めて和風姿を見たわ。


「わしの名前も知らずにここに来たのか…」

「それはわたしが知りたいわよ。勝手に連れてきたのはそっちじゃないの?」

 彼女?彼? 声だけ聞くと、声変わり前の少年の高めの声ね…口調に突っ込むべきか、服装に突っ込むべきか迷うわ。


 ケイとの脳内プチ会議でわたし達は彼女から情報を聞き出そうとしていた。わたしを殺すなら、わざわざ声などかけずに殺せば良かったわけだし、彼女自身から殺気などの威圧する感じもなかったしね。更には周りの風景があまりにも変わり過ぎていて彼女から逃げた所で遭難しかなさそうだわ。

 ため息をつきながら、周りを改めて見渡す。体を引き摺るように洞窟に入ってあまり周りを見る余力はなかったけど、こんな風景では絶対なかったわ。自然に出来たような砂と岩しかない洞窟のはずだったのに、白い大理石みたいな真っ平らな床が広がっているし。何よりも洞窟の出口はどこってぐらいどちらを向いても地平線が見えるなんて…薄暗い洞窟だったはずだったのにどこから光量を取っているのかわからないぐらい明るいし…


「ねぇ、もう一度聞くわ。あなたは誰?」

「…魔力と循環を司る神(アティウス)を聞いたことないかの?」

「聞いたことないわね。ルコトルぐらいなら聞いたことあるわね。」

 ねぇ、ケイ。彼女、自らを神って名乗ってるけどどう思う?

(う〜ん。ボク達が同じ夢を見ているか、彼女が頭が痛い子かのどちらかかな?)

 もしくは、魔法でわたし達が幻覚を見せられているか。誰かに彼女に操られているかってところかしらね?

(まぁ、幻覚を見せる魔法なんてあるかわからないけどね?まだ情報が少な過ぎるね。)

 そうね。もし神なら何でも出来ると思うしね。


 そんな自称神様は「なんで、ここにいるのか?」とか「そんなに長く経っているのか?」とかブツブツ言ってるし…


「ねぇ、神様ならなんでわたしをここに呼んだの?」

「それはお主がわしに祈ったからじゃろ?」

「…名前を知らないのに、祈るだけで神様に会えるの?」

 そんなにお手軽になら、わたしは毎晩神様と会合してることになるわよ?今でも寝る前にお祈りはしてるしね。


「そんなお手軽に会えるわけないじゃろうが…ええぃ、少し待っとれ。わしも起きたばかりでまだ把握しとらんのじゃ」

 そういって神様はまた下を向いてブツブツ言ってるし。5分ぐらい経ったかしら、何やらすっきりした顔でこちらに振り返った。


「なるほどな。この世界は危惧した通り信仰魔法が発達したんじゃな。そして、お主は信仰する神もないのに神への魔力の貢を行ってたわけじゃな」

「えっ⁉︎どういうこと?わたしは魔法なんて全然使えないから才能なんてないわ。神様に魔力の貢なんて出来るわけないじゃない。それに魔力の貢って何よ?」

「お主が魔法の才能がない?才能の有無はともかく、お主の年齢が見かけ通りならそこまで魔力を有している奴など居らんじゃろう。」

「ちょ、ちょっとまって!」

 ケイ。聞いた?もしかしてら魔法の使い方が分かるかも

(落ち着いて、メグミ。これって逆にチャンスだよ。情報とれるし、上手くいけば本当に神様かどうか判断の基準になる。)

 そうね。ケイもフォローよろしくね。

(もちろん。メグミも慌てないようにね。)


「落ち着いたかの?」

「えぇ。ねぇ、アティウス少し聞いていいかしら?」

「わしが答えられることじゃったらな」

「えぇ、それでいいわ。まずさっき言ってた信仰魔法って何?わたし達が使ってる魔法と何が違うの?」

「う〜ん。そうじゃの。お主は魔力と魔素の関係について知っとるか?」

「いいえ。魔素って言葉すら初めて聞いたわ。」

 まぁ、例え知っていても試すために全て知らないって言うけどね。

 そんな、わたし達の魂胆に気づかないのか神様は更に話を続けようとする。むしろ話たくてうずうずしてる?


「そうじゃな、まずは魔素と魔力の関連性についてじゃな。魔素とは魔力の元になる源のようなものじゃ。魔素は大気中に存在しており生物は呼吸もしくは、他の生物を食することを通して魔素を吸収しておるのじゃ。吸い込んだ魔素のほとんどは吸収出来ずにそのまま魔素として排出されるのじゃが、吸収出来た魔素は個々に合わせた魔力に変換されわけじゃな。この魔力は個々の生物の体に貯蓄され何もなければ放出と吸収を繰り返しながら一定量を常に体に蓄えておるのじゃ。魔素の吸収量が多いと魔力回復が早い。魔力の貯蓄量が多いと魔力量が多いとされておるのじゃ。魔法はこの魔力を使って世の中の理に働きをかけることじゃ。ここまでは分かったかの?」

「色々聞きたいけど、とりあえず魔素の吸収量と貯蓄量は生まれつき?」

「素質な部分が多いのは確かじゃが、鍛えることも可能じゃの。特に魔力吸収に関しては分かりにくいから生まれつきと世の中じゃ判断されているようじゃな。」

 ねぇ、ケイ。これはもう変人クラスの研究者か神様並の知識人認定で良くない?多分、ここまで詳しく説明出来る人なんて居ないと思うわ。

(変人って…まぁ、そうだね。ボク達が実際に魔法が使えるようになったら変人じゃなくて神様確定でいいかも。)

 そうね、そこが目標ね。


「本当に理解出来とるのかの?お主みたいな子供に理解出来るとは思わんのじゃが?」

「いいえ、大丈夫よ。アティウス様続けて」

「ふむ…知的なのは助かるのじゃが、年齢に見合わないうえに無信仰じゃと。末路い人かの…ロイの奴まだやっておるみたいじゃな…」

「どうかしたの?何か問題でもあったの?」

 何やらブツブツ言ってるけど、末路い人って何かしら?


「いや、何でもないのじゃ。魔法についてじゃな」

「えぇ、信仰魔法なんて聞いたこともないのだけど。」

「お主らが普段使ってる魔法が古来は信仰魔法と呼ばれてる魔法で本来の魔法は別物じゃ。」

「つっ⁉︎どういうこと?」

「こちらも、ちと長うなるんじゃが。そもそも魔法に詠唱なんぞ要らなんじゃった。己の魔力を感じて、イメージを膨らませることが第一歩じゃ。例えば、火の魔法を使いたいんじゃったら己の魔力を火に変換させどの位置からどの方向に打ち出すかを想像するんじゃ。そのイメージが充分に出来たならそれに必要な魔力を消費して魔力が発動するわけじゃな。」

「ま、待って?少し試していいかしら?」

 わたしはアティウスの返事を待つ前に行動していた。試すのは何度もわたしが失敗していたリヒト。

 まず魔力を感じること。これは何度も詠唱していた中で感じていた感覚…これをソフトボールぐらいの大きさの光を発する光球に想像する。それもママのリヒトを見たことがあるからイメージしやすいわ。

 次が打ち出すイメージね。手のひらから上に浮かびあがる感じで、そのまま浮遊するように…


「本当に出来た…」

 わたしの手のひらの上には想像したままの光球が浮かんでいた。

 ケイ。出来たよ。わたしもちゃんと魔法が使えたよ!

(うん。良かったねメグミ。ねぇ、メグミもしイメージ通りに出来るなら色々な形や大きさも出来るんじゃないかな?)

 えっ⁉︎そうね。やってみるわ。


 まずは大きさをソフトボールからテニスボールぐらいに、それ以上のイメージはさっきと同じで…これも出来た!

 じゃ、次は形を球から円錐形にイメージして…次は…次は。


「…そろそろ続きを話してもええかの?」

「ご、ごめんなさい。あなたのことすっかり忘れていたわ。」

「神を忘れるお主の神経は余程太いんじゃな。まぁ、それだけの光球の魔法を使えるんじゃからお主は余程の魔力の持ち主で間違いないじゃろう。」

 確かに、わたしの周りには形や大きさの違う光球が何個も浮かび上がってるのだけど。いつも寝る前で練習する時は数回で疲れていたのと違って全然疲れがないわ。


「いつもは数回で疲れてたのよ?ここが特別な空間なのかしら?ここを出たらまた使えなくなるのかしら?」

「そんなことはないから心配せんでもええ。」

「そう。ならどうしてこうも簡単に出来るようになったのかしらね?それにイメージだけで良いならもっと世の中に広まるはずじゃない?あんな詠唱なんてしなくてもいいのだし。」


 わたしの疑問に対して、アティウスはため息をつきながら答えてくれた。


「簡単と言っとるがの。それは魔法が出来るようになったから言える言葉じゃ。まずは、己の魔力を感じるのが難しいのじゃ。しかも魔力の感覚は個々で違うもんじゃからよけいじゃな」

「そうなの?それでも出来る人から多少のコツとか教えて貰えるんじゃないの?」

「そうじゃな…例えるんじゃったら馬車の運転じゃな。馬車の手綱の引き方などは教えることも出来るじゃろうが、その馬車の馬の気性までは長く付き合って感じるしかないじゃろ。魔力も同じようなもんじゃ。長い練習の果てに己の魔力の感覚が分かってくるもんじゃ。更に今は信仰魔法が発達しとるもんじゃから余計に難しいじゃろうな…」

「…馬車の運転ね。」

「なんじゃ。お主それだけの理解力があって、馬車の運転もできんのか?」

 そういうアティウスはこちらを見てニヤニヤしてる。なんかムカつく…馬車なんて馴染みなんてないわよ。


「何と無く分かったからいいわ!それより信仰魔法について教えてよ。」

「そんなに大声出さんでも説明してやるわい。信仰魔法はじゃな、簡単に言ってしまえば魔力の変換からイメージまで全て神に委ねるようなものじゃ。」

「神様の丸投げ?じゃ魔法が発動するかは神様の気分次第?」

「気分次第ではないがの。そうじゃな、例えばお主がコップ一杯分ぐらいの魔力を使って光球を作ろうとするんじゃが、イメージが出来んから更にもう2.3杯ぐらいの魔力を神に捧げて神に魔法の発動を助けてもらうのが信仰魔法じゃな。その時に神に捧げた魔力を神への貢と言うんじゃ。」

「発動するのに、魔力2.3倍って燃費悪いし、神様の詐欺じゃないの?」

「はぁ…貢の魔力の量は例えばの話じゃ。神の加護や神の司る力によって変わってくるじゃろう。第一、信仰魔法は魔力があるのに魔法のイメージが苦手な者達が苦肉の策で作ったものじゃ。そこにはそれぞれの神の思惑もあったじゃろうし、手軽さから信仰魔法ばかり発達しとるみたいじゃが。」

「詐欺師の常用文句みたいだけど…じゃ、わたしは何でその信仰魔法が使えないの?」

「信仰魔法は信仰しとる神に魔力を捧げるもんじゃから、お主先ほどルコトルの名前を出しとったが、ルコトルの逸話や神話を知っておるのか?そしてきっとその神を信じておらんじゃろ…」

「そっか。だから信仰魔法と言うのか。じゃ?わたしが神の神話を聞けば使えるってことかしら?」

 あっ、でも見たことないし完全には信じれないかもね。それとも信じた振りでも大丈夫なのかしら?

 でも、いきなり大量に神への貢で魔力取られるのも何かやだな。

(メグミ。アティウスの力借りてみたら?目の前にいるから信じやすいし、これで発動出来るなら神の証明にもなる。)

 つっ⁉︎ケイ。天才じゃないの?


「ねぇ、信仰魔法が本当かどうかあなたの力で試させてよ」

「お主…わしを実験代にするとは。まぁ、良い。詠唱は『我、魔力と循環を司る神(アティウス)に願う。循環し水の恵みよ我が手に。ウォーターボール』じゃ。」

「我、魔力と循環を司る神(アティウス)に願う。循環し水の恵みよ我が手に。ウォーターボール」

 唱えたとわたしの体から魔力が抜けるのが分かる。感覚でしかないけどさっきの光球の魔法より減り過ぎじゃないかしら。

 そう思っていたら、目の前に水の球がいつの間にか出来ていた。大きさはテニスボールぐらいかしら。重力に逆らって水の球が空中に浮かんでて、あっ消えた。わたしはイメージも何もせずにただ詠唱しただけなのに…これが信仰魔法なんだ。

 これはアティウスを神とし認定するしかないわね。


「…本当に神様なのね」

「なんじゃ?まだわしを神と信じておらなんじゃったのか?」

「えぇ。でもこれで信じるしかないわね」

「そうじゃろ。最初から素直に信じてたらええんじゃ。」

 そう言われたら、何かいらっとするのよね。

 アティウスはやっと信じて貰ったので気分を良くしたのか、ニヤニヤしてるし…


「他に聞きたいことはないんか?」

「…何でもいいの?」

「もちろんじゃ。何せ、わしは神じゃからの」

「そう。では、アティウス様はその服の下に下着は付けているのかしら?」

「わしは下着なんぞ、はか…って何を言わせるんじゃ!」

 とりあえず、痴女神確定っと。


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