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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
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大きな背中ともう1人の自分

更新が本当に不定期です。


拙い文章ですが、誤字・脱字の指摘、感想などあればお待ちしておりますm(_ _)m

 〜 ディアス 〜

 ハウンドドックの突進を右に避けながら、すれ違い時に剣を上から振り下ろしてハウンドドックの首を切り飛ばす。それを確認して俺は一息付いた。


 ハウンドドックは体長1mぐらいの体格に真っ黒な毛並みに鋭い爪を持つ犬の魔獣でこの森には多数生息している。ハウンドドック自体はあまり強くなくランクFの魔獣であり、駆け出しの冒険者でも対処が可能だ。ただし、上位種が居たり、繁殖期になると群れを形成する習性があり群れの規模によっては一端の冒険者でも危険を伴うこととなる。


「…ふぅ。もう大丈夫だ」

「ディアスさんの戦いはいつ見ても凄いねぇ」

「本当に朝、無理言って護衛に雇って良かった」

「俺らだけなら安心してマキ拾い出来ないしな」


 そう言いながら、背中合わせに円陣を組みながら剣を構えていた4人の男達も気を緩ませ各々の剣をしまいマキ拾いを再開した。

 彼らはあくまでマキ拾いが目的であり、戦いは門外漢であった。

 例え、Fランクの魔獣であっても互いに背中を合わせて護身するのが精一杯だった。

 それを証明するかのように彼らの持っている剣も、俺の使っている長さ90cm弱ある長剣と違い、護身用によく使われる60cmあるかないかの短いショートソードと呼ばれる剣であった。更によく見ると手入れが不十分なのか刃こぼれが目立ち、お世辞にも俺の剣のようにハウンドドックを切り裂けるとは思えない。


「なぁ、ディアスさん。もし良かったらもっと森の奥までマキ拾いに連れて行ってくれないか?」

「…ん?ここじゃまだ足りないか?」

「今日の持ち帰る分なら十二分に拾えると思うけど、次回のこと考えたら入り口付近のマキは残しておきたいんだ」

「今日はディアスさんが居るから森の奥まで行けるし、まだハウンドドックの繁殖期じゃないしな」

 今居る場所は森から歩いて十分近くは入り込んだ場所だが、普段森の入り口でマキ拾いをする彼らだけなら無理してもここら辺までが限界なのだろう。

 俺を雇ったことで、彼らの中に森への安心感とマキ以外にも資源がないかと欲が生まれたのかもしれない。


「…残念だが、無理だな」

「そんなぁ…」

「護衛代が安いならもう少し色を付けてもいいからさ」

「いや、そんなことより今すぐ森の入り口まで戻るぞ。魔獣の群れの匂いを感じる」

 俺が護衛代を釣り上げようとして、断ったと思われたのは心外だが今はそれをとやかく言う暇はなさそうだ。

 俺1人なら今ここで魔獣の群れと対峙しても問題ないが、彼らを守りながらだと…せめて見晴らしのいい平地じゃないと厳しい。向こうはまだ俺らには気付いてないだろうが無事森の入り口まで戻れるかギリギリか…


「俺が最後を歩くから、来た道を戻れ」

「あぁ、ディアスさん頼む」

 魔獣の群れと聞いてすぐ動いてくれるのは助かるが、やはりマキを背負った状態だと時間がかかるか。



「森を抜けたぞ、助かっ…ひぃ⁉︎」

「ハ、ハウンドドックが5匹も」

「まだ、繁殖期には遠いはずじゃ…」

 間に合わなかったか。いや森を抜けて平地で対峙だ、最悪な事態ではないな。


 平地に出た俺らを追いかけるように森から出てきたハウンドドックの群れを、俺は注意深く観察していた。


 5匹の群れ…恐らく上位種が群れのリーダーだ。ハウンドドックは年数を重ねる毎に少しずつだが体格が大きくなるが5匹にそれほどの違いはない。

 目の前の5匹以外に近くにハウンドドックの匂いもないし、リーダー格はまだ上位種になりたてだろう。

 なら、恐らくは石礫(ストーンバレット)に似た魔法が使えるぐらいか。まだ若い個体だし、石礫(ストーンバレット)も握り拳ぐらいまでで速度もそこまではないだろう


 余談だか魔獣が上位種になって魔法を覚える際は、その魔獣に馴染みの深いものであることが多い。

 ちなみにハウンドドックは狩った獲物を土に埋めて後から食べる習性があり、その習性から上位種の魔法も、土の塊を弾みたいに飛ばす石礫(ストーンバレット)を覚えることが多いとされている。

 尤も年数を経ると複数の魔法を習得する個体や、種別によっては生まれながらに魔法を使える魔獣も居るのだが。

 閑話休題


「森に向って1列で居てくれ。恐らく上位種がいる。土の塊が飛んでくるかもしれないが避けれないなずはないから注意しろ。」

「デ、ディアスさん。俺らも戦うべきか?」

「自衛だけでいい。俺が何とかする。」


 彼らと短いやり取りをしながらも俺はずっと群れを視ていた。

 視線を外すと襲ってくる可能性もあるが俺はリーダー格を探していた。

 きっと群れの中心にいるあいつがリーダーだろう。他の4匹があいつの邪魔にならないようにしている立ち位置から俺はあたりを付けていた。


 グルル…ガウッ

 予想通りリーダー格の唸り声に呼応するように石礫(ストーンバレット)が俺に飛んでくる。

 この後、周りの4匹も襲って掛ってくるだろう。


「我、狼人族の女神(アルテス)に願う。神の加護を我が脚へ。ソニック」


 俺は、乱戦になる前に勝負を決めることにした。石礫(ストーンバレット)を躱しながらソニック…数秒間魔力で脚力を強化する魔法でリーダー格のハウンドドックとの距離をゼロにする。そのまま左上から右下に袈裟懸けに切り裂き、周りに殺気を一気に放つ。

 予想通り若い群れはリーダーがやられたことと殺気を受けたことで簡単に瓦解した。

 2匹は逃げるように森へ。もう1匹は俺に向って、そして最後の1匹はまずいことに村に向って走って行った。


「俺は村に向かったハウンドドックを追う。後は何とかしてくれ」

「ディアスさん、分かった」

「村を頼む」


 俺に向って飛びかかってきたハウンドドックの脚を切り落とし、トドメを刺す時間も惜しく村へ駆け出した。

 まずい、もうこの時間だとマーヤが村長の家に居てもおかしくない時間だ



 〜 フィーリア 〜

「ママはいつまで村長の話を聞いているのかしら?」

 わたしは、村長の家から村の入り口まで散策していた。


 村の外は一面草原が広がっている。

 まだわたしは村の外に出ることは出来ないけど入り口から見るぐらいはいいよね。

 ママから村から森とは逆方向には湖があると聞いたことがあるけど、歩いてどれぐらいなのかしら。

 湖っていうからには、色々な魚が居ると思うのだけどあっちの世界の魚とどれぐらい違うのかな。もし色々な魚が取れるなら燻製にしたり、鰹節もどきみたいなのも作ってみたいわ…あっ、あれも作りたいし…あれも、あれも…


 グルル〜

 わたしの妄想は遠くから聞こえるケモノのうめき声によって打ち消された。

 うめき声のする方…森のほうを見ると黒い犬のようなケモノがわたしに駆けてくるのが見える。


 グルル〜

 わたしはあんなケモノなんて知らない。まだ距離はあるけど、恐らくわたしよりも大きなケモノ。


 グルル〜

 更に距離が縮まる。わたしは知らなかった。生まれて初めて殺気に身を晒されると声が出ないことを。


 グルル〜

 もうケモノとの距離は5m弱しかない。わたしは知った。足が震えて自分が尻餅を付いていることを。恐怖で何も考えられないことを。


 グルル〜

 ケモノが飛びかかってきた。わたしは知った。もう逃げられないことを。目を閉じて自分の運命を受け入れるしかないことを。



 ……いつまで経っても何も起こらないことに気付いて目を開ける。

 目の前には、大きな大きな背中があった。

「…フィア。怪我はないか?」

 ディアスさんの声が上から聞こえる。

 目線を上げるとディアスさんが振り返りながら、わたしに目線を合わせてくれる。


「……パパ⁉︎」

 抱き付いたパパは凄い温かく、わたしの震えを溶かしてくれるようだった。今まで何で苦手意識を持ってたのかが、不思議なぐらいわたしはディアスさんをパパとして受け入れ、パパの胸元に顔を埋めていた。

 パパもそんなわたしを抱きかかえ、頭をずっと撫でてくれている。それが嬉しくてわたしはパパに更に力を入れて抱き付いていた。


 あの後、騒ぎを聞きつけたママがわたしを見つけて青ざめた顔で怪我がないか確認して…無事なのを解ると体が折れるぐらい、わたしは抱き締められた。


 パパはまだ依頼が残っているらしくわたしとママを置いて森へ走って行った。魔獣が村付近まで来たこともあって夜遅くまで見張りをするらしい。

 わたしは晩御飯の後は、ママに早めに寝かされベットでわたしは昼間のことを思い返していた。


 ケモノに睨まれた時は本当に怖かったわ

(メグミもボクも初めての経験だったしね)

 ケイ?久しぶりね。貴方もこっちに来てたの?

(ボクはメグミから生まれたんだよ。恐怖を克服するためならいつでも出てくるさ)


 わたしがケイと出会ったのは、わたしが神白恵時代に初めて吐血した時かしら。わたしは血を吐いた夜から医学書を手当たり次第に読み倒して、少しでも恐怖を和らげる方法は…治療法がないか必死だったわ。

 その中で見つけたのが、虐待を受けた子供が虐待を受けているのは自分ではない別の子だと思い込み、多重人格になる精神医学の症例だった。わたしはこれに目を付け、自分の恐怖を和らげるために別の人格を思い込み…わたしの中に彼が現れた。これで恐怖から逃れれると思ったのだけど、吐血のたびに彼に変わってもらったのではわたしが逆に彼に消されてしまうのでは?と考え、わたしは彼と対話し…彼には恐怖を克服するための相談役になってもらった。

 彼はわたし(メグミ)に対して(ケイ)と名乗った。


(メグミは今回はディアスさんに助けられたけど、そのままでいいのかい?)

 パパが居れば大丈夫よ。きっと守ってくれるわ

(でも、それってメグミはディアスさんが居ないと村から出れない。メグミはそれでもいいのかい?)

 …たしかに、それは少し困るわね。

(なら答えは…)

 えぇ、わたしにも考えがあるわ。

 それより、ケイ。貴方はこれからもわたしの中に居てくれるの?

(もちろん。メグミがボクを消さない限りはいつでも見守っているさ)

 そう…わたしはこっちの世界に1人で来たわけじゃなかったのね。

 これからも改めてケイよろしく。

(こちらこそ)


 わたしは自然ともう1人のわたしに出逢えたことを神に感謝していた。

 さて、明日のために疲れは残さないようにしなきゃ。



「ママ、おはよう」

「フィア。おはよう、昨日はよく眠れたかしら?」

「うん。ママ。 パパ、おはよう」

「あぁ、おはよう」

「あのね、パパ」

「…ん?」

「わたしに剣を教えて!」

魔法設定:詳細


石礫(ストーンバレット)

土の塊から岩の塊を弾丸のように打ち出す魔法。大きさは成人男性の握り拳ほど。

神への信仰が厚い・捧げる魔力が多いほど打ち出す速度があがり、弾の硬度もあがる。


ソニック

肉体強化魔法の1つ。脚力強化による移動速度の向上が主な使い方。使用者の元の筋力によって効果が大きく変わる。肉体が人族より優れてる獣人族が好んで使用する魔法。

神への信仰が厚い・捧げる魔力が多いほど効果時間が伸びる。



魔法設定は今後の話で変更をかけるかもしれません。

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