表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
5/33

大きな背中ともう1人の自分〜前編〜

「我、太陽と風の神(ルコトル)に願う。闇を払いし淡き光を我が手に。リヒト」

 身体から魔力と思われる何かが抜けていく感覚に襲われる。

 手のひらを見ると…そこには何もなかった。


「はぁ〜。今回も出来なかった。」

 わたし…フィーリアは3歳になった。


 初めて魔法の存在を知ってから、わたしは毎日の寝る前の日課にお祈りと魔法の練習を行っている。


 今回も期待する結果は出なかったけど一週間に一度ぐらいのペースで手のひらの先に白い光球を作ることが出来る。


 正直、成功する可能性のほうが限りなく低く、そろそろわたしに魔法の才能はないと諦めるべきなのかもしれない。

 そう頭では解っていても、本当に稀にでも魔法が成功する事実にわたしは今日こそ成功してって思いながら詠唱を唱えてしまう。


「わたしは、太陽と風の神(ルコトル)に祈りを捧げる。闇を払いし淡き光を我が手に。リヒト」


 最初の数ヶ月はママの唱えた詠唱と全く同じに唱えていたけど、失敗続きで色々と詠唱をわたしなりに変えて唱えたりみるのだけど…今回も手のひらの先には、やっぱり何もなかった。

 魔力が減った感覚はあるから、何かしらの法則性があると思うのだけど成功例が少な過ぎてわからなかった。


「もう、本当に何が必要なのかしら?ママみたいに手のひらの上に光球を出したいのに…もしかして、リヒトのアクセントの位置とか?あれ?何で出来てるの?」

 詠唱もしたつもりもないのに、わたしの手のひらの上に光球がわたしをあざ笑うように浮かんでいた。


「もう。本当にわからない。ママはもう少し大きくなってからってもう魔法見せてくれないし…」

 …仕方ないわ。今日は成功もしたしもう疲れたから寝ようっと。

 神様、明日も魔法が成功しますように…



 翌日


「ママ、おはよう」

「おはよう。フィア。パパにおはようは?」

「は〜い。パパ。おはようございます。」

「あぁ、おはよう」

 未だに、わたしがディーさんに慣れることは出来てなかった。嫌いではないけど、どう接したらいいか分からず、距離を置いている感じ。

 そのためか、挨拶一つにとってもママに促されてから言うクセが付いちゃった。


 ママもディーさんもわたしの態度には気付いているみたいだけど、人見知りみたいなものだろっと暖かく見守ってくれている。ディーさんには悪いけど、わたしはそれに完全に甘えていた。


「では、行ってくる。」

「ディー。あなたなら心配ないと思うけど気をつけてね。この年で未亡人なんて私は嫌よ。」

「…必ず帰るから心配するな」

「そう?あなたの尻尾をさわれ「…いってくる」ないと思うだけで、あっ、、行ってらっしゃい」

 ディーさん…呆れ顔で出て行っちゃった。


 ディーさんは元冒険者という経験を活かして、定期的に村長から依頼を受けて村周りの見張りをしているらしい。

 わたしが生まれた村は人口数十人の小さな村…もしらしたら集落と呼ぶべきかもしれないぐらい小さな規模だけどね。

 村から歩いて1時間ぐらいの所に深い森があって、そこからたまに魔獣が出てきて村を襲うことがあるらしい。


 そんな危険な森があるなら、もっと遠くに村を作ればって思ったのだけど森からは様々な資源を取ることが出来るため、森からあまり遠くに村を作ることを昔の人は躊躇ったらしい。

 そのため、ディーさんみたいに元冒険者みたいな人は村に重宝されている。さらに、ディーさんは狼人族として他の人よりも耳と鼻が効くので森から出た魔獣にいち早く気付くことが出来るらしくてよくディーさんに依頼が来て、それがわたしたちの生活を支えてくれている。


 ちなみに、この世界での魔獣と獣の違いは人を襲うかどうかで決まる。魔獣にはランクがあり、魔獣の強さをよって決まっている。同じ種類でも年数の重ねた個体によっては魔法のようなものを使う魔獣も居て、区別するために上位種として呼ばれている。尤も魔獣は詠唱なしで魔法を使っているが、魔獣はあくまで討伐対象として見られているため積極的に研究する人も居ず、魔獣がどのように魔法を習得し使用しているかは未だに解っていない。

 閑話休題


「フィーリア。今日もママのお手伝いしてくれる?」

「うん。フィア、ママのお手伝いする〜」


 まだディーさんが依頼を受けた日のみだけど、わたしはママのお手伝いとして台所に入ることが出来るようになった。


「フィアはこっち生地をこねてね」

「は〜い」

 ママはこねてたパンの生地を4分の1をわたしに渡してくれた。

 このパンの生地作りが今日のママのお手伝い。

 わたしは生地に力を入れながら、こっちの世界で作れそうなレシピを考えていた。


「フィア。お手伝いありがとうね。きっとパパも喜んでくれるわ。あとはママがやるからフィアは向こうの部屋で遊んでらっしゃい」

「は〜い」


 正直まだまだ台所に居たいけどワガママ言って台所立入禁止になっちゃうと大変だしね。


 …台所を見てて、作れそうなレシピは一杯思いついたのだけど、どうやったらママに食べ物で遊ばないのって怒られずに作れるかしら。こっちの世界って調味料が少ないのよね。

 パンが主食だし、チーズやバター以外にもジャムやケチャップは作りたいわ。でも、こっちの世界に本当にないのかしら?ママが作らないだけかしら?でも、どっちも材料を煮詰めなきゃだめだし失敗しちゃったじゃすまないよね…そういえば、料理方法も煮ると焼くがほとんどだし、揚げパンみたいな揚げ料理法はあるのかしら?………


「フィア。パン焼けたから、パパに届けに行くけどフィアはお留守番する?」

「や〜。フィアも外に行く!」

「フィアはお出掛け好きね」

「うん!」

 料理のことを考えていたら、もうお昼近いまでなったみたい。台所から焼き立てのパンの良い匂いがママの声と一緒に届いてきた。



 パンのお届け先の村長の家に、ディーさんはまだ戻ってきてなかった。

 村長の家は村の出入り口から歩いてすぐの所にあり、村の見張りの依頼を受けた際は村長の善意に甘え休憩場所として使わせてもらっている人がほとんどだった。

 ディーさんもこの時間には村長の家で1度休んでいるはずなのに…何かあったのかしら?

 そんな、わたしとママの心配を和らげるように、腰はまだ曲がってないけど見た目は60歳は越えていて、元からなのか少し薄くなった白髪の初老の村長からディーさんの依頼が今日は村の見張りだけじゃなく、森へマキ拾いのための護衛も依頼したため、まだ戻ってきてないみたい。


「…フィア。きっと村長さんのなが〜〜い話が始まりそうだから家の周りで遊んでていいわよ。」

「は〜い。ママ大好き」

「わたしも好きよ」

 ママが村長さんに聞こえないようにわたしの耳元で囁いてくれた。


 早く出て行かないと村長さんに捕まると思って、わたしはすぐに村長さんの家から飛び出していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ