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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
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聖域とリベレ

〜 フィーリア 〜

 始めて両親の前で喋ってから半年が過ぎた。

 あの夜から日々、ママが色々な言葉を説明してくれたので、わたしはこの世界の言語を完全に理解したと思っていた。


 もちろん、身体のほうも暇さえあれば運動したためか…走れはしないけどよちよち歩き程度なら出来るようになっていた。

 始めて2人に披露した時は、2人とも涙を流しながら喜んでくれた。

 …次の日は昼まで起きてこなかったけど、わたしの成長を神様にお祈りでもしてたのかしら?

 あっちの世界だと、赤ちゃんが歩くのはもう数年かかるはずだけど、2人が成長が早いのは神様のおかげって思ってくれたらいいな。


 拙いけど歩くことが出来たことでわたしの世界は更に広がった。

 家の作りや日用品を見ても、木や鉄の製品が多く、ガスや電気・機械がないことからあっちより文明は進んでないと思う。

 恐らく、中世ヨーロッパぐらいかしら?


 そんなわたしの今の目標は女性の聖域…台所に入ること。

 こっそりと入ろうとしても刃物があるからダメってママに追い出されてるけど今日こそ入るわ…赤ちゃんの特権を使ってでも!


「フィーリア。ママはご飯作ってくるから少し待っててね」

「や〜、ま〜まといる〜」

「まだお腹空いてないの?」

「すいた〜」

「じゃ、すぐ戻ってくるからね。待てる?」

「や〜、ままといっしょ」

 もう、どうしようかしら?って呟きながらママが考えてる。もう一歩かしら?


「ま〜まはフィアのこときらい?」

「まさか〜ママはフィアのこと大好きよ」

 わたしを抱き上げながらほっぺにキスしてくれるママ…ここで決めなきゃ!


「フィア、あっちでもしずかにしてるから、ま〜まといっしょがいい」

「…もぅ、仕方ないわね。本当に静かにしてるのよ」

「あ〜い」

 …勝った。


 ママに抱きかかえられながら、入った始めての台所は、小さなカマドと水瓶、木の簡素なテーブルには野菜とそれを切るための包丁があるだけだった。

 ただ、わたしにとっては充分過ぎるほど魅力的な聖域だった。


「フィーリア。ここで大人しくしてるのよ」

 ママがそういってるような気がしたけどわたしの耳には入ってなかった。

 …ここで料理を作るためには…調味料は塩と酢と砂糖、あの棚のお酒は調理用?ディーさんのお酒かしら?

 目まぐるしく、視線を動かし作れそうな料理のレシピを思い浮かべる。

 あぁ、今すぐ料理がしたい。きっとママもディーさんも美味しいって笑顔で言ってくれるはず…


魔力解放(リベレ)

 わたしの料理への妄想はママの聞きなれない単語で霧散した。

 ママが手をかざした先には火の付いたカマドが…あれ?さっきまで消えてなかったかしら?


「ま〜ま。さっきのなに〜?」

 …こういうとき、赤ちゃんって便利だと思う。


「あら、そっか。フィアは見るの始めてよね。これは火を付ける簡単な魔導具よ。」

 …もっと詳しく!


「まど〜ぐ?ま〜ま。もっと教えて」

「フィアは本当に興味心いっぱいね。じゃ、お湯が沸くまでの間だけね」

 ママはカマドに鍋をかけながら、わたしに笑顔を向けてくれた。


「フィアには少し難しいかもしれないわよ。魔導具はね。法則に従った魔法陣に自分の魔力を流すか魔石を使うことで火を付けたり、風を起こしたり出来るものよ。ほとんどの魔導具は魔石を使うことで魔力の消費を抑えてくれてるのよ。料理のたびに火の魔法を使ってたら、魔法の苦手な人は倒れちゃうから…あら、お湯が沸いたから、ここまでね。わかった?」

「ま〜ま、すご〜い」

 …ママ。赤ちゃんでそれ理解出来たら、わたしなら完全に引くと思う。


 その後もママに質問攻めしたことで解ったことが、こっちの世界には魔法があるらしい。

 魔法は誰もが生まれながらに持っている魔力を詠唱を通じて、神々に捧げることで様々なことを起こせるらしい

 その人が信仰してる神の種類や、信仰度によって得意な魔法や消費する魔力が変わってくると言われている。

 ちなみに魔力は人によって持ってる量が違うらしく、使い過ぎたら疲労が溜まって倒れちゃう。ほっておいたら勝手に回復するらしいが、そのメカニズムはまだ解ってないらしい。


 魔導具は魔法陣の刻まれた道具の総称で魔石に魔力の肩代りをしてもらうことで、魔力解放(リベレ)と唱えるだけで長い詠唱も魔力も使わず刻まれた魔法が使える。

 種類も日用品で使われる物から、護身用までそれこそ星の数ほどあるらしい。


 魔導具と魔法…使ってみたい。

 未知の物を見た途端、わたしは料理のことなんて忘れていた。


 食事後のお茶を飲んでるママの膝を揺らしながら…おねだり開始!


「ま〜ま。フィアもまど〜ぐ。まほ〜使ってみたい〜」

「フィアにはまだ危ないからダメよ。ね、もう少し大きくなったら教えてあげるから我慢。」

「え〜、じゃ、ま〜まのまほ〜みせて〜」

「…う〜ん。…見せるだけなら危なくないよね。詠唱を一度で覚えられるとは思わないし…いいわよ。一度だけだからね。あと、パパには内緒よ」

「あ〜い」


 ママはイタズラをした子どものような顔をわたしに見せた後、息を吸い手を前にかざして集中し始めた。


「我、太陽と風の神(ルコトル)に願う。闇を払いし淡き光を我が手に。リヒト」


 詠唱を終わったママの手の先には、ピンポン球ぐらいの白く明るい光球が浮かんでいた。

 わたしは目の前の光景から目を逸らすことが出来ず、光球が消えた後もしばらく何もない空間を眺めていた。


「フィーリア。ママの魔法は凄かったかしらね?」

「………ママ。凄い。もう一度見せて!」

 …あっ、あまりにも驚愕して言葉使いを子供ぽくするの忘れてた⁉︎


 そんなわたしの心配は褒められて嬉しそうなママは気付いた様子もなかった。


「ダメよ。そろそろお昼寝の時間よ。また今度ね」

 …そう言われたら、仕方ないわ。後でこっそりやろうっと


 ベットに入ってママが居なくなったのを確認してわたしは詠唱をすぐ唱えていた。


「我、太陽と風の神(ルコトル)に願う。闇を払いし淡き光を我が手に。リヒト」


 詠唱を唱えながら、身体から何かが抜けていくような感覚…これが魔力を消費することかしら?

 魔力の消費を感じながら、わたしは魔法の成功を予感して手のひらを見ると…予想していた光球はなかった。


 …なんで?詠唱も間違ってないはず。もう一回!


 2回目も3回目も身体から何かが抜けていく感覚はあるのに光球が出ることはなく、押し寄せる疲労感に勝てず4回目の試みは出来なかった。

フィーリアの関心事


未知≧料理>運動ってな感じです

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