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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
3/33

呼び名

〜 神白 恵 〜

 あれから数週間が過ぎた。


 わたしはこの現実を受け入れ始めていた。

 むしろあっちの世界と違って迫り来る死への恐怖がないことに気付いたことが拍車をかけたのかも。


 いつしか寝る前のお祈りがあっちに戻りたいから明日も木目の天井が見れますようになったのは自分でも現金だと思う。

 もし、この世に本当に神様が居たらわたしのことを呆れて見てるかも…


 そんなわたしはまず言葉を覚えることに躍起になった。

 幸いいつもわたしを優しく抱き上げてくれるコバルトブルーの瞳の女性が、世話をしながらわたしに色々と喋りかけてくれたので少しずつだけど言葉を覚えていった。

 彼女が言った言葉を人に見つからないように発声練習を繰り返す日々。

 始めたばかりは「アー」とか「ウー」しか声にならなかったけど今じゃしっかりと発声出来るようになった…単語の意味は分からないのがまだ多いけどね…


 そんな彼女…マーヤさんがわたしのママだと思う…むしろママであって欲しい。

 マーヤさんは見た目は22.3歳、背丈は160cmぐらいで肩まで伸びた銀色の髪が時折光を反射してとても綺麗に見える。

 胸も大きくはないけど、しっかりと主張をしててスレンダーな体型がとても素敵で頼れるお姉さんのような雰囲気をまとっている。

 もしマーヤさんの子供だったらきっと美人になれると思うと今から鏡を見るのが楽しみのような…怖いような…


 いつもわたしやマーヤさんを少し離れた場所から見守るのがディーさん…藍色の短髪にグレーの瞳、そして狼のような耳と尻尾が特徴の男の人?

 年はマーヤさんより少し若い感じで背は高く180cmは超えてると思う。

 …正直わたしは彼が苦手。

 始めて彼を見た際に悲鳴をあげちゃったことに対する恥ずかしさと男の人と接する機会がなかったことも合間ってついつい距離を作っちゃう。


 そもそもわたしは今、生後何ヶ月なのかしら?

 離乳食も始まっているし、クビも座ってきてると思う…

 あっちだと生後4.5ヶ月から離乳食を始めるはずだし…2人の頭文字ぐらいなら話しても大丈夫…よね?



 夜、マーヤさんに撫でられながら…わたしは決心してた。

「フィーリアは本当にいい子よね」

「……ま〜、ま〜」

「えっ⁉︎

 フィ、フィーリア‼︎ もう一度、もう一度言って⁉︎」

 わたしを抱き上げて目線を合わせて…ちょっとマーヤさん目元が怖いよ…

「ま〜、ま〜」

「キャー‼︎ そうよ‼︎フィーリア、私がママよ!」


 …ちょ、ちょっと…く、くるしい。

 マーヤさんの抱擁…むしろ鯖折り?から何とか逃れたらディーさんと目があった。


「…でぃ〜」

 あれ?目を閉じちゃったけど…もしかして名前違ったのかしら?

「……でぃ〜?」

 ディーさん目は閉じたままだけど…その代わりしっぽがはち切れるぐらい振ってる。


「フィーリア。もう一度、もう一度ママって言って!」

 …マーヤさんのテンションが怖い。

 結局、わたしが寝るまでマーヤさんのテンションが下がらなかった。

 ただ、わたし…フィーリアのママがマーヤさんであることに神様に感謝した。




〜 ディアス 〜

「ディー。あなた、今日はもう飲み過ぎよ」

 そう言いながらも、マーヤは俺の空になったコップに酒をついでくれる。

 今日はフィーリアの声を思い出すだけでいくらでも呑めそうだ。


「…たまにはいいだろ。こんな良い日に飲まないでいつ飲むんだ?」

「あら?そんなことを言って。数週間前に絶望な顔してヤケ酒してたのは誰かしら?」

「…グッ……うるさぃ」

 数週間前、我が子に顔を見ただけで泣かれた時は本当に辛かった…それこそ狼人族の女神(アルテス)を呪いそうだった。


「ねぇ〜ディ〜ア〜ス〜」

「ん?」

「あの子、何で私はママであなたはディーなのかしらね?」

 マーヤはイタズラを企んだ小悪魔みたいな笑顔で俺の後ろから肩に腕を回して…こういう時のマーヤはロクなことを言ったためしがないな。


「案外、あなたをパパじゃなくて一人の男として見てるのかもね?」

「…ばかか?フィーリアはまだ生後半年も経ってないんだぞ?」

「そうかしら?あなたみたいにステキな尻尾を持ってる人はそう居ないわよ」

「…お前とあの子を一緒にするな」

 まったく…俺の尻尾の毛並みに惚れて押しかけ女房になる女がそうそう居てたまるか…


「気付いてないの?あの子あなたの名前を呼びながらずっと尻尾を見つめていたのよ」

「…気のせいだろ」

「どうかしらね〜なにせ私の娘だし〜」

「……」

 …ヤバイ…否定が出来ん。


「もう。そんな難しい顔しないで。ねぇ。ディアス。」

 マーヤは俺の心配をまったく気にせず、更に甘えた声で囁いてくる…誰の所為だと思ってるんだ。


「ディアス。あの子に弟か妹が必要じゃない?そうなると年は近いほうがいいよね」

「いきなり、な…んっ「もう…わかってるくせに…」」

 俺の口をキスで塞いだマーヤは、唇を離すと魔性の笑みを浮かべていた。


「もぅ、身体は正直なんだから。しっぽが揺れてるわよ」

 そう言って、舌を絡めるキスをしてきたマーヤに俺の理性は完全に吹き飛んでいた。



 次の日。

 フィーリアに泣き声に飛び起きた時は昼過ぎだった…

尻尾フェチのマーヤとそれに振り回されるディアス


フィーリアの兄弟が出てくるかどうかは2人の頑張り次第です。

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