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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
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信頼の値段 〜後編〜

 わたし達の商談に口を挟んだ人はがっしりした体型に立派な白髭を生やしたドワーフ族だった。

 どうやらガネリが言うにはこの人が商人ギルドのマスターみたい。

 わたしとガネリの商談は思った以上に注目を集めて誰かがゴードンさんに連絡を入れたみたい。

 ちょうど良いわ。ゴードンさんならギルドマスターだし保証人として最適だわ。


 商人の契約は商人ギルドを仲介人にして自分の信仰する神と自分の信頼をかけて商談の約束をすること。

 この契約はギルドが間に挟んでいるので、もし支払いがその場で出来なかった場合はギルドがお金を立て替えてくれる。そしてギルドからの取り立ては噂では想像を絶する酷い取り立てみたいで絶対に回収出来るらしい。


 そんな鬼のような契約でわたしとガネリが交わした契約は、

 ・レイの借金を払い終わるまでアルフとレイは毎日癒草を合わせて40束ガネリに必ず届けること。

 ・ガネリは癒草10束銅貨1枚鉄貨50枚で買取ること。

 ・この契約が交わされて明日までの間にアルフとレイはそれぞれ1回だけ自分達が狩った素材をガネリに相場価格の50倍で売ることができる。

 相場価格は冒険者ギルドの鑑定士の鑑定値とガネリ以外の商人の買取値の間の値段にする。

 ・ガネリはこの取引に対して他の何よりも優先しなければならない。


「ふん、せいぜい街の外には気を付けるんだな。

 オレは用事があるからこれで失礼する」

「アルフ、俺たちも早く邪魔が入らないうちに狩に行かなきゃ!」

「待って下さい。ガネリさん。まだ用事は終わってないわ。

 レイさん、もう慌てなくても大丈夫よ」


 時間がなくて早く狩に行きたいレイさんを宥めて、ガネリを呼び止める。

 ガネリはもう用はないだろうっと睨んできたけど気にしないわ。


「ねぇ、レイさんの50倍の買取権利使っていいかしら?

 まずはレイさんの借金を無くしたいし」

「借金がなくなるならいいけど、癒草とサンドラビットの毛皮ぐらいしか売り物俺は持ってないぞ」

「大丈夫よ。

 さてガネリさん。早速レイさんの権利を使わせて貰うわ。

 何の用事があるか知らないけどまずはこの取引が優先よね」

「なんだ、あれだけ言ってたが。結局俺は毛皮を買い取ればいいのか?」

「いえ、ゴードンさん。これをお願いします」


 わたしはガネリの言葉を無視して3と書かれた預かり札をゴードンさんに渡した。

 すぐにゴードンさんはわたしが預けていた布に包まれた荷物を持ってきてくれたわ。

 その布を解くと、ゴードンさんとダミアンさんからはほぅとのため息を付くのとガネリの慌て顏が現れた。

 それを見ながら、わたしは余裕ありげにガネリに笑いかけた。


「これがレイさんの権利を使って売りたい物の夜光草です」

「アルフ、これって値段分からないって言ってたけど、大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。夜光草は葉の開き具合で値段が変わるからあの時はわからないと答えたけど、レイさんの採取の腕が良かったから良い値で売れるはずよ。

 ダミアンさん、冒険者ギルドはいくらの値段を付けてくれる?」

「あ、あぁ、そうだな。

 これだけしっかり葉が開いてるなら銅貨45枚で買取るぞ」

「では、ゴードンさん。商人として聞きます。いくらで買い取ってくれますか?」

「そうじゃの…銅貨55枚でどうじゃ?」

「そう、ならガネリさん。銅貨50枚の50倍で銀貨25枚の支払いですね」

「な、なっ、お前らがそんな高額なもの採取出来るわけないだろ!そうだ、きっと、どこかで盗んできたんだろ!」

「そんなことない!

 俺とアルフが癒草を採取した時に間違いなく採ってきたものだ」

「ふん。口では何とでも言える。

 自分達で採ってきたと言うなら証拠を見せろ!

 それにアルフが持ってた物を貰うだけでレイ自身は何もしてないくせに文句だけは1人前か」

「そ、それは…」

「証拠ならあるわ。それにレイさんは役に立ってたわ」

「アルフ、本当か?」

「えぇ、レイさんが持っている癒草を全部テーブルに出して」

「あぁ」


 そう言いながら、わたしも荷物から今日採ってきた癒草をテーブルに出してダミアンさんに鑑定をして貰った。

 その後、改めて夜光草の切り口をダミアンさんに見てもらった。


「ダミアンさんなら切り口から癒草と夜光草を採取したのが同一人物って分かるでしょ?」

「そうだな、癒草は2人で採取したみたいだな。

 こっちの採取の腕の良いほうが夜光草を採取したんだろ」

「そうよ。腕が良いのはレイさんの採取した物ね。

 腕が良いレイさんが居るからその素材が手に入ったわ。

 それにガネリさん。わたしとレイさんは昨日から同じパーティーに入っているわ。

 一緒に狩った物をどちらが持っていても共有財産のはずでしょ

 ダミアンさん、そうですよね?」

「あぁ、2人共切り口の同じ癒草を持っているし冒険者ギルドに問い合わせなくてもパーティーなのは間違いないだろう」


 昨日冒険者ギルドで採取用の大袋を借りた際に念のためにレイさんとパーティー登録をしておいて良かったわ。

 反論されたガネリはせめてもの抵抗に今は持ち合わせがないからっと言ってたので、それならとゴードンさんに頼もうとしたら慌てて銀貨25枚レイさんに支払った。

 レイさんはその場でガネリに借金の銀貨3枚と魔祓草の代金の銀貨2枚を払い、御礼とパーティーだからと言ってわたしに半分の銀貨12枚と銅貨50枚を渡してきたわ。


「レイさん、本当に貰っていいの?

 わたしとしてはお金よりも台所をずっと借りたいのだけど」

「アルフ、家の台所なんていくらでも使わせてやる。それだけじゃ俺の気が済まないんだ。アルフが居なかったら俺はずっと騙されるだけだった。それにパーティーなら共有財産なんだろ?」

「なら、わたしがガネリさんに買い取ってもらう物も半分分けなきゃね」

「いや、俺はもうこれで充分だ。

 アルフが明日までに何を狩れるか分からないけど全てアルフが貰ってくれ!

 もちろん、狩に行くなら俺も手伝うぞ」

「レイさんはいい人過ぎるね。

 じゃ、甘えてわたしの分は全部わたしが貰うね」


 これで台所も確保出来たわ。

 後は食材を大量に買いたいし、ガネリには遠慮しないであれを買って貰おうっと。

 それにガネリならお金に余裕があれば新しいレイさんみたいな犠牲者をまた出しそうだし、反省する心もなさそうだから自業自得よね。


「ガネリさん。次はわたしの物を買い取ってね」

「な、なんだ。まだ夜光草持っているのか?」

「いえ、違うものよ」


 そう言って、わたしはゴードンさんに2の預かり札を渡して荷物の入った採取用の大袋を持ってきて貰った。その大袋からカナリマの毛皮を出したらガネリは青を通り越して真っ白な顔色になったわ。


「アルフ、これはもしかしてカナリマの毛皮か?」

「えぇ、ダミアンさん。鑑定をお願いします」

「あぁ、剥ぎ取りは問題なさそうだな。しかし、カナリマはこげ茶の毛皮のはずなんだが…これg」

「そ、そうだ!この毛皮がカナリマのはずがない!得体の知れない毛皮など買取は出来ないぞ!」


 ダミアンさんが何かを言いかけるのを遮るように買い取れないと叫ぶガネリ。

 先ほどから叫ぶたびに墓穴を掘っているのだけど気がつかないのかしら


「ゴードンさん。先ほどの契約で1つの素材としてますが、例えばサンドラビットの毛皮と肉を売る場合は2つの素材になりますか?」

「どっちでも良いわい。毛皮と肉で分ければ2つの素材。サンドラビットとして売れば1つの素材じゃな」

「では、ガネリさんにはカナリマの買取をお願いするとして、追加でこれも持ってきて下さい」


 最後の1と書かれた預かり札をわたしはゴードンさんに渡して、持ってきて貰ったカナリマの首をテーブルに乗せた。

 首周りの毛の色が先程わたしが出した毛皮がカナリマの物であることをガネリに認めさせるのには充分すぎた。


「聞いたところ、カナリマの首を部屋に飾る領主や貴族がいるみたいですし、これだけの角なら調合の素材として使えると思うわ。

 ダミアンさん、カナリマの鑑定額はいくらですか?」

「そうだな。普通のカナリマの素材でも銀貨5枚はするな。

 それが滅多に取れない淡白色の毛皮なら銀貨10枚を冒険者ギルドは値をつけよう」


 ダミアンさんが言うには、獣の中にはたまに淡白色と呼ばれ毛皮が白もしくは色が薄くなる亜種が生まれることがあるみたい。

 淡白色は他の個体と比べると力が弱く自然淘汰されやすく中々市場に出てこないらしい。


「ゴードンさんはいくら付けてくれますか?」

「そうじゃな…正直値を付けるのが難しいわい」

「では、こういうのはどうかしら?

 周りの商人の皆さん、話は聞いていたと思います。これにいくらの値でなら買い取ってくれますか?」

「ちょっと待て!何をしてるんだ!」


 ガネリがわたしの提案に抗議の声をあげるけどもう遅いわ。

 周りの商人からは面白がって銀貨12枚、13枚とオークションのように値段がつり上がっていく。

 最終的には銀貨20枚の値段が着いて、それ以上は上がりそうにないわ。


「さて、ガネリさん。他の商人さんからは銀貨20枚だそうですね。

 ダミアンさんの評価と間を取って銀貨15枚の50倍で金貨7枚と銀貨50枚で買取になりますね」

「そ、そんな金あるわけないだろう」

「心配しなくても契約があるから商人ギルドが立て替えてくれるわ」

「待ってくれ!アルフ、オレが本当に悪かった。最初、君が言っていた銀貨50枚払うから許してくれ!」

「ガネリさん。もう遅いわ。

 商人の契約は途中で破棄出来るほど生半可な物じゃないのはガネリさん自身がご存知でしょう」

「それは…それなら銀貨50枚を払う契約を新たに結んでもいい!

 その代わり、今回の買取品を癒草にしてくれないか?」

「それをするとガネリさん。

 Gランクの冒険者に商談で慈悲を願った商売下手な商人として結局信頼は無くなるわ。

 素直にカナリマの毛皮を買取しかあなたには道は残ってないわ」


 そんなと呟きながら項垂れるガネリ。

 まぁ、カナリマの毛皮を買ったところでわたしみたいな駆け出し冒険者に良いようにやり込まれた商人として見られて、商人としての信頼は底値までいくと思うけどね。

 わたしはガネリがそこに気がつかないうちにゴードンさんに頼んで代金を立て替えて貰ったわ。

 額が額だけに銀貨5枚だけを残してダミアンさんに頼んでわたしのギルドカードの預かり金に入れて貰ったわ。

 せっかくだし、これも処分しようかしら。


「レイさん、そういえばもうガネリさんに癒草は売らなくていいと思うけどその癒草どうするの?」

「そういやそうか。どうするかな…」

「もしよかったらわたしに売ってくれないかしら?

 代金はお古だけどこれでどうかしら?」


 わたしがレイさんに提示したのは昨日購入した調合用の2冊の本だった。

 もう中身は覚えたし、わたしには必要ないしね。

 調合士に成りたいレイさんは二つ返事でわたしに癒草を売ってくれたわ。

 やっぱり、商売はwin-winじゃないとね。

読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

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