表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
25/33

大胆な右に左の繊細さ

  シャールさんへ

 突然の手紙を失礼します。

 マーヤの娘のフィーリアです。


 わたしは今、理由があって別の街に居ます。

 そこで知り合った人が狂血病になりました。

 苦労もせずに調合の配合を聞くのは一流の調合士のシャールさんを侮辱する行為かもしれませんが…

 ママが困ったことがあったらシャールに相談してねと言ってくれたことがあり、ママの信頼を置けるシャールさんに手紙を送りました。

 もし、教えて頂けるなら手紙を運んできたこの子に配合表を括り付けて下さい。


 追伸

 家に帰った折にはママと一緒にシャールさんの所にご挨拶にいこうかと思います。


 これで良しっと

(メグミ、この内容は…さすがにシャールさんが可哀想だよ)

 〈あの、ボクもあまり運びたくないのだけど…〉

 いいから、ミイちゃんのためでしょ!

 わたしだってこの本がもう少し役に立つならこんな手紙書かなかったわ。


 そう悪態をつきながらわたしは側に置いてある本に目を向けた。


『Gランクでも分かる調合方法・簡単調合素材表』

『Dランクまでで採取可能な調合素材表』


 昨日レイさんの話と以前シャールさんが話してくれた調合のポイントについて違和感を感じてすぐギルドに買いに行ったものだ。

 Gランクのは鉄貨5枚、Dランクのは銅貨30枚かかったけど…まぁ、買う価値があったかは微妙だったわ。


 参考程度に『Gランクでも分かる調合方法・簡単調合素材表』の1ページ目には…

 さぁ、材料を揃えて唱えてみよう

「我、神々の友調合士の英雄(アヌス)に願う」

 これで君も調合士だ!

 と大きく書かれているだけだし。


 後は2ページだけで回復薬と毒消しの本当に素材のみ書かれているだけで配合に関しては何も書いてないのは…ギルドが人手不足って育成方法にも問題あるのじゃないかしら?


 ちなみに本の後ろには小さく「調合は微力な魔力を使います。用法・用量を守って正しく使って下さい」って…ほんと、Dランクまでの本に魔吸薬に必要な素材が載ってなかったら本を破いていたところだわ。


「リーナ、それじゃ少しラ・ポーレ借りるね」

「うん!ラ・ポーレも頑張ってね」

「きっとラ・ポーレなら今日中に帰ってこれるわ」

「アルフにぃ、本当?」

「えぇ、リーナのラ・ポーレだもの」


 〈主、普通のウィンドバードは1日じゃ無理だよ〉

 ハウロなら余裕でしょ?

 〈無理じゃないけど、余分に魔力貰いたいな。〉

 今日中に帰るのに必要ならいいわよ。

 〈魔力され貰えるなら風の眷属の僕なら昼前までには戻れるよ。

 リーナからあまり目を離したくないし行ってくるね〉

 よろしくね。


 ハウロがシャールさんの所に飛んで行くのを見送るとわたしはリーナを連れてレイさんの家に向かった。

 当初、レイさんとは東口で集合予定だったのだけどリーナがボルシチもどきをどうしても食べたいと駄々をこねたためにレイさん家が集合場所になった。

 その代わりミイちゃんがリーナと一緒に居てくれるのでハウロをシャールさんの元に出せたことを考えたら結果的には良かったのかしら?



「レイさん、ごめんなさい。忘れ物しちゃった」

「はぁ?せめて街の居るうちに気付けよ…」

「すぐ取ってくるから先に行ってて」

「まったく、昨日の場所で待ってるから早く来いよ」


 リーナとミイちゃんに見送られたわたし達は東口を出て10分ぐらい歩き出した時にわたしはレイさんにそう切り出した。

 悪態をつきながら川辺に向かうレイさんが遠くに離れて行くのを確認しながら、わたしはケイに頼んでソナーの魔法でサンドラビットを探した。

 時間をかけれないのでサンドラビットを見つけ次第、魔力の矢をイメージして狩っていく。

 昨日ケイの弓を見て居たのでイメージがし易くて助かったわ。

 何匹か狩った所で1匹を残してそれ以外をアティウスの空間に入れてレイさんを追いかける。


 狩りに時間かけ過ぎたのかしら、レイさんには川辺に着くまで追い付けなかったわ。

 レイさんは川辺で既に癒草を採取していて、わたしに気付いて手を挙げてくれた。


「遅かったな。何かあったのかと思ったぞ」

「ごめん。行き掛けにコレが居て狩ってたから」

「おぉ、羨ましいな」

「帰ったらコレでまた何か作る?」

「いいのか?」

「その代わり台所使わせてね」

「肉が当たるならそれぐらいいくらでもいいぞ」


 やったわ。

 今日も台所使用権ゲットだわ。

 …あれ?もしかしてガネリを懲らしめなくてもこうすれば台所使えたのかしら?


 そんなことを思いながらわたしはレイさんに見せたサンドラビットの毛皮を剥ぎ取り始めた。

 レイさんは余程毛皮を剥ぎ取るのに自信がないのか剥ぎ取りし始めたわたしの手元を羨ましげに見ながらも癒草を採取し続けていたわ。


 ケイ、そろそろお願いね

(上手くいくかは分からないよ)

 えぇ、上手くいけばラッキー程度だわ。


 剥ぎ取りをしながらケイに魔力を魔素に戻し濃霧のように地面を覆うように魔法をお願いした。

 剥ぎ取りが終わり癒草を数束取った所でわたしの試みは成功したみたいだわ。


「レイさん。この草、ほんの少しだけど輝いているみたいに見えるのだけど何かしら?」

「ん?どれだ?

 なんで、夜光草が昼間に光っているんだ!」

「へぇ〜これが夜光草なんだ。初めてみた。きっと岩の影になってたから偶然じゃないかしら?」


 夜光草は駆け出しの冒険者が採取出来る可能性のある素材の中で高額の素材の1つとされている。

 夜光草は昼間に周りの魔素を吸収し夜になるとその魔素で淡く輝く性質を持つため、夜以外採取が出来ないためだ。また、昼間は夜光草の魔素が足りないのが原因とされているが他の雑草に擬態しており昼間に夜光草を見つけることは出来ないとされている。

 その上、夜光草は魔獣などの良い餌となり採取するのは夜行性の魔獣と戦う必要があり、それも夜光草の買取価格を上げている要因になっている。


「それにしたって…ありえない」

「まぁ、考えても仕方ないし見つかって儲けと思おうよ」

「あぁ、しかし夜光草か、いくらになるかな?サンドラビットの毛皮ぐらいにはなるかな?」

「え?レイさん、夜光草の値段知らないの?」

「あぁ、実物は父さんの側で見たことがあるが値段は知らないな。

 ギルドの依頼にもないし…それにしたって…」


 目の前の光景を信じられないのかブツブツ呟くレイさん…それよりもレイさんが夜光草の値段について知らないことが驚きだわ。

 確かに夜光草は夜中に狩場に行くためにギルドでは成り立ての冒険者が無理して取りに行かないように、あえて夜光草の依頼は出してないらしい。

 逆に中〜高ランク持ちの冒険者に取っては夜光草は報酬が安く成りすぎるため片手間で採取するか、採取しても自分達で使うことが多いため市場でも夜光草の売りが少なく値段を知らない駆け出しの冒険者が多いみたい。


「ねぇ、レイさん」

「ん?」

「わたし夜光草の採取したことないから代わりに頼んでいい?

 御礼にサンドラビットの毛皮を代金代わりに渡すから」

「それだと俺が貰いすぎだろ。アルフも夜光草の売値知らないんだろ」

「知らないけど…そうだ。じゃ、レイさんが採った癒草数束とわたしのを交換してくれない?

 レイさんの採った癒草の切り口を見てもっと上達したいから」

「それは構わないが本当にいいのか?」

「うん。ありがとう」


 レイさんと交換した癒草の切り口を見ながらわたしのとは違うことを実感させられた。

 きっとレイさんは採取に無駄な力が入ってないのかな、断面が凄く綺麗なんだろう。


「ねぇ、毛皮もガネリに売るの?」

「あぁ、約束だからな」

「なら剥ぎ取りしたのわたしじゃないってことにして貰っていい?」

「それはいいが…そうだな。ガネリに下手に目を付けられるのは俺だけで十分だ。

 悪いがアルフ、これは俺が剥ぎ取りしたことにしてもいいか?」

「うん。その方がわたしも助かるよ。じゃ、レイさんは癒草を30束は採ったみたいだし帰りましょ」

「もういいのか?アルフはほとんど採ってないだろ」

「わたしにはこれがあるしね。値段はまだ分からないけどね」


 そう言って夜光草をレイさんに見せる。

 レイさんもそれに渋々納得したのか帰る準備をし始めた。


 ハウロ、そっちは大丈夫?

 〈シャールさんが大量に手紙を書き出したからもう少しかかるかな?〉

 …シャールさん、何書いてるのかしら?

 〈とりあえず、サナリに着いたらまた連絡するね〉

 お願いね。


 帰り掛けわたしはレイさんにガネリとの交渉の場に後からわたしが合流する旨を伝えた。

 後、全てわたしに任せて欲しいことと最初はわたしと無関係であるように振舞ってことをお願いして、最後にミイちゃんには絶対に迷惑をかけないことを改めて約束したわ。

 レイさんは俺のために無茶だけはするなとわたしに言ってくれた。

 どうやら、昨日の夜は勢いで言ったみたいで改めて考えたらわたしに迷惑をかけたくないみたい。

 わたしはきっと何とかなるよ。それにこれ以上は落ちようもないでしゃっとレイさんに返事して並んで街まで歩いた。


 街の東口に着いたわたし達は別行動を取ることにした。

 レイさんはレイさんの自宅で待機、わたしは最後の下準備をするために冒険者ギルドに向かった。

 更にレイさんにはわたしが戻らなくてもリーナのウィンドバード(ハウロ)がリーナの元に戻ったらガネリの所に向かうようにお願いした。



 冒険者ギルドに入ったわたしはいつもの窓口に同じように佇むカリナさんを見つけすぐに駆け寄った。

 カリナさんもわたしに気付いたのか優しく微笑んでわたしを迎えてくれたわ。


「アルフさん、今日も昨日と同じで癒草の依頼ですか?」

「いえ、今日は依頼は受けないでおこうかと」

「そうなのですか?

 昨日、採取用の大袋を借りて行ったのでてっきり癒草を大量に採取するのかと思っていたのですが…他にも利用者は居ると思うので早めの返還をお願いしますね」

「は、はい。今日中には返せると思います」


 まさかいきなり昨日借りた大袋のことを聞かれるとは思わなかったわ。

 サナリの冒険者ギルドでは商人からの依頼で素材の大量採取がたまにあるみたいでギルドでは大袋の貸し出しのサービスを行っており、わたしはそれを利用させて貰っている。

 Gランクの冒険者のわたしが大袋を何に使うかと不審な目を向け始めたカリナさんを誤魔化すようにわたしは本題を伝えた。


「あの、ダミアンさんにお願いがあるのですが」

「ダミアンというと、鑑定ですか?剥ぎ取りですか?」

「剥ぎ取りでお願いします。今日偶然にもこれを狩ることが出来て」

 そう言いながら、わたしはカリナさんに2匹のサンドラビットを見せた。

 それを見て納得したのかカリナさんはすぐにダミアンさんを呼んでくれて剥ぎ取り用のカウンターに案内してくれた。


「おっ、サンドラビットか。後1匹いれば依頼も達成だったのに惜しいな」

「えぇ、それでお願いなんですが…」

「剥ぎ取りだろう。サンドラビットなら1匹鉄貨5枚だな」

「それなのですが…実は、こんなことって可能ですか?」


 わたしは剥ぎ取り料を払うのでダミアンさんにわたしの剥ぎ取りを見てて欲しいと頼んだわ。

 ダミアンさんも自分で剥ぎ取りするのにわざわざ代金を払うなんて変なことをするやつだなっと言いながらもあっさりと承諾してくれた。

 サンドラビットの剥ぎ取りはもう何度もしているし、パパから獣の剥ぎ取りについてのコツは教わっているのでわたしが躊躇することもなかった。

 ダミアンさんも手慣れたわたしの腕に感心してダミアンさんが剥ぎ取りしたのと同じぐらい良質の毛皮であることを褒めてくれた。


 そんな感心してくれたダミアンさんにもう一度お金を払うので見ててと頼むと金の無駄遣いだと怒られた。

 それでもどうしてもと頼み込むことで渋々頷いてくれたけど、両腕を胸の前で組んだダミアンさんの表情は怒り半分、呆れ半分って感じかしら


 ケイよろしくね

(任せて)


 ボクは機嫌の悪くなったダミアンさんの目の前で何事もなかったかのように剥ぎ取りを始めた。

 メグミと違って左利きのボクの剥ぎ取りを見てダミアンさんはすぐ気付いたのか、ボクに声をかけそうになったけど気を散らせないように黙っててくれた。

 ボクもメグミとは負けず劣らず毛皮の剥ぎ取りは得意だと思う。

 剥ぎ取り終わった毛皮をダミアンさんに見せて、ボクは剥ぎ取りに使ったナイフの刃を拭きながらダミアンさんの言葉を待った。

 ダミアンさんはボク達の思惑に気付いたのかボクが剥ぎ取り始めた時のように不機嫌ではなかった。


「この毛皮もさっきの毛皮と同じぐらい綺麗に剥ぎ取りされている。

 サンドラビットだけで言えば、俺の代わりに剥ぎ取り代行しても良いぐらいだな」

「ありがとうございます」

「ふむ。それより両腕どちらでも剥ぎ取り出来るなんて器用だな

 まぁ、強いて言えば右手での剥ぎ取りは思い切りが良く男の冒険者に多いな。

 逆に左手は細かな所の剥ぎ取りが上手いな。女性の冒険者みたいな剥ぎ取りだな。

 大きな獣を剥ぎ取る時は右手で細かな所の捌く時には左手で行うとどんな獣でも捌けるかもしれんな」


 ダミアンさんの言葉のナイフに大ダメージを受けるメグミ。

 きっとダミアンさんは褒めてくれたのだと思うけどね…

 本当はここからメグミと交代する予定だったけど、メグミの心の傷が癒えるまでもう少しボクが表に出るかな。


「アドバイスありがとうございます。ボクは見た目通り非力なのでせめてナイフをどちらでも使えるようにしてるだけですよ」

「なるほど。いい考えだ。

 それで、本当に俺に金を払ってまで目の前で剥ぎ取りをした目的はなんだ?」

「えっとですね。実は…」


 ボクはギルドで鑑定をしていて信頼のおけるダミアンさんの目の前で自分の剥ぎ取りの腕があることを確認して貰いたかったことと、この毛皮を商人ギルドに売りに行きたいことを伝えた。

 ダミアンさんはこの毛皮ならどの商人も高く買ってくれるさと笑いながらボクの肩を叩いてくれたけど、ボクが自分で剥ぎ取りをしたと言って信じてくれる商人が居るかと聞くと難しい顔になった。

 さてと、ここからが本題だ。


「そこでダミアンさんにもう一つお願いがあります」

「おっ、なんだ?」

「せめて今日だけでいいので商人ギルドに付き合ってくれませんか?」

「どういうことだ?

 俺は冒険者ギルド所属の人間だから交渉に協力は出来ないぞ」

「交渉はボクが必ず行います。ダミアンさんには鑑定しかお願いしません。

 こんな貧弱な冒険者のボクにでも適正価格で買取してくれる商人さんが居ればいいのですが…

 念のため、難癖付けられた時にダミアンさんに鑑定して貰えたらと悪い商人に騙されないで済むと思って…

 それに冒険者ギルドでは依頼を出せば出張鑑定もしてくれるのですよね?

 ダミアンさんに商人ギルドへの出張鑑定をお願いするだけです」


 ダミアンさんは最初ボクの話に聞き耳持たない感じだったけど、最後まで聞いたら出張鑑定かと呟いて考えてくれた。

 数分ぐらい考えていたのかな、ダミアンさんは念のためカリナさんに確認しにいったがすんなりと許可が出たため商人ギルドまで付き合ってくれることになった。


 そろそろメグミ立ち直った?

(えぇ、ケイもう大丈夫よ。ありがとう。)


 ハウロからもサナリに戻った連絡が入ったしいつまでも落ち込んでいられないわ。

 さて、わたし達も商人ギルドに向かおうかしら。

夜光草

トランプのスペードのような葉を持つ薬草の一種。魔力回復薬の素材になる。

昼間は葉を包み周りの雑草に擬態しているため見分けが付きにくい。葉は周りの魔素を吸収し充分に魔素を吸収すると夜のうちに葉を開き魔素を放出するように淡く輝きだす。葉が光っているうちに採取しないと回復薬の素材にならず、葉の開き具合で素材の良さが変わる。


呼んで頂きありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ