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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
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初依頼

「癒草の採取の依頼ですね。初依頼ですので頑張って下さいね」

「カリナさんの期待に応えられるようにしますね」


 次の日、わたしは冒険者ギルドで依頼を受けていた。

 昨日と同じようにカリナさんが受付に居たのだけど、冒険者ギルドの受付の労働時間は何時間なのかしら?


「癒草の自生している場所は昨日色々調べていたアルフさんなら問題なさそうですが、採取したことはありますか?」

「はい。採取はしたことないですけど、癒草なら実物も見たことあるので大丈夫だと思います」

「そうですか。それなら規定の10束より多めに採ってきたほうがいいかもしれませんね」

「そうなんですか?では、少し多めに採ってこようと思います」


 きっと商人との商談の機会を作る為に多めに採って来たほうがいいのかな?

 まぁ、気にせず多めに採ってこようっと。


 その後、カリナさんから昨日ギルドから支給されたあれはどうしたのかを聞かれたけど、アティウスの空間に入れてますなどと言えるはずもなかったので、採取には役に立ちそうもないので宿に置いて来たと誤魔化して逃げるようにわたしは冒険者ギルドを後にした。


 サナリの街には東西南北どの方向にも街を出ることの出来る門があって、癒草の自生場所はサナリの東口から歩いて1時間ぐらいの川辺になる。

 カリナさんから聞いた話だと癒草の依頼は報酬が安すぎるためにGランクの冒険者ぐらいしか受ける人も居らず、東口から出たわたしは人が周りに居ないのをいいことに川辺までにケイのソナーの魔法に引っかかったサンドラビットを思う存分魔法で狩ることが出来たわ。

 リーナ用のキョーカが無くなりそうだから川辺に着いたら作ろうっと。


(メグミ、川に誰かいるみたい)

 えっ?わたし以外にもGランクの冒険者が居るのかしら。

 ケイ、反応は何人?

(反応は1人だと思うよ)

 なら、見てみましょう。ケイ、お願いしていい?

(もちろん)


 ケイは快く、わたしの右眼に片眼鏡のように魔力を水にイメージして望遠鏡になるようにレンズを作ってくれた。

 それを使って見た光景には、しゃがみながら川辺の草の種類を確認している人が見えた。性別や顔については下を向いていたので分からなかったわ。

 その光景にわたしと同じ癒草の採取の依頼を受けた人だと判断して警戒を解いて川辺に向かうことに決めた。


「すみません。ギルドの依頼で癒草の採取をしたいのですが、ここら辺で採取してたら邪魔になりますか?」

「あん?ここは誰の川でもないし、好きにすれば良いだろう。

 てか、採取など早い者勝ちだし、わざわざ聞く冒険者なんて居ないぞ」


 念のために断りを入れたわたしに返答してくれたのは、わたしと同じ背丈ぐらいの幼い顔立ちの男の子だった。

 彼はわたしを一瞥したら、わたしに興味はないとばかりにまた採取を開始し始めたので、わたしも癒草を探し始めた。

 癒草自体は水辺付近なら5分も探せばすぐ見つけることが出来るので、わたしは見つけた癒草を雑草でも引き抜くかのように採取し始めた。


「おい、お前。採取の依頼は始めてか?」

「えっ?」


 3本目の癒草に手をかけたところでわたしは再び彼に声をかけられた。

 振り向いて見た彼はどこか不機嫌に見れるのだけど、彼の目的の草を踏み潰したりしたのかしら?


「いいから、どっちだ?」

「あ、うん。始めて」

「そうか。そんな取り方をしていたら、依頼は失敗するぞ」

「えっ?どうして?」


 彼から詳しく聞くと、採取の依頼は依頼物を渡す際に破損や状態を確認されるらしい。

 ギルド専属の剥ぎ取り担当者が確認するため誤魔化しが効かずあまりにも破損などがあまりにも酷いと依頼物として認められず返されるみたい。



「これなら大丈夫かな?」

「あぁ、充分だろう。

 癒草以外でも、植物の採取は面倒でも刃物を使って採取すればまず大丈夫だ。

 後、切り取る際に支える手も茎を摘まむように持つようにすることで新芽や花が潰れることもないから更に良い品として評価される」

「へぇ〜。詳しいね。教えてくれてありがとう」

「き、気にするな。俺も父さんに全て教えて貰ったことだしな。

 あぁ、癒草は切り口だと成長が遅くなるから採取した後は指で茎を潰しておけ。そうすれば、後日来た時に新芽が芽吹いていることもあるからな」


 彼に採取のやり方を教わり、御礼を言うと照れ臭かったのかしら。

 彼は早口に採取後の処置を喋り、帰ると一言残して街に帰って行った。


 わたしは彼に感謝をした後、彼が居なくなったので当初の予定通りサンドラビットをアティウスの空間から取り出してキョーカを作りながら癒草の採取を再開した。



 キョーカの完成にはまだ時間がかかるし、癒草も依頼達成には充分に必要な数は取れたわ。

 ケイ、あれを試してみましょう

(ボクの新しい武器だね)

 えぇ、ケイよろしく


「インポート!」

 ボクはアティウスの空間から弓矢を取り出し弦の張り具合を確かめるように数度矢をつがえずに弓を引いた。

 この弓矢は昨日冒険者ギルドの登録時に頂いたもので初心者用だけあってしなりのある木を使った飾りも何もない質素な造りをしている。


 弓の使い方はボクがメグミの中に生まれた時から記憶にあった。

 実際、弓を引くのは今日が初めてだけど経験として体が自然に動く感じ。

 自転車を乗れるようになった人が自転車に乗らなくなって、何年も経っても自然と自転車に乗れるような感覚だと思う。


 前々からボクとメグミは魔法とは別に遠距離からの攻撃出来ないかと話し合っていた。理由としては色々あるけど、その中でハウロがボク達に加護を与えれるようになったために弓矢に決めた。

 風の眷属のハウロの加護はボクとメグミに一つずつ好きに決めることが出来た。その分、ハウロは存在するための魔力の供給をハウロ自身が加護を与えた者からしか受け取れないらしい。

 そんなボクがハウロから貰った加護がボクが使う飛び道具に対して、飛距離と威力を上がるように風の追い風が加わるようになった。また、風の影響で矢がぶれないようにもなったので命中率も高くなったと思う。


 ボクはソナーの魔法を使い、獣の反応を確かめながら少しずつ少しずつ遠くの獣に対して矢を射かけていった。

 ハウロの加護のお陰でボクは的を外すことはなかった。

 そんな中で700〜800mぐらい先に大型の獣の反応を見つけた。


 メグミ、大型の獣の反応があるから確認するの手伝って貰える。

(えぇ、ケイ。任せて)

 …メグミ、もう少し魔法も細かな制御覚えようよ

(うるさいわね!ケイが細か過ぎなだけよ!)


 メグミに頼んで、左眼の前にレンズの魔法を使って貰ったのだけど…ボクが片眼鏡ぐらいの大きさに対してメグミのはボクの顔半分が隠れるぐらいの大きさだった。

 まぁ、見えるから問題はないのだけどね。


 レンズの先に見えたのは全長2m少し超えるぐらいかな?

 牡鹿のような立派な角を持ったカナリマと呼ばれている獣だった。

 ただ昨日ギルドで調べた資料では毛皮の色は焦げ茶のはずなのに、先に見える獣は雪のように真っ白な色をしていた。

 亜種なのかな?それともアルビノ種がこの世界にもあるのかな?


(とりあえず、狩ってみない?)

 そうだね。確か買取額も良かったしね。

 毛皮を売ることを考えると、狙いは首だね。


 ボクは矢をつがえ、その矢に自分の魔力で覆うようにイメージする。

 これで少しでも矢の威力が上がるはず。


 放った矢は吸い込まれるようにカナリマの首に刺さり、その後糸が切れたかのようにカナリマは倒れた。


 その姿を見たボクはすぐさま弓矢をアティウスの空間にしまうとメグミとチェンジした。



 さて、まずは血抜きね。

 横に倒れたカナリマに駆け寄って、わたしはまずケイと協力してカナリマの腹を上にして台座になるように魔力を土にイメージしてカナリマを持ち上げた。

 その後、短剣に魔力を纏わせ首を切断した。これで血抜きは大丈夫なはずだわ。


 血抜きが終わったのを確認したわたしはカナリマの腹から毛皮に傷が付かないように剥ぎ取っていった。

 カナリマは角が調合の材料になるみたいだけど、珍しい獣の頭を部屋に飾る貴族も居るみたいなので、頭ごとのほうが高く売れるかもしれないのでそのままアティウスの空間に入れた。

 カナリマは肉もとても美味しいみたいなので肉の部位ごとに大きく分けてアティウスの空間に入れておこうっと。


 カナリマを解体が終わった時にはキョーカも出来ていて、カナリマの血に惹かれて他の獣が来ないうちにわたしは街に帰った。



 冒険者に戻ったらカリナさんがすぐわたしに気付いてくれて手招きをしてくれた。

「アルフさん。おかえり。癒草は採取できました?」

「はい。採って来たのはここに出したらいいですか?」

「構いませんよ。ダミアン、癒草の鑑定をお願いできますか?」

「あぁ、カリナ。すぐいく」


 カリナさんの呼び声でカウンターの後ろの部屋から2m近くの大男が出てきた。

 きっとこの人がギルド専属の剥ぎ取り兼鑑定士なんだろう。


 ダミアンさんは大きな手でわたしが出した癒草を一本一本丁寧にチェックをして満足げに頷いた。


「癒草の採取の腕は問題なさそうだな。どこかで採取の経験があったのか?」

「いえ、実は…」

 わたしを値踏みするように見つめてきたダミアンさんに対して、変に目を付けられるのも嫌だったので今日出会った彼のことを説明した。


「それはきっとFランクのレイさんですね」

 カリナさんの言葉で彼の名前がレイさんということを知った。

 彼は半年ぐらい前に冒険者になり、癒草の依頼を何度も受けすぐにFランクになったそうだ。

 その時から癒草の採取の腕はダミアンさんが認めるぐらいの腕だったらしい。

 その後、受付の勧めを受けて癒草を持って商人に売りに行った。その後から彼は癒草の依頼を受けずに一週間に1度ぐらいのペースでサンドラビットの討伐依頼を受けているらしい。


「わたしも何度か彼の依頼の受付をしましたがどこか苛立つ表情をしてました。彼ならすぐにEランク、そして更に上のランクもいけるのではないかと思ってたのですが…」

「まぁ、俺が聞いた話じゃガネリ商会と取引をしているらしいがな」

「ガネリ商会?」


 どっかで聞いたことあったけどどこだったかしら?

 わたしの疑問はそのままダミアンさんが答えてくれた。


「最近、回復薬で儲けを出して居る商人だな。噂では商談の苦手な冒険者から安く癒草を買い叩いているみたいだが…」

 ダミアンさんは聞こえないように、「商談は個々人の責任だからギルドも何も出来なくてな」と呟いた。

 カリナさんも商談が苦手ならその前にギルドに相談して下さいねって言ってくれた。



 その後わたしは冒険者ギルドを後にして、そのまま商人ギルドに足を運んでいた。

 リーナが居る間は行くつもりはなかったけど癒草の採取をやり方を教えてくれたレイさんのことを考えると1度、商人ギルドの空気を知ってもいいかなっと思ったわ。


「ふざけるな!

 俺は癒草の採取に手を抜いたことはない!」

「うるさいな。

 怒鳴るのは勝手だが買取額を変えるつもりはないぞ。

 売りたくないなら売らなくてもいいが困るのは誰だろうな」

「くそ!


 ……商談成立でいい」

「最初から素直にそうすればいいものを」


 わたしが商人ギルドに入ってすぐ聞いた商談はレイさんが怒鳴りながらギルドから出て行く、印象最悪な商談だった。

カナリマ

全長1.5mから2.5m、年齢を重ねると3m近くにまで成長する鹿のような角を持ち、外見が馬のような草食獣の一種。

背中の一部に黒い斑点の入った焦げ茶色の毛色が特徴。

また角は調合の材料になり肉も脂が乗って美味しい。

危機察知が高く、500m近くに肉食獣や人が近づくとすぐさま逃げる。


読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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