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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
17/33

始めての

 今、ここは何処なのかしら。

 揺れる馬車の中でわたしはそんなことを考えていた。

 外を見れないように馬車の窓にはカーテンのように黒い布が付けられていて近くに何があるかすら判断が付かない。

 もちろん、生まれた村とブライドの町の通り道を最近初めて通っただけのわたしにここは◯◯の町の近くだよって親切な誰かが教えてくれても分からないの一点張りだとは思うけどね。


 わたしが教会で気を失ってからもう3日が経っている。

 ずっと見ていたケイが言うには、わたしは誘拐されているらしい。出来ることならケイが体を動かして逃げようとしたのだけど気を失った時に微妙にわたしの意識があって交代出来ず、気を失ったわたしに暴行などを加える様子もなかったのでとりあえず様子見にしたみたい。

 ただ、誘拐されているのは分かったけど何故わたしが誘拐されているのかが分からない。

 最初は奴隷として売られるのではないかと危惧したけど、縄で手を拘束されたのは1日目だけだった。その後は暴れなかったら何もしないと見張りの男から言われ、食事も飢えない程度には与えられた。味は保存食なので食べてて悲しくなったけどね。


 そんな誘拐の旅の馬車にはわたしを含めて6人の同行者が居る。

 誘拐犯の男が2人。中肉中背で合わせたようにスキンヘッド。馬車で顔をずっと顔を合わせているから少しは慣れたけど、夜中に街角で見たら悲鳴をあげて泣く自信があるわ。そんな2人は交代で馬車の中で見張りと御者台で馬車の運転を行っている。

 次に誘拐犯が怖くて、わたしの側にいつも一緒にいるのがエルフの姉妹の2人。姉がエリナ、妹がリーナで9歳と6歳の特徴的な尖った耳に明るい金色の髪、コバルトブルーの瞳の色に二人とも将来美人になりそうな似通った可愛い顔立ちをしているわ。ただ、そんな顔立ちよりも姉妹にすれ違う人は彼女らの胸に注視すると思う。妹のリーナでさえおそらくCを超えてDカップ、姉のエリナはもしかしたらFカップかもしれない見事な谷間があった。背の高さはリーナがわたしより少し低くて、エリナは逆にわたしよりもほんの少しだけ背が高い。わたしと年齢も背丈もあまり変わらないのに胸の大きさが絶望的に差があるのが辛いわ。少し分けて貰えないかしら。


 そして、最後の同行者の1人が、

「わたくしめの縄をほどきなさい!今ならまだ許してさしあげますわ!」

「だ〜。てめぇ〜はいい加減黙ってろ!」

「黙って欲しければ今すぐわたくしめを解放しなさい。そうすればあなたがお父様に捕まった際に少しは擁護してあげてもよくってよ」

「やっぱり、てめぇ〜だけはこれが必要だな!」

「や、やめて。いやぁ、変態!そのようなことでわたくしめは屈服しませ…「いて!噛むな!」…もごもご…」

「ふう。これで静かになった。可哀想だと思って猿ぐつわを外した俺がバカだったぜ」

「ん〜…ん〜…」


 誘拐されてからずっと誘拐犯に食ってかかっている少女。ソファラと呼ばれている彼女だけ未だに縄も解かれず猿ぐつわまで付けられている。

 年齢は10歳で薄い桃色の背中まで伸びたロングヘアーに少しつり上がった紫の目をした少女。またブライドの町の貴族の娘と言っているが常に髪を乱して暴れまくる姿からは想像が出来ない。

 ただ、彼女のお陰でわたしが予想以上に冷静になれたのだと思うわ。

 自分以上に慌て、暴れる人をみてると逆に冷静になれる心境かしら。更に彼女がそれだけ暴れても誘拐犯から縄で拘束するだけで暴行されてないことも少しは安心出来る要因になってた。もちろん女を奴隷として売るために体に傷を付けないように暴行してないとの可能性も否定出来ないから完全には安心出来ないけどね。


「アルフにぃ、また考えごと?」

「アルフ、心配しなくてもいいわ。あなたとリーナは私が守るから」

 そして、わたしはまたしても男の子と間違えられてアルフと偽名を使っている。フランさんからの助言のもと遊び心にに自分の男性名を偽名を考えていたのだけど、こんなにすぐに使うとは思わなかったわ。

 誘拐犯も含めて、誰もわたしが男の子であることを疑ってないし…正直、わたしは女だぁ!って声をあげたいぐらいだわ。もちろん、デメリットが多過ぎてそんなことは出来ないのだけど。


 そんなわたしはエリナとリーナの姉妹に凄い懐かれちゃった。唯一の男の子だから頼りにしたいのかしら。姉のエリナも口ではわたしとリーナを守ると言ってるけど常にわたしの右腕に抱き付いて、ソファラと誘拐犯のやり取りを見てる時などは体が震えているのが分かる。リーナの場合はわたしを兄として見て、兄が出来た嬉しさと姉の真似をしているのかわたしの左側に常に寄り添って離れようとしないわ。

 きっと誘拐されているといる現状がなければ、わたしは巨乳エルフ姉妹が両手に花で男性陣から羨望の眼差しを受けれたかもしれないわ。ただし、わたしにとっては姉妹の胸が腕に当たるたびに自分の胸が絶望的である事実を突きつけられるようで泣きそう。

 ちなみに、興味本意にケイにもしよかったら姉妹の胸の感触を確かめてみる?って聞いたら、少しの間があった後に、ボクはロリコンじゃないからって言ってたけどケイも胸はある方がいいのね…


 兄弟のように懐いてきた姉妹を見捨てることも出来ず、それがわたしが未だに脱出のための行動を移せない要因の一つにもなっているわ。

 更に、パパから貰った2本のナイフも誘拐犯に奪われているからそれも返してもらわなきゃ。


「そろそろ色が変わったか?あれを出しな」

 ソファラが一先ず暴れなくなったからか誘拐犯の男がこちらに声をかけ、わたし達は男から手渡されていた花を見せる。

 誘拐されてから何度も男に見せてる花はクローバーの葉のような形をした花弁を7枚あり、渡された最初は白色だった。

 それが今ではエリナが持つ花が赤、リーナが橙色へと色が変化している。後でエリナが教えてくれたけどこの花は白七草、別名を識別草と呼ばれ大気中の魔素や所持している生物の魔力の強さに応じて色が変化するらしい。


「坊主が橙に変わるぐらいの赤で、じゃじゃ馬は赤みが帯びた白か。まぁ、上々だな」

 男はわたし達の花の色の変化に満足しているみたいだけど、何の為に魔力を調べてるのかしら?

 情報が少な過ぎるわ。




 誘拐犯との馬車との旅はそれから更に2日ほど続いた。

 そんな馬車の終着点はどこかの屋敷だと思う。目隠しをさせられて馬車を降りわたしと姉妹は一緒の部屋に連れて行かれた。そこで目隠しは外されたけど窓のない部屋では外の様子も分からず、扉は外から鍵をかけられて事実上軟禁ね。

 部屋にはベットが2個設置してあったからわたしと姉妹で別れてベットに入った。バレるのを覚悟でケイに頼んで探査用の魔法を使ったら、この部屋以外だと体型的に大人が5人子供が4人いるみたい。子供の1人はソファラだと思うから他の場所からも攫ってきたのかしら?それともフランさんのように標準身長が低い獣人族かしら?

 色々と考えていたけど、久しぶりのベットの感触に負けてわたしはすぐに寝てしまった。

 朝、顔に当たる柔らかい感触に気付いて目を覚ました。いつの間にかエリナとリーナがわたしのベットに潜り込んでいて2人の胸に顔を挟まれてたみたい。懐かれて喜ぶべきなのかしら?


 起きたわたし達は大広間のような所に集められた。

 家具も何もなくそれこそ何かスポーツでも出来そうなぐらい広い部屋にソファラ以外の8人が居て、3人はわたし達と同じように攫われた子供みたい。

 扱いはわたし達と同じように手荒な真似はされてないみたいだけど、皆一様に不安な表情で一箇所に固まっている。


「さて、皆さん集まったみたいですね。わたしがこの館の主ドミニクです。皆さんには私が信仰している神を信仰して貰います」

 大人達の中で1番豪華な身なりをしているドミニクがわたし達に諭すように言ってきた。

 子供達からは自分には信仰する神様が居る、勝手に決めるな。家に帰せ等と反論しているけど、彼は気にした様子もなく更に続ける。


「皆さんは神の姿をみたことも、声すらも聞いたこともないのに信仰する神が居るのですか?そんな目に見えない神に祈る必要など無駄なことはありません。わたしが皆さんに実際の神をご覧にあげましょう!」

 彼はそう言うと、わたし達には聞こえないように信仰魔法を使った途端、彼の横に白く透明な馬の体にワシの顔をしたケモノが姿を現していた。その見た目は魔獣の一種かと思えるが何処か気高く、近寄り難い雰囲気を醸し出していた。

 その雰囲気に飲まれるように反論していた子供達も自分の目を疑うように独り言を呟くぐらいで大人しくなっていった。


「これで分かったでしょう。これから皆さんが信仰する神はこちらのウロ様です。皆さんがウロ様への信仰があることを今からウロ様の前で1人ずつ誓って貰いましょうか。そうすればわたし達は同じ神を信仰する仲間となるのです」


 流石に目の前に神と思われる存在がいることで子供達は1人、2人とウロへと信仰する旨を捧げていく。


「さぁ、次はエルフのお嬢ちゃん。あなたの番ですよ」

「……」

「どうしたのです?後がつかえてますしさっさとしてください」

「…いや」

「今何か言いましたか?」

「イヤです。私が信仰する神は森と慈愛の神 (ケルノ)のみです!」

「あなたは本当に目の前のウロ様に信仰しない覚悟があるのですか?」

「私にはエルフとしての矜恃があるわ。何度言われても私が信仰する神は、きゃっ!」


 ウロへの信仰を断ったことでドミニクの怒りに触れたのか、エリナは最後まで喋ることも出来ずに顔を殴られ床に伏せることとなった。

 それでも彼の怒りは収まらないのかエリナを見下ろしながら軽蔑した目を向けていた。


「信仰する気がないなら更に痛い目にあいますがウロ様への信仰しますか?」

「何度言われてもお断りします」

「ちっ、人が丁寧に諭してやってるのに調子に乗りやがってこのガキが。おい、少し痛め付けてやれ」

 彼の言葉に周りに居たスキンヘッドの男達がエリナに暴行を加え出した。

 あくまでも暴行はウロへの信仰をさせるために気絶しないようにお腹や顔など急所をさけるように行い、暴行と信仰するかどうかの確認を繰り返していた。

 それでもエリナは己の矜恃のためか首を縦に振ることなく暴行に耐え忍んでいた。

 わたしはそんな暴力的な風景に底知れぬ恐怖を覚え動けないでいた。


「おねぇちゃんをいじめないでぇ!」

 彼らの暴行を止めたのはリーナの哀願の悲鳴だった。

 リーナは姉の元に駆け寄ろうとしたけどドミニクに阻まれて近寄ることが出来なかった。


「とおしてぇ!おねぇちゃん!おねぇちゃん!」

「あれの妹か。花の色は橙か十分使えるな」

 ドミニクはリーナを捕まえて彼女の白七草の色を確認すると口元を歪ませてリーナに語りかけた。


「お嬢ちゃんはおねぇちゃんを助けたいのかな?」

「おねぇちゃんをいじめないでよ!」

「じゃ、お嬢ちゃんがおねぇちゃんの代わりにウロ様へ信仰してくれるかな?」

「リーナ!ダメよ。森と慈愛の神 (ケルノ)が常に私達を見守っているわ」

「少しは黙ってろ!おい、誰が殴るのをヤメろと言った?」

 ドミニクとリーナのやり取りで収まってたエリナへの暴力だったが、エリナの反抗に苛立ったドミニクが暴力の再開を男達に促す。


「やめて!おねぇちゃん!おねぇちゃん!」

「お嬢ちゃんがウロ様を信仰するならすぐやめてあげるよ」

「信仰するからやめて!」

「素直な子はいいですね。おい、ヤメろ」

 リーナは涙を流しながらもエリナに駆け寄ろうとするが、ドミニクが腕を掴んで駆け寄ることが出来なかった。


「はなしてよ!信仰したからいいでしょ!」

「えぇ、でもウロ様を完全に信仰した証として」

 そう言ってリーナの耳元で囁くドミニク


「それをおねぇちゃんに向かって言ったら離してくれるの?」

「えぇ、もちろんですよ。それにそれを言えばおねぇちゃんも痛みから開放されますよ」

「ほんと⁉︎」

「もちろんです。さぁ、唱えてあげなさい」

 ドミニクの言葉を信じたのか、リーナは彼から言われたままに信仰魔法を唱える。

 その瞬間リーナからエリナに向けていくつもの風の刃が生じ、エリナの体に大小様々な切り傷を作る。


「えっ!?」

 エリナの体が回復すると思っていたリーナは逆に傷つき血塗れになったエリナの姿を信じられないように、一歩また一歩とエリナに歩み寄って傷を確認することもなく彼女に縋り泣き崩れた。


「いやぁぁぁ!おねぇちゃん!」

「ほら、わたしの言ったようにおねぇちゃんは痛みから開放されましたよ。お嬢ちゃんのおかげでね。

 さぁ、これで皆さんもウロ様の凄さが分かったことでしょう。もちろん、わたしは紳士ですので信仰しないなら断ってもいいですが、あそこの血塗れのエルフみたいになるかもしれませんね」

 ドミニクは先ほど彼自身がエリナにしていたことなどなかったかのように残った子供達に信仰の確認を促し始めた。


「いやぁぁぁ!こんなのいやだよ!おねぇちゃん!こんなのウソだと言ってよ!おねぇちゃんをいじめる人なんてみんな居なくなってよ!」

 リーナの絶叫が部屋を木霊する。

 それに合わせるように彼女を中心として周りに向けて風の刃が乱れ飛ぶ。


(メグミ、危ない!)

 呆然と見つめるしか出来なかったわたしとは違って、ケイはリーナの魔法に反応して魔力で盾を作ってくれていた。

(メグミ!しっかりして!)

 え、えぇ、でもどうしてリーナが詠唱もしてないのに魔法を?

(今はそれどころじゃないよ)


 ケイの声にわたしは落ち着こうとしたけど、目線の先にエリナの虚ろな瞳を見つけ何も考えることが出来なくなった。

 その間もリーナからは風の刃が生み出される。


 どうして?エリナが死ななきゃならなかったの?

(メグミ!)

 ケイ、どうしてなの?

(…メグミ、今は変わって。承諾して)

 うん。ケイ、今は…


 わたしはケイに返事を返しエリナの瞳から逃げるように全てをケイに任せてしまった。

白七草

通称 識別草

大陸中幅広く生息しており、クローバーのような7枚の花弁が特徴。

周りの魔素や生物から発する魔力に反応して花弁の色が変化する。

最初は白色の花弁が赤橙黄緑青藍紫と7色に変化するところからこの名前が付けられた。


読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m


体調崩してて大きく更新が遅れました。

次回は5日後までに更新予定です

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