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忘れられた神々の寵愛  作者: 小鳥遊つかさ
16/33

信仰の確認

「フィア坊、おはよう」

「おはようございます。イリナさん」

「朝のパンは何個欲しいんだい?」

「う〜ん。とりあえず1個でお願いします」

「食べないと大きくなれないよ。まぁ、おかわりも出来るから足りなかったら言ってきな」

 イリナさんの中でわたしの呼び名は坊やで決まりなのかしら。

 なごやか亭では朝は基本パンとスープのみだけど、体を資本とする冒険者の利用者が多くおかわり自由にしている。


「うわぁ〜。このパン美味しい」

「そう言って貰えると嬉しいね。その言葉を聞くと明日もまたパンを焼こうって気になるもんだよ」

「このパン自家製なの?ならもしかしてカマドもあるの?」

「もちろんさ。あたしの宿に泊まるからには暖かいスープとパンぐらいは好きなだけ出したいからね」

「へぇ〜。やっぱりパンのおかわり貰っていい?」

「待っといで。今持って来るから」

 そう言って、すぐさま暖かいパンを持って来てくれるイリナさん。


 余談だか家にカマドを設置している所は少ない。設置するのに場所を取る上に多くのマキを使うため、村では何個かのカマドを設置して共同で使用するのが普通であり、町などの宿屋の場合も数件の宿屋で使用している。共同使用のためにマキなどの消費負担は少なくなるがその分、個々で使用できる時間が短くなり焼きが足りないパンが出来ることがほとんどであった。

 ちなみにマーヤはディアスのために小さなカマドを家に設置しているが小型ゆえにカマドの温度の変化が激しく焼きムラのあるパンが出てくることがほとんどだった。

 閑話休題


「ごちそうさまでした。本当に美味しいパンでした」

「そこまで褒めてくれたら、この余ったパンも持っていくかい?弁当にでもどうだい?」

「いいの?」

「子供が遠慮なんてするんじゃないよ。それにディ坊も昼まで帰ってこないんだろ」

「うん。フランさんと話があるらしくて教会いくのも昼からだと思う」

「それだったら、あたしの自慢のカマドでも見てみるかい?」

「いいの⁉︎やった‼︎」

 思い切りにやけ顔をしてるイリナさんにわたしは二つ返事で喜んでた。イリナさんはあれだけパンを食べながらカマドのある台所をチラチラ見られたらねって笑ってたけど、そんなに見てたつもりなかったのにな。


 カマドの使い方を説明しながらカマドにマキをくべていくイリナさん。

 せっかくだしパン作りもしてみるかいとのイリナさんのお誘いを断ることもなく、わたしは久しぶりの料理に心踊らせていた。

 イリナさんの自家製パンはパン生地をしっかり発酵させるために生地に酒を混ぜて発酵させていた。以前は時間を置いて発酵させていたのだけど、冒険者は酒飲みが多く馴染みのある酒をパンの発酵に使ったところ冒険者から好評を貰い、それからずっとこの手法を使っているらしい。


 パン生地をコネて、発酵させて、形を整えてカマドに投入。

 焼きあがるまでの時間にやることがあるらしいイリナさんはわたしにカマドの番を任せて台所から出て行った。

 興味があれば他の食材を使ってもいいと言われてわたしはパパが帰ってくるまで台所に篭っていた。

 こっそり作った物の一部はアティウスの空間に入れておいたので帰りの旅路にも食べる予定。

 ちなみにイリナの予想以上の食材を使ったためにディアスに請求書が後日届きいたが、それはフィーリア本人のあずかり知らぬところとなっていた。



「では、フィア。あとでな」

「…は〜い」

「どうした?具合が悪いなら後日にするか?」

「ううん。だいじょぶ。いってきます」

 たっぷりと料理を堪能したわたしはフランさんの元から帰ってきたパパに連れられて教会に来ていたのだけど。ただ、わたしは下手な詐欺に引っかかったように落ち込んでいた。

 教会というからには威厳ある建物に天井が凄い高いエントランスホール、神聖な神々の像を祀る祭壇。迷える子羊を導く司祭にそれを補佐するシスター達。もしかしたらステンドグラスや神々の壁画のように綺麗な品々も飾られてたり、懺悔室のように秘密を独白するような小部屋もあるかも知れない。まるで映画の世界のような教会をわたしは想像していたの。そして、全てはないと思ってたけど…せめてそれに近いと思っていたの…


 現実は残酷だと思う。いえ、外見が少し小ぢんまりしたロマネスク建築

 風の2階建ての教会だったから期待を込め過ぎてたのかしら。

 まさか、入り口から入るなり見えるカウンターから普段着の男の人が「いらっしゃいませ!信仰関係ならこちらへ!魔法関係なら2階へどうぞ!」なんて掛け声をかけられた瞬間わたしの幻想は砕けて消えてしまったわ。しかも、カウンターには「定期的に信仰の確認をしよう!」なんて垂れ幕まである始末だし…

 さらに詳しく聞くと威風堂々とした神の像もなく、カウンターの奥には何個も小部屋があってその中には祭壇があるだけらしい。

 パパは手慣れているのか、カウンターの人に信仰の確認を申し込むとカウンターからは希望の祭壇があるか聞いてくるし、それに対して初めての申請の確認だとパパが伝えるとどの神にも対応の祭壇の種類を記して最新の祭壇はこちらになりますと勧めてくる始末。まるであっちの世界のカラオケみたいな感じを受けたわ。それなのに小部屋の使用料はあくまでもお布施との名目らしい。


 パパの反応をみてもこれが教会の普通なのだと自分を納得させて、わたしはカウンターの人からハガキサイズの石板を受け取り、信仰の確認の説明を受けた。

 信仰の確認は祭壇の設置された小部屋…信仰の間と呼ばれる部屋で祈りを捧げる。そうすることで自分がどの神に信仰があるかが石板に浮かびあがるらしい。また、稀ではあるが神への信仰以外にも神からの恩恵が石板に浮かびあがることもあるが初めて信仰の確認をする子供に出ることはほぼないらしい。

 また、初めての信仰の確認の際はどれだけ幼い子供でも1人で行わなきゃならないらしい。

 以前は親などの同行者を認めていたのだけど、他種族間の婚姻が増えたことで自分の神を信じさせようと信仰の間で喧嘩する親が増え、そんな喧嘩を見た子供が神を信じたくなくなった。その結果神の信仰を得ることの出来なくなった子供が増え、初めて信仰の確認に関しては同行者を連れるのを教会側が禁止とした。

 更に、初めて信仰の確認は時間がかかることが多く持ち込みであれば信仰の間で飲食も許可されている。

 神の前で喧嘩とか飲食って罰が当たらないのかしらっと思ったけどアティウスの姿を思い浮かべたら特に問題なさそうに思たわ。


 そして、わたしは落ち込んだ気持ちのままパパと別れて、人の良さそうな笑顔の男の人に信仰の間まで案内された。男の人は部屋の前まで着くと扉を開けてわたしを先に促して部屋に通してくれる。


「こちらの部屋になります」

「ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそご利用ありがとうございます。お客さんは初めての信仰の確認ですよね?」

「はい。わたしがどの神の信仰があるか不安なのだけど…」

 正直、わたしが1番信じてるのはアティウス様で間違いないわ。実際見て寵愛も受けているし。でも他の神を信じてないわけでもないし、特にパパとママがそれぞれ信仰している神は絶対居ると思う。実際アティウスが実在しているのがある意味証拠だしね。


 そんなことを考えていると案内役の人がまだ居たらしく「大丈夫ですよ」と声をかけてくれた。

 ありがとうと返そうと振り返ろうとした時にわたしの後ろの首筋に痛みが走り、意識が薄れていった。

 心配しなくても…たの信…する神は…様ですから

 途切れ途切れだけど男の人が何か言ってた気がするわ。

読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

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