それぞれの信仰
〜 フィーリア 〜
目が覚めた私は左手に意識をして寵愛の証が浮かび上がるのを確認した。その後は体に流れる魔力を確認して魔力が体を循環するように意識してみる。アティウスの寵愛もあってか苦労することもなく魔力の流れを感じる。例えるなら肺に取り込んだ酸素が体の隅々まで血液に乗って循環するようなイメージかしら。
本当ならこのまま魔法の練習もしたいけど、ママやパパを驚かす訳にはいかないからアティウス様の所に行ってからね。
「ママ、パパ。おはようございます」
「「フィア。おはよう」」
朝から少し考え事してたからか、ママはすでに朝食の準備を終わってわたしがテーブルに付くのを待っているようだ。
わたしは急いでテーブルに付く。
朝食を食べながらパパがわたしに今日の予定…剣の実戦の時間を教えてくれるはずだからそれが終わったらアティウス様の所に行こうっと。
「フィア。今日も剣の稽古はなしだ」
「えっ⁉︎パパなんで?」
「剣よりもっと大事な話がある。だから午前中の走り込みも今日はなしだ」
「走り込みもなし?わたし何かしたの?」
「詳しい話はご飯の後よ。フィアも早く食べちゃって」
本当にわたし何かしたのかしら?もしかして森に行ったのがばれた?それとも朝から魔力を循環させたのがもうばれちゃった?
正直、ご飯の味なんてわからなかった。
ママが食事の片付けも終わって、ママもパパもテーブルに付いたし、そろそろ贖罪の時間かしら?
とりあえず先手必勝で謝ろう!
「フィア。そろそろ始め「パパ!ごめんなさい!」るか?」
「…フィア?何か悪いことをしたのか?」
「えっ⁉︎大事な話って聞いたから何か悪いことしたのかと思って…」
「フィア。大丈夫よ。話は将来のことよ」
「あぁ、本当ならフィアがもう少し大きくなったら話すつもりだったんだが…フィアの成長の早さを見ると話すべきかとマーヤと相談してな」
「将来のこと?」
「そうだ。俺はフィアの剣の稽古がこの村で生きていくならもう充分だと感じている。」
「フィア。私もディアスがいうなら間違いないと思うわ。それにあなたが夜にこっそりと出来ない魔法の練習をしているも知っているわ」
「ママ⁉︎魔法の練習知ってたの?」
「えぇ、一度も成功してないみたいだけど、フィアならまだ仕方ないのよ」
え?魔法が出来なくて仕方ない?
あっ、そっか。恐らくママもパパも信仰魔法しか知らないのね。
そうよね。わたしも昨日まで知らなかったのだから。
「フィア、お前は将来何がしたい?この村で生きていくなら充分体力も付いたはずだし、マーヤの手伝いをしたほうがいい」
「フィアがもし私の若い頃のように村を出て、ディアスみたいな素敵な尻尾を見つけたいならもっとディアスと稽古をしてもいいのよ」
「…マーヤのはいいとして、幼すぎるお前にもう将来を決めろというのは酷かも知れないが、フィアがこれからも魔法の練習したいならある程度の覚悟は必要なことだ」
魔法のために将来決めるのが必要なこと?どういうことだろ?
(メグミ、それは後で聞けばいいよ。どちらにしても答えはもう決まっているんでしょ)
ケイ。もちろんよ!
「パパ、ママ。わたしは外の世界をもっと見てみたい」
「…下手したら命を落とすことや、ここに帰ってくることも出来ないかもしれないがその決意もあるのか?」
「パパ、正直わたしが想像してるより辛いことがあるかもしれないけど、それでも行きたい。そのために必要なことなら何でも学ぶわ!」
パパはわたしの決意が揺らがないものだと確信したのか、ため息を付いてわたしの意見を受け入れてくれた。
「フィア、決意は分かった。そのために3年間、俺とマーヤで剣以外にも生きていくうえでの知識を教えるつもりだ。その中で村を出て何がしたいか決めてもいい。今日はその最初として、フィアに魔法を使うために神話を語ろう」
「フィア、私とディアスでは信仰している神様が違うからフィアは好きな神様を信仰していいからね。フィアが信じれば信じるだけフィアの助けになると思うわ
まず私が信仰している太陽と風の神に付いて話すわ
ルコトルは4柱神の1神よ。4柱神とは世界を見守る4人の神様でルコトルはその中で太陽と風を司る神様とされているわ。ちなみに他の4柱神はそれぞれ文明と火の神、生命と水の神、鉱石と土の神ね。
人々の中でルコトルを信仰している人が一番多いと思うわ。カクスは鍛治師や職人にアタエンは魔術具作成する魔術師や細工職人などが信仰してることが多いわね。チャクは女性に信仰されることが多いわ。逆に言えば、特に必要としてないならルコトルを信仰しようとする感じね。特にルコトルは太陽を司るから天の恵みがあればって思う人も多いわね。私も子供の頃は特に拘りがなかったからルコトルを選んだけど、今なら自分の夫を信仰したいわね。フィアごめんね。それぐらいの信仰なので詳しい神話が知りたかったら教会に行って聞いてね。
エルフの神も森と慈愛の神 って名前だけでよく知らないのよね」
…ママ、せっかくルコトルの信仰魔法使えるのにその程度の信仰で大丈夫なの?実は普通に魔法使えたりするのかしら?
「…マーヤはあれだが、次は狼人族の女神について話そう。
アルテスは俺達狼人族の先祖にあたる。
そもそも狼人族は元は人族だった。ここよりはるか東の深き森のそばで数百人規模の村で細々と暮らしていたそうだ。アルテスもその村の村長の一人娘として生を受けたそうだ。
アルテスは村の娘達と違って男と冒険をしようとしたり、剣の使い方を覚えようとするおてんばな娘だったらしい…考えたら今のフィアみたいか?」
「パパ!わたしはおてんばじゃないわ……きっと…」
パパはそんなわたしの頭を撫でながら、微笑んでるけど…わたしははたから見たらそう見えるのかしら
「まぁ、フィアがおてんばかどうかは置いておいて。
アルテスが8才になった際に、村の生活を支えていた森にヤオと呼ばれた大狼が住み着いた。ヤオは何百年も年を重ねた4mを超えるような狼であり、銀の体毛に目の色は金色で人語を操り魔法も使えたらしい。何故ヤオが森に移りついたのかはわからなかったがヤオは村人に村を襲わない限りに年に1人生け贄として若い娘を差し出すように脅してきた。もちろん村の男達はヤオを倒そうと何度か数人から最後は数十人で森に入り込んだが全てが失敗に終わった。村の働き手が減って村が経ち行かなくなるのを恐れた村長はそれ以来ヤオの脅しを受け入れ生け贄を差し出すようになった。
それから10年が経ち、アルテスが18才になった年に彼女は自ら生け贄になることを望み、村人はそんな彼女に深い感謝を感じたそうだ。
そんな彼女が生け贄としてヤオの元に行ってから3日後の満月の夜だった。一声空を割くような獣の遠吠えが聞こえ、何事かと村人が家の外に出て月の光を浴びると、光を浴びた村人からヤオのような狼の耳と尻尾が生えてきたらしい。人々の悲鳴が更に人を外に駆り立て、一晩でその村人は全員耳と尻尾が生えたそうだ。
朝になっても戻ることのないことに嘆きに暮れる村人の前に生け贄になったはずのアルテスが森から戻ってきた。ただ、彼女の右眼の色が生まれた時のグレーからヤオのような金色になっていた。そんな彼女は人々にヤオが森から居なくなったこととヤオの呪いでこの村が呪われてヤオのような耳と尻尾が生えてきて、呪いを解く方法はないことを伝えた。そして自分の性で村全体にヤオの呪いを与えてしまったことに対して村人に謝罪をした。謝っただけで許されることではないだろうし彼女自身が村人から殺される覚悟していたらしい。
そんな彼女に対して村人は糾弾することもなく彼女とヤオの呪いを受け入れた。そもそも村人は彼女に対して生け贄にした負い目もあったし、来年以降生け贄を差し出す必要もなくなったことに感謝をした。
外見が変わったことで他の村から迫害を受けるかもしれないが元々辺鄙な場所にある村にそこまで外部の人間が来ることもなく、来る行商人も信頼の置ける馴染みの人ばかりだったのもあったのだろう。そんな環境が村人同士の絆が強くした。
また、呪いも悪いことばかりでもなかった。呪いは村人に人よりも優れた聴力と嗅覚を与えて森での狩に大きく役に立ち、体も丈夫になりヤオへの呪いに対して感謝する村人も出始めた。
そしていつしかそんな呪いを村に持ち込んだアルテスに対して尊敬と感謝をして彼女は村人から女神として崇めたたれ、狼人族の女神としても死後も祭壇にて祀られている。
これが、狼人族の女神の神話だな。
ちなみに余談だがアルテスがどうやってヤオを追い出したかは一切わからなかったらしい。アルテスもそれに関しては誰にも語らず死んだとされている」
狼人族は元は人族だったのね。ってことはもしかしたらエルフとかもそんな元は人族とかの神話とかもあるのかしら?う〜ん…
「フィアはどれか気になる神様いたかしら?」
「今すぐ決める必要はないだろうが3年後に教会にも連れていくから、それまでには決めておくように」
どの神様を選ぶって…わたしはもうアティウスの寵愛あるのだけど。
それに信仰って絶対一つの神様のみなのかしら?
どう思うケイ?
(マーヤさんの信仰度を見たら、そこまで戒律とかも厳しくなさそうだし大丈夫じゃないかな?無理ならその時でいいかも)
そうね。無理ならその時に決めましょう。
「パパ、ママ。わたしは決めたわ。ルコトル様もケルノ様もアルテス様も全てわたしは信じるわ!」
わたしの決意にパパもママは言葉を失って呆気に取られてるみたい。
読んで頂きありがとうございますm(_ _)m




