神の寵愛
「ねぇ、アティウス様。何故貴女はわたしにここまで教えてくれるのかしら?」
アティウス様を痴女認定した後も、わたしはアティウス様から魔力や魔導具・この世界の成り立ちなど様々な知識を教えて貰ってふと、疑問に思ったことを聞いてみた。
「そうじゃ、久しぶりに他者と話せるのに夢中で本題を忘れておったわ」
「本題?」
「そうじゃ。お主、わしからの寵愛を受けんか?」
「ち、ちょうあい⁉︎」
「そうじゃが?ここに来れるということは他の神からは誘われておらんじゃろ?」
「そんなポンポン誘われる訳ないでしょ⁉︎ アティウス様はわたしみたいな幼い少女が好みなの?」
「そうじゃな。そなたのような理解のある巫女は稀有じゃからの」
や、やばい。痴女神だけかと思ったらロリ百合痴女神だったなんて…ケイどうしよ?操の危機だわ⁉︎
(…メグミ?多分アティウスが言ってる寵愛ってメグミが考えてる寵愛と違わない?)
えっ?本当?
(多分だけどね。アティウスの目線にいやらしさはボクは感じないな)
そ、そっか。でも確かめなきゃ
「ア、アティウス様…ひとつお尋ねしますが、寵愛って何かわたしから何か捧げなきゃダメでしょうか?例えば、魔力とか?操とか?」
「いや?寵愛はわしから一方的に与えるもので、特に何も捧げんでも構わぬぞ。特に操なんぞ、わしみたいな美少女神がどうやって貰うんじゃ?もしや、お主はそっち側の趣味が⁉︎」
「あるわけないでしょ!」
「そ、そうか」
アティウス様が若干引き気味だけど…とりあえず、寵愛がわたしの勘違いで良かった。
「じゃ、神の寵愛って何?」
「簡単に言えば神から与えられる恩恵じゃな。神に寄って与えられる恩恵の種類は変わるんじゃが損することはないじゃろな」
「…そんな良さそうな物をわたしみたいな平凡な子供に与えるの?」
「お主を平凡な子供と呼べるかどうかは微妙じゃが…そうじゃな。お主がここに来れたのが1番の理由じゃな」
「ここに来るだけで?」
わたしからしたら、それだけで神の恩恵が貰えると思えないのだけど、アティウス様は何処か遠くを見るように目を細めて、まったく予想もしてなかったことをわたしに教えてくれた。
「お主に尋ねるが、神がどうやって生まれるか分かるじゃろか?」
「えっ?神なのだから、この世界が始まった時から見守ってきたのじゃないの?」
「違うんじゃ。わしら神はお主らのような様々な人族の信仰から生まれるんじゃ。そのため人種の数だけ、時代の数だけ神は生まれ存在してきたはずじゃ」
「…信仰の数だけ?」
「そうじゃ。神は基本死ぬことがないんじゃが、永い眠りに付くことがあるんじゃが、聡いお主ならもう分かっとるじゃろ?」
「……もしかして?」
「おそらく想像通りじゃ、わしら神は人々から信仰をされず忘れられ、祭殿がなくなると眠りに付く。死ぬこともなく、ただ永久の時の眠りに付いた神をわしも何人も知っておる。そして、わしもお主がここに来るまで眠りの世界に居たのじゃ。分かったじゃろ。わしにとってはお主には寵愛を与えてでもわしのことを信仰して欲しいのじゃ…もう、眠りの世界には行きたくないのじゃ…」
アティウス様はわたしに少しでも威厳を持って語りたかっただろうが、身体は静かにに震えていたし、言葉の最後には目の奥に小さな怯えと微かな涙が見えた気がした。
そんなアティウス様の姿を見た瞬間から、わたしは彼女が本当にわたしを必要としていること。メグミ時代のわたしと一緒で藁にも縋りたい気持ちだと思ったら、わたしの答えはひとつしかなかった。
「わかったわ。わたしはアティウス様を信仰します。」
「本当か?わしみたいな神を本当に信じてええのか?」
「もちろん。それでアティウス様、寵愛を受けたらどうなるの?」
「それは分からんのじゃ。」
「ちょっ⁉︎どういうこと?」
「実はわしはまだ誰にも寵愛を授けたことがないんじゃ。なのでどのようになるか分からんのじゃ。」
「それなのに、わたしに寵愛を餌に信仰しろってどういうことなの?」
「うるさいの。わしも必死だったんじゃから、その場のノリと勢いじゃ。」
…その場のノリってわたしのさっきまでの同情の気持ちを返してよ!
わたしがただ呆然とどうしようか悩んでるのを見ながらアティウス様はバツが悪そうに目線を逸らしてるし。
「そうじゃ。試しに寵愛を授けてみて効果を見るのはどうじゃ?」
「さすがにそれは…アティウス様への信仰が薄れそうなのですが…」
「むぅ。それは困るの。仕方ない、他の神に聞いたことなんじゃが寵愛の内容はある程度自由に決めれると聞いたんじゃが、何か欲しいものとかあるかの?」
「そっちを先に言ってよ!ちなみに他の神に聞いた話だとどれぐらいまで希望が叶うのかしら?」
「そうじゃの。確か、ほとんどの者は神への魔力の貢なしでの信仰魔法の使用じゃが、たまに何個かの魔術具の授与、他には神からの神託を希望する者もいたそうじゃな。」
「物品から魔力・情報まで結構何でもありなのね。少し考える時間を貰ってもいいかしら?」
「もちろんじゃ。何せ、わしの初めてを授ける相手じゃからな」
「……」
両手を頬に当てながら、身を捩るアティウスはほっておいて。
ケイ。寵愛の内容どうしようかしら?
(う〜ん。メグミはどう感じたか分からないけど、例で出た3つはボク達には役に立ちそうもないね)
そんなのよね。
信仰魔法を使わなくても良いなら神への魔力の貢は元々必要ないし。神託や魔術具にしてもわたし達には使いこなせる気がしないわ。仮に使えてもそれが原因で争いに巻き込まれたら困るわ。
(そうなると、ボク達のみで内緒に出来ることや他の人にバレないことが理想だね。)
そっか。そうなるとあれっていけるのかしら?
(それが可能ならメグミの目標も達成出来るかもね)
そうなると、多少は交渉が必要そうね。
「ねぇ、アティウス様。寵愛の内容は1個じゃないとダメなのかしら?」
「内容にもよるんじゃが。必ず1個じゃなくてもよいぞ」
「そうなんだ。後、わたし達がいるこの空間はアティウス様の土地なのかしら?」
「そうじゃ。神はそれぞれにある程度の空間を持ってそこから人々の祈りを聞いておる。じゃから、この空間はわしの空間じゃな。じゃが、それが寵愛とどう関係するんじゃ?」
「それを聞いて安心したわ。アティウス様、わたしが願う寵愛の内容はこの土地を貸してください。」
「この空間が欲しいじゃと?ここでわしと暮らす気か?」
「いえ、違うわ。土地を借りるのは前条件よ。1つ目が借りたこの場所に何度も来れるようにして、わたしを鍛えて欲しいの。そして、2つ目がわたしの貴重品などを安全に保管出来る場所が欲しいの。」
「…随分と強欲じゃの」
アティウス様は若干呆れてるみたいだけど、関係ないわ。特に2つ目は絶対通す必要があるわ。
「そう?わたししか信仰者が居ないのだから多少の贔屓は許されるのでは?」
「そうじゃの。まぁ…ええじゃろ。その条件を出来るだけ叶えてやるのじゃ。1つ目の願いに関しては、わしに対しての祈りを…そうじゃの、30分以上祈りを捧げたらこちらに呼び寄せてやるかの。」
「そんなにも祈りを捧げなきゃならないの?」
「さすがにそれより短くは無理じゃの。深い信仰の元により呼び出しじゃなかったら他の神から文句もありそうじゃし。後、この空間は身体に負荷が掛かるんで1度の呼び出しで最大でも5時間じゃな。更に1度来たらそのあと滞在時間を同じだけの時間を開けることが必要じゃの。」
「仕方ないわね。1つ目はそれでいいわ。ただし、2つ目はもう少し使い勝手を良くして欲しいわね。」
「そうじゃの〜。お主のためにわしからオリジナル信仰魔法を送るのでどうじゃ?」
「どういうこと?」
「神への魔力の貢の流れを通路にしてここと向こうでの物体のやり取りを行う魔法を作ってやるのじゃ。そうすることでお主はこちらに送りたい物、取り出したい物をイメージするだけでよくなるはずじゃ。」
「それは便利ね。ただ、貢に必要な魔力はどれぐらいかしら?1日に1度しか開けれないとかだったら使い物にならないわ。」
「そこらへんも問題ないわい。最低限の魔力の貢で構わん。下手なことしたら、お主はわしを見限りじゃろうし。」
「そう。なら更に欲を言っていいかしら。送る・取り出し以外に何が入ってるか見る魔法を追加して欲しいわ。」
「それはええが、それだと見るだけでも魔力を消費するんじゃが」
「そうね。でも何をしまったか忘れたら困るわ。」
「そうか。じゃ、詠唱はわしの名前の後に、エクスポート・インポート・ビジットと唱えるんじゃ。後、使い勝手が良いように頭の中で唱えるだけでも発動するからの。」
「助かるわ。人前でビジットと唱えて何も起きなかったら、周りから痛い目で見られそうだわ。」
「わしだって考えておるのじゃ。では、寵愛を授けるぞ!
………すまん。お主の名前は何じゃ?」
そういえば、名乗るの忘れていたわ。
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