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だから僕は男なんですってば!!  作者: あわき尊継
第一章

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06 遊園地の三人

     火野アズサの場合


 全ての話を聞き終えた私は、気づけば手すりに寄り掛かり、今にも倒れそうな状態になっていた。あれ、なんだか気が遠く……。


「あ、アズサ、さん?」


 不安げな声が聞こえた。

 ツバサだ。いや、ツカサ……なのか、でも……。


「……なに」

「なんでもありません」


 思わず低くなった私の返事に、うん、ツカサが肩を縮こまらせる。

 話は分かったけど、また私の中で整理がついてない。この格好だとツカサ。そういうことでとりあえず話を進めよう。

 時間がないので高速言語を使ってるけど、考えてたりよろめいたりしてる時間はそのまま流れる。切り分けていかないと混乱したまま戦うことになるから、多少急いでもいた。


 ツカサは男。ツカサは男。

 ツバサは女。ツバサは女。


 よし!


 ……あれ?


『納得していただけましたか? ツバサが紛れも無く女であると』

「僕は絶対に男ですと主張します」

「まあ、その格好だと男に見えるよね」

「ホントですかっ!?」


 パアァァ――と満開の向日葵が咲いた。

 なんだコイツ、物凄く嬉しそうだぞ。

 元々の印象もあったし、切り分けもしたからであって、そういう反応は実際女の子らしい。いや、現実にこんな女は居ないと思うんだけど、漫画とか読んでるとたまに出てくるような、ひどく男ウケのいいキャラクターみたいだ。


「喜ぶな笑うな身を乗り出すな」

「……すみません。小学校から上がって以来、男に見えるなんて言われたことなかったから」


 しゅんとするな男のくせに可愛いだろうが。

 私は改めてツカサを観察した。細身でありながら決して骨張らない程度の肉付きはいっそ女の子らしく、決して態度や反応ばかりがそう見せているんじゃないのがよく分かる。くそう、認めたくないけど、パーカーに隠れた腰元のラインはきっと私より細くて綺麗だ。くびれてるんじゃないだろうな……。伸びた前髪と太縁の眼鏡はツカサの目元を隠しているけど、ちゃんと正面からみればあの柔らかで大きな瞳がはっきり印象に残る。私も以前眼鏡を外しているのを無理矢理見たことがあるから、受けるインパクトの大きさはよく分かる。

 ツカサは身体のラインを隠したがってパーカーなんて着てるんだろうけど、肩の細さは見れば分かるし、だぼついた格好はいっそマスコット的に愛らしい。髪を結って上げているから、襟口から首元がはっきりと見えている。ほっそりとしたラインに男性的な色気は皆無で、むしろ守ってあげなくちゃなんて保護欲をそそる。


 駄目だ。いかん。このままだとツカサが女にしか見えなくなってくる。


「ツカサっ、変身して!」

「あの、ツバサです」

「ツバサに会いたいの」

「ですから、目の前に居るんですけど」


 知らない。

 私の本能が警鐘を鳴らしてるんだ。

 ツカサがツバサだったと知らされて、ツバサの性別が男だったと言われたって、記憶の中のツバサは女そのものだ。ツカサは男、ツバサは女。そう切り分けをしたけど、あんまりツカサを見てると、ツカサ、イコール、ツバサの構図から彼女の印象が逆流してくる。

 そっかー、ツカサってツバサだったんだー。あんなに可愛い女の子なんだねー。じゃあツカサもー…………そんな具合だ。


「アンタはツ・カ・サ! 私が男嫌いなの知ってるでしょ。はやくツバサを出しなさい」


 だから殊更私はツカサへの態度を硬化させ、なんとか気持ちを安定させた。

 ツカサは急に手綱を外された小犬みたいに私を見る。顔を逸らすとがっくり肩を落とし、程無くして黒い光が周囲に散った。


 視線を戻すと、可哀想に硬い床で正座したツバサがそこに居た。


「ツバサァァ!」


 ごめんよ私が悪かったよ!

 ダメダメ。ツバサみたいな可愛い女の子に正座させるなんて。可愛い膝小僧に傷が入ったら大変じゃないか!


 私は両手を取ってツバサを立たせ、うんうんと大きく頷いた。


「さ、一緒に悪者退治に出発だね! あれ、どうかしたの?」


 笑顔でツバサを見ると、彼女は困惑よりもいっそ泣きそうな顔で私を見ていた。

 なんだよもう、そんな顔されると可愛がりたくなるだろう? でも今は我慢だ。思ったより時間を使い過ぎてる。急いで場所を移さないとだ。


 すぐさま変身した私は、ミュウの誘導に従って業務引用通路から外へ出た。

 監視カメラもあったんだろうけど、彼女に任せておけばいい。


 メールでアオイに別行動でと送信した。

 後々面倒だけど今はいい。

 ツバサはとっても可愛い女の子なんだから。


   ※  ※  ※


     寺本コースケの場合


 俺の親友に春が来た。

 アオイさんから見せてもらったメールを見て、俺は心から歓迎していた。前々から女の子とは距離を置きたがっていたアイツだけど、あの火野って子にはかなり気を許しているみたいだったから、ちょっと期待していた部分もある。

 そもそも小さい頃の経験で女性関係に警戒心の強いアイツが、詫びだろうが誘いを受けることなんてほとんどない。

 アイツのクラスでの人気は何も勘違いした男衆に限った訳じゃない。まあほとんどは可愛い女友達扱いだから、アイツもひらりひらりと涼しい顔でかわしていたんだが、それでも女とデートだなんて話は初めてた。


「嬉しそうだね」

「はは。アオイさんはどうなのよ。大切な友達が持ってかれたかもしれないんだぜ?」

「アズサはきっとあの子を気に入ると思ってるからね」


 ほほう。

 そういえばそもそもこのデートは彼女から仕掛けたものだった。狙い通りと言うならば彼女の台詞か。


 俺達はとりあえず近くの広場で一休みすることにした。

 食事の時に飲んでいたものと同じジュースを買ってアオイさんに渡すと、彼女は笑顔でありがとうと言って受け取ってくれた。いいねえ。こういう時は素直に笑顔を見せてほしいもんだ。遠慮をポーズとは言わないけど、男心として見栄と期待があるんだから、態々間を開けて気を散らされるくらいなら、笑って受け取ってもらえた方がいい。


 腰掛けた椅子に自重を預けて、少しだけ伸びをする。

 アオイさんは良い人だ。打てば響くように言葉を返してくれるけど、無言で居てもその空気さえ愉しんでくれているように感じる。遠慮と気遣いも上手いし、もし俺に本命が居なければ多少靡いていたかもしれない。


 その彼女が、興味深そうに遠くを眺めているのに気付いた。


「……ん、ヒーローショーか。結構混んでるんだな」


 座るときは気づかなかったけど、ここからだと舞台を見下ろす形で一望出来る。すぐ近くに階段があって、舞台周辺は柵に囲まれていた。なるほど、ここは保護者用の観覧席だったんだな。

 けど今日は家族連れより大きいお友達が多いみたいだ。


 舞台上では進行役のお姉さんが怪人に捕まり、今まさにヒーローを呼ぼうという場面だった。皆で声を合わせてヒーローを呼んでー、とお姉さんが言っている。


「懐かしいなぁ、昔は俺もよく見に来てたよ」

「そうなのか? 私は見るのも初めてだ」

「いっそ下降りて観に行くか?」

「いや、流石にそこまでは」


 ウチは男兄弟ばっかりだから、小さな女の子が見る番組を知らない。上か下かに男が居なければ、確かに見ないことも多いか。


 熱心に見るほどじゃないかと背凭れに身を預けると、まだ舞台を見続けるアオイさんが目に入った。


 俺は何も言わず、ジュースを飲む。

 まあ、戦隊ヒーローはいつの世代も性別も関係ない、皆の憧れだからな。


 そんなことを思ってのんびりしていたら、とうとうヒーローが登場したらしい。客席から野太い歓声が上がった。おいおい、子ども置き去りにするなよお前ら。


「こういうのは初めて見るけど、基本的にヒーローは男じゃないのか?」

「え? そりゃあ――」


 言いかけた時だ。

 周囲のスピーカーから高飛車な笑い声が鳴り響いた。


『オーッホッホッホ! ひれ伏しなさい愚民ども! 私の美しさに感動するのは人として当然のことですけど、撮影を許可した覚えはないわ! でもそうね、その場で三回まわってワオーンと鳴いたら一回だけ許してあげなくもないわ!」


 程無くして野太い遠吠えと共にフラッシュの嵐が始まった。


「おいおい、最近のヒーローショーはやべえな。なんだあのナイスバディ。遠くて顔見えねえのが惜しいけど、俺も一枚撮っとくか」


 ケータイで写真を撮ろうと構える俺。

 けど、なぜか画面がぼやけてちゃんと映らない。故障かと思ってアオイさんに向けると、ふざけてピースをする彼女が綺麗に映った。撮るか。


「ありゃあヒーローじゃなくて、悪役だろう。どう見ても女王様系のエロ担当だぞ」

「ヒーローの登場に期待したんだけどな」

「いや待て、舞台脇からブラックの登場だ。あれ?」


 現れたブラックは、どこからどう見ても戦隊ヒーローじゃない。ああいうのって、顔を隠したフルフェイスに謎の全身タイツと相場が決まってるんだが。

 しかし最近はライダーも奥様向けにかなり変わってきてるって言うからな、戦隊ヒーローが可愛い女の子主体になっててもおかしくはない。その証拠に、客席の大きいお友だちが物凄く嬉しそうだ。

 お、今度はレッドの登場。こっちも女の子ときてらぁ。


「時代は変わるもんだねぇ」

「まるで三十路を迎えた中年男みたいだな」

「戦隊ヒーローが女になっちまうとは、それはそれで嬉しいけど、やっぱなんか違う気がするんだよなぁ」


 それきり俺は興味を無くして舞台を見なくなった。

 アオイさんはやっぱり気になるらしく様子を伺っているけど、愉しんでいるのとは違った雰囲気だ。


「兄弟とか居るのか?」

「ん? いや、生憎と血縁者は誰も居ない」


 おっといきなりヘビィな話題に突っ込んだ。

 けど、さらりと言うアオイさんの口調は、気にするなと言っているようだった。ならそうさせて貰おう。


「居ないってことは、今一人暮らしか?」

「いや。孤児院仲間と集まって暮らしてる。名義上の保護者は居るが、まず寄り付かない。事実上年長者の私がお母さん扱いだ」

「大変そうだ」

「今日は大いにサボらせてもらってるけどな」


 なるほど、妙に大人びて見えると思ってたけど、そういう事情があった訳だ。

 だとすれば今日は一層愉しんで貰いたいねぇ。


 客席からまた大きな歓声が上がる。

 どうやらブラックが一番人気みたいだ。珍しく敵方らしいブルーもあの女王様風の喋りは特定の信者が生まれそうだし、王道のレッドはやはり子どもたちに人気らしい。

 見ているアオイさんの口元にも笑みが浮かんでいる。

 しかしさっきからドッカンバッタンとド派手な演出が続いてるな。この舞台装置を根こそぎ粉砕したかのような轟音は臨場感ばっちしで、思わず俺も気になってくる。


「悪いね。もう満足したから、次のアトラクションに行こう」


 少し覗いてみようかと思った時、アオイさんが立ち上がった。

 伸びをしたジャケットの奥、持ち上がったTシャツの隙間からおへそが覗く。うん、これはいいものだ。完全に興味の移った俺の頭部に、アオイさんのチョップが落ちる。


「あいてっ」

「すけべ」

「いやぁ見事なおへそでした」

「まだ言うかこの」

「指入れていいですか」

「このえっち」

「あいてっ」


 ふざけ合いだったけど、珍しくアオイさんの頬に朱色が散っていた。

 ごちそうさまです。


   ※  ※  ※


     舞台上の名も無きお姉さんの場合


 私は戦隊ヒーローにハマった女子大生である。

 小さな頃は生意気な弟がキャッキャと騒ぐだけの鬱陶しい番組だったけど、ある朝チャンネルを無作為に変えていた時、画面に映ったイケメンに手を止めた。

 あらやだ、すごく好み。


 どうやら過去作品の再放送だったらしく、私はすぐさまレンタルビデオ屋で全巻を借り、休日を潰して見入った。昔から一度ハマると一気に貪るのが私の癖みたいなもんだ。


 そして夜。

 食事も忘れて見続けた戦隊ヒーローの物語に、私は涙を流して感動していた。

 あぁ、レッドとブラックの友情が熱い! お前ら最高だ! 何度も何度もすれ違った二人が、最後に力を合わせて敵を倒すシーンは感動モノだった。陰ながら二人を見守るピンク。お前、いい女だったぜ! カレー食ってばっかりのイエロー、お前、出番少なかったな! 気は優しくて力持ちなブルーは最後まで皆のお父さんだった! なにげに敵女幹部とのラブロマンスにも力が入っていて、時折入るブルー回に私はキャーキャー言いながら興奮した。こういった作品としては珍しい、グリーンの死亡なんて重たいイベントもあったけど、最後にひょっこり復活した時には笑って許せた。そうだ。設定の破綻がどうした。ハッピーエンドならそれでいいじゃないか!


 有り余る感動を数時間掛けて弟に語った。しかし既に戦隊ヒーローを卒業していたソイツの「きめえ」の一言に、私は問答無用でブルーの使っていたスカルクラッシングフィナーレを決めた。悪は滅んだ。


 ともあれ、流石にその時の失敗を活かして、私は友達へ語ることを禁じた。

 かといってこの情熱を封じ込めるのは難しい。


 前のバイトで稼いだ貯金も少なくなってきていて、更なる感動を求めてレンタル屋通いをするべく私は職を求めた。

 そしてあの日、運命と出会ったんだ。



 当日私はノリノリだった。

 怪人に捕まった私を必死こいて撮影する野郎共。まあいいだろう。脚には昔から自信がある。撮るがいい。


 可愛らしい少年たちと共にヒーローの名を呼ぶ。

 前もって顔合わせをしていたから、その中身がイケメンでないことを知りつつも、ヒーローの装いに私は興奮していた。派手に吹き出る水蒸気。花火程度の爆発に子どもたちが湧いた。


 来たれ! 私のヒーロー!

 キャーキャー助けてレッドオオオオオオ!


「あれ?」


 ふと我に返ると、何故かステージの中央にブルーが立っていた。まだ出番じゃない。ここはレッドが最初に現れて、苦戦した所に他の仲間が、そして最後のダメ押しにブラックが登場する予定だ。

 いや、そもそも、そのブルーはヒーローではなかった。


『オーッホッホッホ!』


 なんて、いつの間にか私から奪ったマイクで高笑い。

 見事なくるくる巻き毛にドレスを着た女の子。しかも胸がでかい。なにアレ、私より年下だよね? なにあのロケットオッパイ!

 密かに自慢だった胸の大きさで圧倒され、私はふらりと怪人にもたれ掛かる。


「大丈夫?」

「あぁ、ごめんなさい」


 意外に優しい怪人役の人が、実は今日のメンツで一番のイケメンだった。折角だから堪能しよう。


 ロケットオッパイのブルーは偉そうに観客を罵倒した挙句、どういう訳かイケメン怪人に馬鹿でかい槍を向けてきた。へぇよく出来たハリボテだねぇ。

 と、ふと舞台中央にある登場口を見ると、出損ねたレッドがこっそりオッパイを覗いていた。おいコラ。


『さあ私が始末してあげるわ! 覚悟なさい!』


 一々マイクを通して喋る辺り、この人も中々なものだ。

 変な飛び入りだけど、ここで中止するのは私のプライドが許さない!


「助けてっ! このイケメン怪人が私に求婚してくるの!」

『おのれ悪の怪人め! この私が踏んで差し上げますから、素直に地べたを這いずりなさい!』


 おぉ、何気にノリいいぞこの人。

 楽しくなった私は更に調子に乗った。


「だめよ! この人はもう私の虜! アナタじゃあダメなのよ!」

「ねえ、これどうやって収めるつもりなの」

「とりあえず楽しくやろうよ」

「はぁ……」


 引き気味なイケメン怪人の腕を抱き、私は胸を押し付ける。ふふふ、どうだ。あのロケットオッパイには敵わないけど、これもなかなかなものだろう。


 その時、一際客席が湧いた。

 驚いて観客の視線を追うと、ステージ外から今度はブラックのドレスを着た女の子が駆けて来る。


 な、ななな何あの美少女!?


「……やっべぇ、マジ好みだわ」


 イケメン怪人が即座にマジボレした。慌てて胸を押し付けてももう反応がない。なんてこと!?

 そうこうしている間に辿り着いたらしい寝取りブラックが私達の前に立つ。綺麗な黒い剣を片手に、見せる背中はすらりと綺麗で、立ち姿はとても凛々しかった。


「大丈夫ですか?」

「えっ、あ、大丈夫ですっ」


 おいコラ、なんでアンタは囚われたヒロインみたいな声出してんだイケメン怪人。


 マイクを握り、ステージを牛耳っていたブルーがビシリとブラックを指差した。


『ようやく現れたようね。イム・アラムールのブラック女。さっきは不意を打たれたけど、ここでそんな真似が出来ると思わないことね!』

「あの、うるさいんでマイクは止めてもらえませんか」


 意外にズバッと斬り込んだああ!

 流石ブラック。腹黒ではなさそうだけど、素の言葉が皮肉以上に鋭いぞ。


 ブルーもブルーで正面から言われるのに弱いのか、ちょっと泣きそうな顔で私を見た。いやいや私にどうしろっての! こんな美少女相手にするの嫌よ! なにその華奢な肩! 守ってあげたくなるじゃない!


『皆ァ! まだこの場に来てない、皆のヒーローが居るよねえ? そう! レッドをここに呼び出すの! レッドならあっという間に悪者を退治してくれるわよお!』


 結局ブルーから受け取ったマイクで私は変態親父を招き入れることにした。

 おい、いい加減マスク被って登場しろ。こっちだけに任せてるんじゃないよ。そうだよアンタだ。


『じゃあ今度こそ呼ぶわよぉ……「「「来てぇぇえええレッドオオオオオ!!!」」」』


「不意打ち貰ったあああああ!」

「オーッホッホッホ! 二度も同じ手が通用すると思って!?」


 なんか違う赤いの来たァァァアアアアア!?

 え? ちょっとなに。今日はなんでこんなに私を食ってくる訳!? このステージで女は私だけの筈なのよ!? 私がヒロインで、私がヒーローに助けられる最っ高のステージなのに、なんでさっきから私を食うようなのばっかり出てくる訳!?


 思わずしゃがみ込んでローアングルからレッドを確認する。左側に入ってるスリットから、綺麗な脚のラインがよく見えた。なにアレ。なんであんなに贅肉と筋肉のバランスが良いの。きっと膝枕したら最高の感触だぞアレ。

 レッドのくせに! いやレッドだからなのか!


「あの、さっきから大丈夫ですか?」


 イケメン怪人はかなり私にドン引きしているが最早どうでもいい。

 今は一時の見栄よりも女の誇りが重要なんだ。女が最も化粧と服に気合を入れる日を教えてやろう。それは女だけで会う日なんだよ!


 ブラックとレッドに囲まれたブルーは、それでも余裕を崩さず高笑いしている。

 レッドの攻撃をいなし、ブラックの接近を制し、時にステージを大きくえぐり取りながら突撃する。おお凄いじゃないか。思わぬ派手さに観客が大喜びだ。ステージの責任者が泣いているが私は気にしない。


 観客からは次々と三人を応援する声があがった。

 ち、やっぱりブラックですよねーそうですよねー。総合点の高すぎるブラックは大きい方と小さい方のお友達から揃って人気だ。でも、大きい方の何割かはやっぱりオッパイに人気が偏ってる。お前らちょん切るぞ! でもって正統派のレッドは子どもたちから大人気。付き添いのお父さんたちもやっぱりあのくらいが青春ど真ん中らしい。


 戦いは拮抗していた。

 二対一の状況でも、やっぱりブルーを攻め切れない。

 くそう、確かにオッパイはレッドも敵わない。ブラックに至っては別次元に居るから比較対象外だ。この結果は火を見るより明らかだった。


 状況を動かすには、外からの干渉が必要だ。


 私は昔から脚に自信があった。けど何が一番自慢かって言うと、やっぱり今まで誰も並ぶ者の居なかったこの自慢のオッパイだ! 巨乳と美乳は相容れない? 冗談じゃない! たゆまぬ努力で培ったこの胸! デカイだけの女に負けてたまるもんですか!


 敵は決まった。


『皆のおかげでレッドが来てくれたわー! ありがとー! いい!? 悪者はあのブルー! このイケメン怪人は、ブルーの所から逃げてきた私を助けてくれていたの! 皆で協力してあのロケットオッパイ……もといブルーを倒すのよ!』


「えっと、ツバサ、何がどうなってるの」

「僕にもわかりません」


「オーッホッホッホ! 美しいのは罪ってことよ!」


 ははっ、そう調子に乗っていられるのも今の内だ!


『皆! レッドとブラックを助けてあげて! 応援も大切! だけどね、時には悪者を徹底的に追い詰めるのも必要なのよ!』


 私の号令に従って、無垢な子どもたちが一斉に叫ぶ。


「ドリルドリルー!」「牛女ぁー!」「おっぱいでけー!」「ばーかばーか!」「踏んでください!」「くるくる巻き毛ー!」「下僕にして下さい!」「牛チチー!」「ドリルおっぱーい!」「ご主人さまああああ!」


 余計な連中も叫んだがまあいいだろう。

 私は余裕の表情でロケットオッパイを見た。いかがかしら、このステージは最初から私に掌握されているのよ!


 どうやらオッパイも無垢な子どもからの罵倒は相当にショックだったらしく、あれほどの余裕が綺麗さっぱりなくなって涙目になっていた。あらあら、涙で同情を誘うだなんて女としては下の下よ?


「オ……おほほっほほほっ…………お、覚えてなさーい!」


「ふ……私の勝ちみたいね。オーッホッホッホ!」


 退散するブルーを見送って、今度は私が高笑い。

 ああいい気分。


 その日のステージは大好評に終わった。

 なんか責任者が遺書をしたためていたから、皆で程よい長さの紐を予め回収しておいた。


 問題といえば記録用のカメラが、あの三人が現れてから完全にボケちゃってたくらいか。聞いた話だとあそこで撮影した人全員がそうなってたみたい。

 不思議なこともあるのねー。




 

最強キャラにして当て馬のスズカさん、きっとその内いいことありますよ。

オーディンも自分で作った世界なのに、知らないことばっかりでボケ老人化してる場面とかありますしね。

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