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だから僕は男なんですってば!!  作者: あわき尊継
第四章

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45 魔法少女たち その参


   沙月ミホの場合


 難しいことだからねぇ、とその人は言った。

 世の中は複雑で、色んな人が居て、皆が自分の正しさを信じて生きている。だからそこに争いが生まれるし、和が生まれる。理解があって、不理解があって、どちらかを消せばどちらかも消えてしまう。

 人は複雑であっていい。

 ミュウが言っていたように、曖昧さが心を生むのなら、それら全ては尊ぶべきものなのかもしれない。


 だけど、やっぱり悲劇は苦しくて、そんなもの無くなってしまえと私は思う。


 なぜ争いが亡くならな無いのか。

 人が人であることと矛盾せずに争わなくなることは、本当に不可能なんだろうか。


 難しいことだからねぇ、そう言った父は、慈善団体へ多額の寄付をする一方で、国民に奴隷のような生活を強いる国の裕福層と親しくし、彼らとの取り引きを大切にしている。

 世の中には、汚水に塗れた廃材をかき集め、たった一切れのパンを買い取る為に一日を費やす子どもが居る。親もなく、助けてくれる大人もおらず、同じストリートチルドレンで寄り集まって、彼らから見逃し金を巻き上げる警察から身を守ったりしている。

 物心ついた時から銃を与えられ、人殺しを生活とされるチャイルドソルジャーも居る。あるいは異民族だからと当たり前に殺させる。


 この世は大人が支配している。

 争いは全て大人たちが子どもたちへと継承している。


 けど、この世に子どもだけなんてことになって、それで争いが終わるかと言われたら違う。

 ある程度の枠組みは、その内側での争いを激減させる。だからといって枠組みを広げても、その中に新しい枠組みが出来てしまって争いが生まれることもある。


 どうしたって切り離せない。

 けど、だからと言って諦めてしまうの?

 難しいからなんて理由だけで?


 小さな頃、それがどうしても納得出来なかった。

 父と大げんかをして、それで予定していたパーティをすっぽかした。本当は分かって欲しくて、もっと話を聞いて欲しかったのに。

 父は追い掛けてはくれなかった。

 困った顔で、難しい年頃だから、なんて言って。


 そんな理由で!


 会場からも離れたお庭で一人拗ねていたら、男の子と女の子が言い争っているのが聞こえた。ほとんどは男の子が一方的に何かを言ってるだけだけど、決して女の子はそのままにしない。

 何かを考えて、応じて……。


 私も、父とそんな風に話したかった。

 内容はよく聞こえなかったけど、途中で見ているのが辛くなって逃げ出した。


 とても大きな孤独感を覚えた。

 誰も私の声を聞いてくれない。

 理解ろうとしてくれない。

 子どもが無邪気なことを言っていると、そんな風に思っているだけで。


 誰も居ない庭の隅っこで、壁に寄りかかりながら空を見上げた。

 私の声を聞いて。

 

 私は、


「……私はここに居る」


 手を伸ばした。

 そして――、


『認識しました』


   ※  ※  ※


   火野アズサの場合


 粘着く空気の中をひた走る。

 今、私に出来るの戦う事だけだ。


 破壊の化身、闘争の神、雷神トール。

 赤のドレスが持つのはただただ戦い続ける神の力。


「ミホ!」

 大切な親友へ呼び掛けると、戦いの動きがほんの少し止まる。

 スズカさんがその間に距離を取って、私の隣へ並んだ。


 ドリルを手に背を向ける彼女は何も言わず、小さく笑って下がっていった。


「戦うよ!」

「はいっ」


 応じる声はとても嬉しそうで、瞬間、周囲に散っていた銃が一斉に私へ狙いを定める。

 迷う時間は無かった。

 ただ右腕を振りかぶり、巨大化させたトールハンマーを構え、


「ぶち抜けェェエエエ!」


 打ち放つ!


 この武装を手に入れてから、いつだってそう叫んできた。

 どれだけ悩んでいても、どれだけ迷っていても、これをするときだけはどんな分厚い壁だろうと打ち抜けるっていう確信が持てる。私の中に突破できない壁はないんだって思える。


 こんなにちっぽけな私でも思えるんだ。

 私は本当になにも分からないけど、ただ前に進むだけは出来る。


 分からないことは不安で、怖い。

 けど、そんな私を凄いと言ってくれる人を思い出した。


 ツバサが、あんなに凄い子が私に憧れてくれるなら、私は精一杯の見栄だけでだって戦ってやる。


 打ち抜いたトールハンマーを収縮させ、視界を確認する。

 ミホの姿はない。けど、直撃した幾つかの銃は破壊できたし、衝撃でかなりの数が吹き飛んで使いものにならない。


「っ……横!」


 風を感じてシールドを向ける。

 表面に焼けるような音がする。すぐさま攻撃をと思って構えるけど、空中さえ滑走して進むミホを捉えるのは難しかった。

 ならひたすら追い掛ける!

 上空から、地面スレスレから、背後から、横から、真正面から。次々と光が奔って私を狙う。正直言えばキツ過ぎる。どれだけ走っても追いつけないし、あっちこっちが滅茶苦茶だし、砂埃が待って物凄くストレスが貯まる!


 あーもう!


 ミホは頭良すぎるし、ツバサもなんか変だし、シズクもミュウも凄いことばっかり考えてるしっ、なんでこう平均的で馬鹿な女学生って私くらいなのさ! カナぽんなんて一足先に大人の女に大変身だよ!? スズカさんはよくわかんないけど!

 皆の悩みに比べたら私のなんてちっぽけなのは分かるけどさ!

 こっちだって真剣なの!

 それでも分かんなくてイライラしてるのに、なんで思い切って出てきた戦いの場でさえこんななのさ!


 もうっ!


「あ……」

 なんて苛立って集中切らしてたら、巨大な《影》がこっちに向かって大剣を振り下ろしてる所だった。


 拙っ!?


 力んで地面を踏んだばっかりの足じゃ回避が間に合わない。いっそ転がって? なんて考えていたから滑って転んだ。もう! なんで上手くいかないの!


「アズサっ!」

 ミホが叫んだ。

 心配するくらいなら敵対するな!


 あーもう……これは死ぬかもしんない。


 そう思った瞬間、猛烈な炎が《影》を斬り裂き、紫陽花色の光が周囲へ散った。


「あ……」

 ボーイッシュな短い髪と、ドレスと言うにはやや男性的なデザインの服装。腰から下はパンツスタイルで、幾つものベルトが身を拘束するように巻き付いている。

 ロキの力を持つ魔法少女――、


「アオ――」

「最初に言わせて貰うけどさ」


 藤崎アオイは、物凄く退屈そうな目で私とミホを見、皮肉っぽく目と口を歪ませて言った。


「私、お前たちのことが嫌いだから」


 炎剣を振りかざし、私に対してまで身構えたアオイをミホも一緒に目を丸くして見る。

 そして、


「「私だって大嫌いだ!」です!」


 アオイは盛大に笑い、レーヴァテインの力を開放した。

 もう、状況は滅茶苦茶だ。

 だからさ、


   ※  ※  ※


   藤崎アオイの場合


 あーもう恥ずかしい。

 いっそ死にたい。

 なに今の宣言、最悪。


 いきなり現れて嫌い宣言とか。


 あーもう。


 でも、出てきたのは私の意志だ。別にコースケがうるさいからじゃない。うるさいけど。


 ツバサくんは居ないんだ。

 ちょっと残念。


 アズサとミホ。

 それとケンにスズカ。もうじきユウカとマコトも来るな。


 出来れば二人が来る前に逃げたい。

 もう一年以上も逃げまわってて、今更どうして顔を出せるのか。どの面下げて? むりむり、私はもう居ないものとして扱って欲しい。

 なんかこう、一年前はいろいろありすぎてトランスに近かったじゃない。義母に捨てられてショックだったり、自分と同じような人生たどってきたらしい仲間が居たんだーって嬉しくなって、調子に乗ったらソレを街全体へ生放送されてしまった。

 普通未成年の主張みたいなもの勝手に放送する?


 ミュウは相変わらず空気が読めないし、シズクはやっぱり勝手に復活してきたし。


 アズサもミホもそうだけど、私あの二人が一番苦手だな。

 シズクは綺麗過ぎる。ミュウは無垢過ぎる。

 やめて欲しい、ほんと。

 自分みたいに薄汚れた人間からすると、そういうのって嫌味に見えてくる。


 だからツバサくんみたいな子は安心するのになぁ。

 あぁ、同じなんだなぁって思ってた。


 でも違った。

 私は地べたを眺め続けてて、あの子は空を眺めた。

 同じく手を伸ばしたって、私は泥に汚れるだけだった。


 炎の中で視線を巡らせると、弟と目が合った。

 相変わらず変態的な格好だ。どういう神経してあんな格好で大衆の前に出られるのか理解出来ない。私なら恥ずかしすぎて二秒で悶死する。


 あーもう。

 アズサとミホが完全に怒ってる。


 そりゃあそうか。

 二人とも、私が勝手に距離を取って放置した相手だ。一緒に居ることが極端に嫌だった訳じゃない。二人揃って良い子だから、悪い子としては意見が合わないだけで、やや安心出来なくもないし。

 ミホと大げんかして、それから戻る気にもなれなくて、義母の指示で様子を観察しようと新しく魔法少女になったらしいアズサに接近した。隠してるつもりだったんだろうけど丸分かりだ。水族館の時なんて急にお腹痛くなったとか言い出して、目の前にトイレがあるのにどこかへ走って行くんだし。


「私、結構根暗な所あるから、アズサみたいに明るい人へ合わせるのは大変だったんだよ。ミホは自分勝手な癖に正義感が強すぎて意見合わないし、言うことが正論すぎて腹が立つ」

「だったら言えばいいでしょ!」

「そうよっ、言ってくれれば直そうと頑張れたのに!」

「それが出来ない人の心を斟酌するくらいしなよ」

 斟酌? とアズサが首傾げたがフォローはしない。それくらい自分で調べろ。


「大体さぁ、何、魔法少女って。思いついたのがもっと小さな頃だったのは分かるけど、なんでこんな年齢まで続けてるの。いい加減恥ずかしいんだけど」

「なっ!?」

「だってこういうのって幼稚園児か小学生低学年くらいでしょ」

「い、いいいじゃないのっ、当時の私の正義イメージよ!」

「そうだそうだー」

 アズサ、とりあえずで同意しておくのはやめておこうね。

「ちょっと、アズサまで異論があるのっ!? いいじゃない魔法少女。可愛くて正義の味方なのよ!」

「いやー、正直どうなんだろーって意見は昔からあったかなぁ」

「だよね」

「うん」


 二人で頷いたら、ミホが目を丸くして驚いてた。

 いや、そんなに意外な意見だったか?


 目を合わせるとアズサは分かんないと視線で返してきた。

 そうだよな。


「実の所、一番精神年齢が幼いのはミホだと思うんだよな。頭が回るし知識も豊富だから隠れてるけど、今どき同年代の女の子集めて正義ごっこって」

「そもそも最初は物理的に争う必要ってなかったんだよね? こっちがこうなったから、カナぽんとかも対抗し出したって聞いたし」

「そんな簡単な言葉で纏めないでください! もっと視野を広く! 世界に向けて私は!」

 まあそういう綺麗事は一年前から否定しなくなったけどさ。


 黄金、ねぇ。

 確かにそうだ。


「ねえアズサ、金本位制って知ってる?」

「?」

「アズサがそんな難しい言葉を知るはずがないでしょう」

「なっ! ミホまで馬鹿にするの!?」

「知ってるの?」

「くぅ……金、金……金が本位な制度だよ!」


「初期の貨幣制度に採用されていた、本質的に価値を持たない紙幣を、必ずこの量の金で換金するよっていう制度だよ。多少流動的ではあったけど。国レベルで執り行うことで、なんでもない紙切れに価値を持たせ、商取引に使えるようにしたものだ」

「でもこれは国がどれだけ金を保有しているかによって、流通可能な貨幣量の絶対値が決まってしまい、実質経済活動を頭打ちさせてしまったの。だから今は金本位制を破棄し、すっかり貨幣取り引きが根付いたのをいいことに『信用』を代価とする信用貨幣制度に以降したのね」

「こんなチリ紙に千だの一万だの価値をつけてる事が本来異常なんだけどな。でもその馬鹿げた制度を肯定してひたすら経済を回し続けた。現在の先進国がもつ経済、なんてのは砂上に造られた楼閣に等しいんだ」

「分かるアズサ? 今の世界は、本来持てるはずもない価値の上に存在してる。外枠ばかりで中身なんてすっからかんなの。ちょっとした切っ掛けで崩壊したっておかしくないのよ。絶対に止まることが許されない歯車を世界中が必死になって回してるの。でも、最近はもう頭打ちが見えてきて、そこから世の中は崩壊していくなんて話もあるわね」


「よくわかんない。三行で纏めて」


「すっからかんの」

「信用貨幣制度で」

「「世界がヤバい」」


「最初からそれで言ってよ」

 退屈そうに言うアズサを見てミホがいきり立った。

「そうやって表面的な言葉だけを飲み込んで分かった気になるのが一番駄目なのっ。ちゃんと自分で本質を掴んで考える事。そうじゃなきゃただただ煽動されるままになるのよっ」

「えー、でも私、自分で納得しないと他人の言ったことなんて信じないよ?」

 まあそうだよな。

 アズサはなんだかんだで見ようとしてるタイプだ。

 知らない事も多いし、あまり複雑なことを整理するのは苦手だけど、とにかく本質を探してそこで判断する。無知の知、というヤツだ。


 ミホ……哀れな。


「で、そこまで分かってる二人はどうするの?」

「私はどうでもいいから放置する」

「なっ!? 放置!?」

「一度自分で終わらせようとしたくらいだし、勝手に終わった所で気にならない。まあミホもどうせ大した考えはないんだろ? 逆に聞きたいが、アズサならどうする?」


 興味半分で問いかけると、赤の魔法少女は不意に真っ直ぐ指を上へ向けた。


「宇宙!」


 は?


   ※  ※  ※


   火野アズサの場合


 なんだか難しい話は分からなかったけど、今地球どうこうって話なら大丈夫!

 ちょっと前までツバサといろいろ話してたもんね。


 どうだ! はっはっは!


 ソラを指さして宣言すると、急にミホとアオイが寄り添ってボソボソと話始めた。


「もしかしたら、ちょっと追い詰めすぎた?」「いや、それにしたっていきなり宇宙というのは」「宇宙開発のコストを知らないんじゃないかな」「そうね、水一リットル運ぶのにどれだけ掛かるかだけでも教えてあげた方が」「そりゃ各天体には豊富な資源があるし、魅力的なものとして扱われてるけどさ」「まずロケットの運搬効率、惑星間航行の高速化が果たせないと」「そもそも惑星それぞれは公転してるから、常に一定距離じゃないことも分かってないんじゃないかな」「ランニングコストは莫大ですし」


 むかつくな!

 どうせ何もしらないよ!


「そんな難しいことはいいから! 宇宙に行くんだって思うと楽しいじゃん! 楽しいとやる気でるじゃん! ちょっと面倒な宿題やお手伝いだって、辛いダイエットの日々だって、その先に新しい服買って着飾れる楽しみがあれば頑張れるでしょ! 経済がどうとかそんなの関係なしに、皆で楽しく宇宙目指してみればいいじゃない! 辛くたって乗り越えられるよ! 逆に退屈な数字こねくり回して世界を救おうなんて言われたってやる気なんて出ない!」


 言うと、二人が呆然として、同時に唸った。

 なんだよー、またなんか小難しいこと言う気? いいじゃない楽しければ。


「地球の経済が心配でしょうがない二人はつまんない電卓仕事に励めばいいでしょ! 私はとりあえず宇宙に出てみて、いい景色だ! こんな景色を見ずに死ぬなんて勿体無い! だから皆もおいでよ! って叫んでみるよっ!」


 絶景ってやっぱり生で見てみたくなるよね。

 私のお父さん、戦場カメラマンで色々と凄い写真撮ってくるけど、たまに物凄く綺麗な景色を撮ってたりもするんだよね。海外旅行は大変ってイメージがあるから中々行かないけど、ツバサが言ってたみたいに軌道エレベータが出来れば、皆宇宙は気軽に行けるって思うかもしれないじゃない。

 だったらちょっと見てみたい、そう思って地球から飛び出しちゃう人も増えるんじゃないかな。


 そう思って宣言してみたけど、二人は困ったような表情で唸ったままだ。


 な、なんだよ。

 いいじゃない宇宙、なんかよく分かんないけど楽しそうだよ?


 不安一杯で身構えていた私。


 すると、二人は急に笑い始めた。


   ※  ※  ※


   沙月ミホの場合


 アオイと顔を突き合わせて、なんだかおかしいくらいに笑ってしまった。

 だけど本当にびっくり。


 やっぱりアズサは、私の自慢の親友よ。


 私にはそんな風に割り切れそうにない。

 私の心は内側へ向いてるから、そこの問題を解決せずに飛び出していく自分が許せない。けど、誰かが全力でそこを飛び出していくのを見るのは、きっと心地いいかもしれない。


 もしかしたら、私はこんな人の為に頑張るべきなのかもしれない。

 何もかもを見限ることは出来ないし、なんとかしたい気持ちはとても強い。でも、そんな人たちにアズサの姿を見せれば、一緒になって笑えるのかもしれない。

 そうね、皆でソラを眺めていたら、戦争なんて馬鹿らしいことだって気付く人が出るかもしれない。もっと楽しいことは一杯あるんだから。人は苦しむ為に生まれてくるんじゃない。楽しく、笑って生きていく方がずっといい。


「というかさ」


 アズサが不満気に言う。


「結局アオイは金なんたらかんたらで何が言いたかったの。私を馬鹿にしたかったの?」

「ん、あぁそれか。アズサのせいでかなり霞んだがな」

 ややまどろっこしい言い方はアオイらしい。

 アナタは昔から妙に演出的なのよ。

「黄金っていうのは、経済……人の営みを支えていたものなんだ。それもより中身の詰まった、確かなものとして」

 笑って、


「ツバサの言っていた人の心が持つ黄金も、きっと人間同士の営みを支えている大切なものなんだろうなと思ってな」


 沈黙した。

 チラチラとアズサと目を合わせ、私も思わず熱くなった頬を掻く。


「アオイ……今日一番恥ずかしいセリフをありがとう」


 アズサが言った途端、一瞬でアオイの顔が真っ赤に染まった。


「っ――!」


 言い合いが再開される。


   ※  ※  ※


    水樹スズカの場合


 なんですのコレ。

 ちょっと前まで私たち、結構真面目な感じに戦ってましたわよね。


 ところが三人揃ってから始まったキャットファイト。

 場の空気はすっかりお子様ランド。

 喧嘩なら他でやってほしいですわ。


 ほら、今も炎やらレーザーやらパイルバンカーやらが飛び交って凄まじい地獄絵図。

 あの人たち口論しながらもよくあれだけ派手に戦い続けられますのね。


 あら、あんな遠くにカナが。

 いつの間にか戻ってきてましたのね。

 ミュウからの連絡でもう魔法少女になれないとの話でしたけど、こんな所にまで顔を出すのは性分かしら。相変わらずね。途中で合流したらしい灰原ユウカと壬生マコトも居るじゃない。これで戦力も安定して楽になりそうね。


 あら?

 なにかを指さしてる?


 あらあら……あら?


『大変です、皆さん。かなり本気で大変です』

「アレはなにかしらミュウ?」

『藤崎ケンの内側にあるものは予てから調査していましたが、確保した汚染済みのフレイヤドレスと改造されたダーインスレイヴに照らし合わせた結果、その正体が今判明しました』


 見るもおぞましい格好をした魔法少女について、正直かなり怖いから距離を取っていたんですけど、

「たしかあの方、ツバサやマリナと同じ星の心を模倣して造られたんでしたわね」


 マリナの場合はこちらで再調整して安定させたもので、最初からヴァルキュリアの性質を持っていましたけど、御影ツバサは別にあったんでしたわよね。


『はい。藤崎アオイの持つロキのドレスはこちらで用意したものですし。当然ながら、後付けされていたヨルムンガンドのドレスも同様です』


 となると、彼が本来持っていたのは……

 彼を生み出した人間が何を狙っていたのか。


 ついさっき、あのミュウがかなり本気で大変だと言った。


『――ユーミルの卵の強制起動を確認。原初の巨人ユーミルのドレス、孵ります』


 直後、すべての景色が消え失せ、新世界が創造された。





別名、アウルゲルミルとも呼ばれるユーミル。

その身体からは数多くの巨人族が生まれたとされる。

しかし彼、または彼女はオーディンを始めとする三神との戦いに破れ、その肉体は世界を創造するのに使われました。


血から海や川を、

身体から大地を、

骨から山を、

歯と骨から岩石を、

髪の毛から草花を、

睫毛からミズガルズを囲う防壁を、

頭蓋骨から天を造り、

脳髄から雲を造り、

残りの腐った体に湧いた蛆に人型と知性を与えて妖精に変えた。


両性具有の存在であるとも言われ、単独で子を産めた。

創造神となるオーディンもユーミルが生んだ巨人と別の神との間に生まれた子で、その事からユーミルは世界の素材となるだけではなく、巨人・神・人の始祖であるという解釈も存在します。

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