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桜井マリナの広げた翼は、光の奔流となって大気を打った。
ビル街の上空を一直線にこちらへ向かう動きを信用はしない。僕はゆるやかに後退しながら黄金の剣を構え、防ぐ構えを見せる。
視線が交叉した。
無機質な瞳にぞわりとする。
口元だけが笑みを映していて、趣味の悪い仮面じみた表情がそこにある。
直線の動きに一度羽ばたきを入れ、身を回した相手に僕は飛び込んだ。振りかぶった黄金の剣を飛ぶ勢いのまま叩きつける。
その前に大気を叩いた光翼が桜井マリナの身を上空へ踊らせた。
太陽を背にした彼女の姿は殊更暗闇じみて見えた。
構えた黒剣が脈動する。
『フレイのドレスを転送します。フレイヤのドレスはこちらで回収、分析に移ります』
予定通り、ダーインスレイヴに汚染されたドレスをミュウへ受け渡し、次の瞬間、僕は白銀と黄金のドレスに身を包んでいた。黒翼が消えたことで一度浮遊感を得たけど、黄金の右翼と白銀の左翼がふわりと僕の身を浮き上がらせる。
降り注ぐ陽の光に目を細めた。
その中心にある黒い影。獲物を見つけたとばかりに周囲の景色が意識から吹き飛んだ。
シたい。
アイツを―― シ、た 。
慣れた感覚に笑みが浮かぶ。
これは本来、僕が持っている攻撃性の力。
何よりも意識に馴染み、荒れ狂う破壊衝動に身体が内側から弾けそうだった。
『しっかりして下さい! エインヘリヤルとしての性質は切り分けることに成功しています。これで操られることはありませんが、ダーインスレイヴの持つ狂戦士化の力は貴方の肉体に残っています。自分をしっかり持って! でなければ桜井マリナを殺しかねません!』
「わ……かってるッ!」
黄金の剣を強く握り締め、衝動を切り裂くように打ち払う。
正しき者に勝利を与える無銘の剣が仄かな光を放っていた。けど、まだどこか頭が弛緩してる。ドレス経由でミュウのサポートが無ければ、あっという間に意識を持って行かれてたかもしれない。
「ぁは」
上空から声がした。
手にする黒剣から歪みが溢れだした。
ビルが、道路が、車が、人が、雲が、太陽が、空さえも、目に見えるすべての景色が歪む。まるで、そこから力を得ているかのように黒剣から黒い光が溢れ、それは巨大な剣の形を成して凄まじい衝撃を放った。
衝撃は全身に細かい針を刺されるような痛みを伴っていた。
防ぐ両腕を外した途端、目の前に迫る黒い影を見た。
地面へ叩き付けられた僕はアスファルトの上を一度跳ね、二度目を受ける前に金銀両翼で大気を打って上空へ飛び出す。激しい痛みの中、姿勢を安定させてる時間はない。そのまま横へ大きく回避すると、先ほどの巨大な黒剣がついさっきまで居た場所を通過していった。
彼を置き去りにするくらいのつもりで再びの上昇。
再加速した所で衝撃が周囲に広がった。背中で、追ってくる桜井マリナも音の壁を割ったのを感じる。
雲を眼前にした所で身を翻す。速度が早過ぎるからコンパクトにはできないけど、大きな円を描いての宙返りだ。
ドレスの力は凄まじい。
これだけの速度でこんな制動を掛ければ、人体なんて一溜まりもない。あっという間に骨が砕けるか、顔面の皮膚がとてもおもしろいことになっていた。
うん、前者も嫌だけど後者もかなり嫌だ。
生憎マジカル科学に守られた僕らはその辺りのビジュアル崩壊から解放されている。殺しきれなかった急制動の負荷が多少身体に掛かるけど、身体に残る痛みが強まるのと、呼吸が少し乱れるくらいだ。
こちらの狙いを察した桜井マリナが一度外へ制動を掛け、上昇の勢いを弱める。
円を描き切って戻ってくる僕の軌道に狙いを定めた。
交叉する。火花が散った。
「っ……決めきれない!」
振りかぶられた黒剣を見て、僕は更に上昇、雲の中へ飛び込んでいった。
『右へ十メートル回避を』
ミュウの管制に従って軌道を変えると、直後に黒剣の奔流が雲を割る。続けて十字に斬られ、放たれた衝撃で雲が散っていく。
『素直に雲へ入ってくればいいものを』
「こっちだけレーダー付きだからね」
流石にバレたみたい。
続けて狙われた攻撃から逃げる為、僕は大きく翼を羽ばたかせて飛んで行く。いざとなった時の逃げ場を確保するのに、行く先は雲上へ。
そこは白銀に輝く草原だった。
照りつける太陽を遮るものは何もない。
飛びながらつい手を雲の草原へ触れさせると、濃い霧の冷たさが掌に伝わり、風を受けたことで白い柱が後方に浮かんでは消えていく。
笑顔になれた。
昏いものなんて何もない、純粋な楽しさや綺麗なものを見た感動による笑みが、ごく自然に衝動を上塗りした。
だから、
身を回し、向かい合った。
光翼を羽ばたかせてこちらを追っていた桜井マリナは、警戒するように距離を取って留まる。
手を差し伸べて、
「おいで。お兄ちゃんが遊んであげる」
『ツバサっ!?』
笑う。視界が黒く染まっていく。
黒の光が弾けた。
飛び上がって一直線に向かってくる桜井マリナの斬撃を正面から受け止めた。途端に雲中へ沈んでいく。剣を鍔迫り合わせる互いの顔さえ見えない濃霧の中、弾んだ呼吸を僕は聞いた。
どっちのものだろう? 僕? それとも、
『ツバサ! 衝動に身を委ねてはいけません! どんどん自我が汚染されていきます!』
雲を突き抜けた途端、強く弾かれてまた距離が離れる。
手の中で何度も剣を返して遊ぶ。
与えられた勢いを殺し、また一直線に突進した。打ち合わせた剣が小気味良い音を立てる。もっと聞きたくなって、力一杯叩きつける。支えるものの無い空中だから、一度打てばすぐ距離が出来て、また羽ばたいて肉薄する。
何度か繰り返した後、不意に桜井マリナが降下を始めた。
『お願いですから抵抗して下さい! これ以上は本当に危険なんです! こちらで抑えているのも限界です!』
「もう……ちょっと、だから」
追い掛ける。
追い付ける。
背後からの攻撃。
僅かに軌道を逸らされて位置が入れ替わる。身を回して振り返るのと、背中に圧力を感じたのは同時だった。
白銀と黄金の翼が砕け散る。
驚いて目を向けると、桜井マリナと同じ形状を取った《影》が、巨大な三ツ穴レンチを振り抜いているのが見えた。それは、本来彼が使っていた武装で、
「ちゃんと」
首元に感触。
「こっちも警戒しないと」
全力で身体を捻り、回避と同時に剣を振る。弾いた黒剣の切っ先には黄金の首飾りがあり、革紐が断ち切られて飛んで行く。首元から僅かな赤色が散った。
落ちる。
翼が無ければ空も飛べない。
フレイヤのドレスに着替えることも出来ない。
だけど僕は笑ったまま、落下したビルの屋上を転がる。飛び上がって隣のビルへ。落下点から粉塵が上がる。《影》だ。更に上空から急降下してきた桜井マリナの攻撃をかわし、《影》が振りかぶった巨大レンチを受け止める。抑えつける動きに身体を沈め、足を払う。避けられた。軽いステップで後方へ飛んだ《影》を追い、戻す足で更にもう一度。三度目は踏み込んだ瞬間に止め、横へ転がって剣を振り上げる。空からの攻撃は重かった。なにせ加速した全体重がそのまま掛かってくるんだ。支えきれず結局下を潜るようにして抜けた。
立ち上がる動きと切り上げる動きは同時に。
《影》の攻撃を正面から弾き、差し込むように脇の間へ。
斬った。
視界の中、僕の身体にも黒い影が纏わりついてるのが分かった。
汚染はかなり進んでるみたい。だから、この上なくこうしているのが心地良かった。
落下する巨大レンチを掴み、上空へ投げつける。
そうやって沈み込んだ相手の足元へ飛び込み、跳躍した。息を呑む音が聞こえる。剣を振り抜いて光翼を砕いた。背中合わせに交差した僕らは、ビルの両端で再び向かい合う。
息を吸い、止める。
駆けた。
一打、二打――打ち合わせる剣戟に小細工はなく、デタラメに振るわれた攻撃を正面から打倒する。
強打の一撃に火花が散った。
踏ん張るだけでは支えきれなかったらしい桜井マリナが尻もちを付いて転ぶ。屋上の床を這うように切っ先を滑らせ、切り上げる攻撃を狙う。先端部が踏まれた。後ろ手で跳ね起きた相手の逆足が眼前に迫る。胸を逸らして避けた。変わりに、肩へ乗る一人分の重み。下へ向けて蹴られ、視線が少しだけ落ちる。
抑えの無くなった剣で宙返りする相手を狙う。快音が響いた。散った火花に一瞬だけ視界が明滅する。
着地し、身を沈ませた桜井マリナから、小さな、弾んだ吐息を聞いた。
対し、僕は止めていた息を一斉に吐き出して脱力する。
「っは! ぁっ!」
桜井マリナが後方へ飛んで行く。追いかけようとした僕の前へ幾つもの《影》が現れる。エインヘリヤルとしての力が付与されているだろうそれらには個体差があった。持っている武器も剣に限らず、槍や斧や弓など、それぞれが固有の装備で挑みかかってくる。
槍持ちの前進に距離を取り、接近してきたのを見るや宙返りで飛び越える。途中放たれた矢を打ち落とし、着地と同時に剣を振り抜く。一息で十メートルもの距離を詰めた攻撃は弓持ちを霧散させ、次に詰め寄った《影》へ剣を打ち合わせる手前で小さく左腕を伸ばし、逸らしてすり抜ける。霧散した。
当然、この状況でも警戒は怠らない。
《影》に紛れて狙ってきた桜井マリナの攻撃を受け止め、引き、流すと見せかけて緩んだ所へ力一杯剣を振り抜く。吹き飛ばした。剣を返す。一歩右足を引き、胸元を通過していく槍を掴んで引き寄せ、反対から接近していたもう一体の《影》を貫かせる。
槍持ちは放置したまま背を向けて走る。はぐれていた一体を斬り捨てる。
『…………』
息を吸って、吐く。
剣を返し、柄の握りを弄ぶ。
切っ先をゆらゆらと揺らした。
唐突に《影》がすべて掻き消えた。まあそれも仕方ない。能力は格段に上昇していたけど、相手にならないんだから。
気付けば、桜井マリナが立っているのも辛そうに肩で息をしていた。
弾んだ吐息だけど、肉体がついていかない、そんな感じだ。
「どうしたの? おわり?」
僕の声に彼は剣を構えようとした。けど、ふらついて地面に突き立て、杖のようにしてしがみつく。荒い息だ。
「なん……で……」
大きく息を吸って、咳ごみながら吐いていく。呼吸を整えようとするも上手くいかないみたいだ。だから僕は屋上の縁に腰掛けて剣を立てかけた。
「ダーインスレイヴに身を委ねていたら、機械になれると思った?」
はっと顔を上げたその表情を見て、僕は笑みを濃くした。
「君の行動はちぐはぐ過ぎるよ。一つ一つ箇条書きにすればすぐに分かった。一貫性の無さが君を表してる。君は――自分の意志を持ちたくないんだよね?」
言われるままに行動して、特定の誰かに依存しない。ただ請われるまま、ラビアンローズにも属したし、お母様の指示で色んな暗躍もあった、同時にお父様の求めにも応じて僕を助けたりなんてして。
最後の一つが決定的だ。
お母様は僕を助けようとなんてしない。
僕が生きているのを最も認めたくない人なんだから。
「君は人間だよ。機械になんてなれない」
「……何も知らないくせに」
「じゃあ教えてよ」
息を詰めた彼をじっと見る。
知らない。
お父様から聞いた限りでも、彼の足跡は研究所の襲撃以降ほとんどが不明だ。一度お父様と行動を共にしていた時期もあるらしいけど、それも途中で別れてしまい、次に見つけた時はラビアンローズに属していた。
まあ、一年前に起きた冗談みたいな出来事を思えば、想像も付かないような目に合ってきたんだろうと予想は出来る。もしかしたら、僕が辿るかもしれなかった出来事。
僕は昔を思い出すのが苦手だけど、もしかしたら研究所で会っていたかもしれない子。
「おとうとのこと、おにいちゃん知りたいなぁ」
言うと、怯えた表情が見える。
「いきなり兄面なんてするなあ!」
「最初に言い出したのそっちじゃない。まあ色々とあるけど、結構嬉しかったんだよ? 僕だって血縁者は居ないし、お母様からは嫌われてるし。これで本当の弟にまで嫌われたらショックだよ」
剣を置いたまま歩いて行く。
すぐ近くで膝をつくと、揺れた目が見えた。下がろうとして力が入らず、尻もちをつく。
「僕は身を委ねた。君は反発した。だからそんなに疲れたんだよ」
本当はそれだけじゃないけどさ。
「くるなぁっ」
「いや」
後ずさるから身を乗り出して追い掛ける。すると更に怯えて逃げようとする。
それが彼の経験則なんだろう。
前にミュウが言っていたクオリアについて思う。様々な経験を元に物事を予測して、肉体や感情に影響を与えるソレの根源は、言ってしまえば感性に集約される。何かで上塗りしていかない限り、こういう感じ方は中々変化しない。
さてどうしよっか。
笑いかける? 頭を撫でる? そのくらいはラビアンローズに属していたらあった筈だ。淡雪さんや水樹さんはそういう人だし。それでもこうなら、もっともっとインパクトのあるものがいい。
僕が考えていたのは、一年前に僕が体験したことを彼にもさせようというものだ。
あるいは、アオイさんが体験したようなこと。
感じ方が変われば世界は変わる。実際は自分一人が変わってるだけで他の何もかもは置き去りだけど、別にそれでもいいじゃない。先へ進んだことで別の解決策が見えてくるかもしれないし、余力が出来るかもしれない。
自分一人じゃ足りなくても、世の中には、受け継ぐというものがある。
「ふっふっふ」
「ひゃっ、ぁ」
人から近寄られると怯える。
それは接近イコール何か嫌なことが起きるっていう経験則だ。
決して僕が怖いわけじゃないよね?
まあいいか。
「ねえ、名前、本名なの?」
「……」
目逸らされた。
「ねえねえ」
四つん這いで詰め寄る。
裾を踏んだからもう逃さないぞー?
ほとんど僕が覆いかぶさるような状態で弟を組み敷いた。僕よりも小柄で、本当に女の子みたいな顔つき。格好もアイドル衣装みたいなドレスで、どう見たって女の子に見える。
「君が言うように、僕はほとんど君のことを知らないよ。けど、兄弟なんだったら、僕は力一杯好きになる。大切な弟なんだもん。なんだってできるよ?」
だって、一年も前に見ず知らずの人間だろうと、その誕生を祝福するって決めたんだ。知らないことが愛情を持てない理由にはならないと思う。そうじゃないって言われたって、僕のクオリアはそう感じてるんだからそれでいい。
「嫌いっ、嫌いっ、嫌いっ、嫌いっ嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いきら――ん、っぷ!?」
口を塞いだ。
はっきり言おう、キスした。
そのまま押し倒して身体を浅く抱く。
無理に力は掛けなかったから、逃げようと思えば幾らでも逃げられる。思いつきだったけど、別に嫌な感じはしない。
しばらくして口を離すと、真っ赤になった弟が目を丸くしてこちらを見ていた。
「僕は大好きだよ」
言った途端に物凄い速度で距離を取られた。
「あ、言っておくけど弟としてだからね。僕、恋人が居るから、それにそっちの趣味は一欠片もないから安心して。今のは兄弟としての親愛の証。ね?」
なんでそこで剣を構えるの。
と、ここでいつの間にやら僕の首元へ戻ってきていた首飾りから声がした。
『ドン引きですね』
「なんで!?」
『自覚無い所が致命的です』
「きょーだいだもん! できるできる!」
『変態ですね』
「なんで!?」
よくわからないけどいいや。
もうすっかりリラックス気分の僕は、寝転がったまま両肘をついて手の上に顔を乗せる。足をパタパタ。剣を構える弟をのんびり眺めると、真っ赤になった彼が口を開いて、
「バ――バァカ、バァカッ、バァァァアアアアアアアアアアカ!」
最後に黒剣を投げ付けて逃げていった。
「んー……思ってたのと違う」
『どうなると思ってたんですか』
「そりゃあおにいちゃんだいすきって」
『なりませんなりませんなったら大問題です。ま、ダーインスレイヴ置いていってくれましたから、目的はほぼ完遂です。そしてツバサ、この忙しい中わざわざ修復して転送した首飾りに、耳を近づけて下さい』
言われるまま耳を寄せると、
『馬鹿ァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
キーーーーーーン……、
こ、鼓膜が破けるかと思った!
『危ないって何度も言いましたよね! 私がどれだけ必死に汚染を食い止めたと思ってるんですか! もうさっきからずっと手が震えてるんです! 本当になにも異常はないんですかちゃんと確認して下さい!』
「だ、大丈夫です! 問題ないです! ごめんなさい!」
『ほんとにもうっ! いいですか、ツバサの突拍子もない行動は最初からですが、それにしたって限度があります。だいたいなんでダーインスレイヴの汚染を受け入れたりしたんですか。肉体の疲労なんて私のサポートがある時点で十分な差があります。敢えて危険を冒す必要なんてなかったんですからっ』
うーん。
「理解るかなって思って」
『わかる? 何をですか。意味不明です』
「ミュウはまだまだ人間への理解が足りないなぁ」
『ひどいです。差別です。ツバサ、戻ったら私にもキスして下さい。親愛のアレでとりあえずいいんで』
「それはやらないかなあ?」
『そうですか。えぇそうですか。それとツバサ、素敵なお知らせがあります』
「なに?」
『貴方が戦ってる最中にシズクがダーインスレイヴの呪いから逃れ、実は近くで観戦していました。いやぁ、正直無敵のバルドルがなんで呪いを受けたのかも不明なんですけど、こちらのサポートも虚しく勝手に復帰しちゃいましたからー』
「なっ!?」
『いやぁ、うっかりうっかり。伝えるの忘れてましたー』
すた、と足音が背後に降りた。
『では後はシズクに任せて、私は割とシャレにならないくらい大変なツリーの守りに集中しますね。では』
「ツバサ」
しばらくぶりに聞く恋人の声は、手足が震えるほど冷たかった。
「はい」
「おすわり」
「はい」
「ツバサ」
「はい」
「 」
その後の僕がどうなったか、とても人様にお教えできるものではありません。
ただ、人間とはかくも業の深い生き物であり、ここまで残酷になれるものであると、諸行無常の響きを感じずには居られなかったりと――




