そもそもの始まりと神様の行動の謎
「じゃあ、また明日ー!」
「うん、また明日!」
親友と別れ、大学から駅へと向かう。
その帰宅途中に、金髪碧眼の少女を見かけた。
まだ12、13歳のようだった。
しかも、たった一人で突っ立っていた。
どこか不安そうに見えて親をはぐれて、探してる最中のようにも見えた。
「君、どうしたの?もしかして迷子?」
私がしゃがみ込んで、声をかけると、彼女は驚いたように、私を見た。
「私のこと、見えるの?」
「見えるも何も、君は普通の女の子でしょうに。私の質問に答えてくれないかな?」
「……迷子ではないわ。私は子供ではないから」
なんだか変わった子ね。
自分のこと見えるのかと聞いたり、子供じゃないって言ったり。
周りの人の変な影響受けてるんじゃないかしら?
特に、中二病的な兄弟の影響を。
「一人で大丈夫?」
「えぇ。大丈夫」
大人びた口調から彼女は童顔で実はずいぶん大人じゃないかと考えてみたけど。
流石にいくら童顔でも、20歳が小学生に見えるわけないしなぁ。
でも、まぁ、本人が大丈夫と言っているんだから赤の他人の私がこれ以上関わるのもおかしいか。
「じゃあ、気をつけてね」
「……ありがとう」
それから、私は駅へと向かい、電車を一本乗り遅れてしまった。
「あぁーあ。あともうちょっとだったのに………まっ仕方ないか」
私はため息一つついて、大人しく電車を待ち、いつもより一本遅い電車に乗って、家へと向かった。
懐かしいものを見たなぁ。
こうなる前の思い出だぁ。
ここからの記憶がないんだよなぁ。
多分、この後電車脱線事故に巻き込まれて、死んじゃったんだろうけど。
その死の記憶が全くない。
いや、思い出したい訳じゃないけど。
痛みとか恐怖とかの記憶が全くないのも変な気がする。
『私は子供じゃなかったでしょ。神様だから』
ふいに、乙女ゲームの神様の声がした。
一瞬、何のことが分からなかったけど、私が初めて会った時、子供扱いしてたことを思い出した。
でも、真っ暗な空間に、神様の声だけが響くってちょっと不気味。
「確かに、子供じゃなかったね。神様だね」
周りから変な影響を受けた可哀想な子供じゃなくて、私が死んでしまう元凶の神様だったね。
何かおかしいと思った。
というかそれだけのために、あの思い出を見せたのか。
神様の考えはよく分からない。
『何かトゲトゲした感じがする。あなたから』
トゲトゲって……
なんとなく分かるけど。
神様からそんな感覚的な言葉を聞くとは思わなかった。
いや、神様だから、感覚的なの?
まぁ、いいや。
『準備はいい?』
「OK!」
『入学式から始まるからね。主人公の親友としての役割はちゃんと果たしてね』
「彼女の言葉なんて覚えてないんですけど」
『主人公と親友になって彼女の恋の後押しをしてくれればいいの』
「分かった。それくらいする」
私が頷くと、辺りが光り出した。
眩しくて、目をあけてられない。
『じゃあ、今度こそ行ってらっしゃーい!』
“今度こそ”ね。
本当に何故あの記憶を見せたのか。
わざわざ送り出すのを遅らしてまで。
やっぱり神様はよく分からない。
疑問は頭に残りながらも私は新たな世界へと踏み出した。