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私では亜美へと恋の矢印を向けてください

 亜美が生徒会の手伝いをするようになってから、真城遼一と海斗君の攻防は激しくなった。

「「おはよう、葵ちゃん」」

「お、おはよう、海斗君、真城君」

 同時に挨拶してきた二人に、すでに火花を散らしてお互いを牽制しているのが見てとれて、私は押され気味に答えた。

「真城君、葵ちゃんが困っているから、席に戻ったらどうかな」

「稲垣君、君こそ葵ちゃんを困らせてるよ。席に戻りなよ」

 いや、私を困らせてるのは二人ともなんですけど。

 朝から私を挟んで口論なんかしないでください。

 教室の皆から視線が痛いぐらい刺さる。注目を集めていること間違いなしだ。

 しかし、真城遼一と海斗君の口論は収まらない。

「大体、稲垣君は亜美ちゃんと仲が良いんだよね。葵ちゃんのことは放っておいたら?」

 こればっかりは真城遼一に同意する。

 ついでに、あんたも私のことは放っておいて。

「いや、女好きと噂の君と、大事な友達の葵ちゃんを二人にするわけにはいかないよ」

 海斗の優しさは嬉しいけど、放っておいてください。

 むしろ、二人にしてくれた方がキッパリと真城遼一を追い払えるから。

 海斗君には負けじと真城遼一も反論する。

「女好きとは失礼な。可愛いと思った相手に可愛いって言ってるだけだよ。僕は一途なんだから」

「どうだか。全く信じられないね」

 ムスッと不機嫌そうに言った海斗君に同意するが、かばう相手が違う。

 私じゃなくて亜美でしょ。

 その唯一の助けになる亜美は現在生徒会にて拘束されているので、誰も助けてくれない。

 亜美は生徒会会長にこき使われてるので、早く帰ってきても疲れたように机に突っ伏してしまうし。

 ちょっと亜美に同情する。

 ただし、海斗君が亜美のところに行くので口論からは解放される。

 真城遼一は私から離れないけど、放っておいても、冷たくしてもいいのでどうとでもなる。

 だから、亜美、早く帰ってきて。

 ――結局、亜美が帰ってきたのは、授業が始まるちょっと前で私はそれまで真城遼一と海斗君の口喧嘩から解放されなかったのだった。

 いい加減にしてほしい。


 昼休みも放課後も私は真城遼一と海斗君の口論に巻き込まれる日々が続いた。

 昼休みは屋上でお弁当を食べるようになったから、更に二人の争いは激化した。

 さすがに放課後まで付き合ってられなかったので、二人を放って、さっさと帰ったけど。

 海斗君は友達だし、一応私のことをかばってくれてるみたいなので、しばらく我慢していた。

 しかし、私を挟んでの二人の口論が一週間続いたある日の昼休み、とうとう私は我慢できずにこう言った。

「いい加減にして。二人とも私じゃなくて、亜美のことが好きなんでしょうが。亜美を放っておいていいの? 生徒会にいるんだよ。あの格好いい生徒会長のそばだよ。亜美が生徒会長に惚れちゃうかもよ?」

 私はいくら格好良くても人使いの荒い俺様男は勘弁してほしいが、亜美はそうでもないらしい。

 気になっているっぽいし、生徒会長の頼みを聞いて、今まで頑張ってるみたいだし。

 誰もいない屋上なら、大声で話しても此処にいる二人以外には聞こえないだろうからと、私は思いきって言った。

 しかし、その割には二人の反応は鈍かった。

「それは分かってるけど。生徒会だよ? 簡単に生徒会員にはなれないし、それ以外もなかなか会えないし」

 難しそうな顔で言い訳めいたことを言うのは海斗君だ。

 ったく、このヘタレめ。

 そんなんだから、十年以上想っていた大事な幼馴染みを、ぽっと出の女好きクラスメイトとか、俺様先輩生徒会長に奪われるんだぞ。

 ゲームでも、そっか、おめでとうと言うぐらいの彼だった。

 誰かに奪われるなら、自分のことを好きにさせてみせるぐらいの根性見せろよ。

 で、私のことはすっかり忘れて放っておいてよ。

「今は葵ちゃんが気になっているから別にいいよ」

 訳分からんぐらいあっさりと言うのは真城遼一だ。

 亜美のことはどうでもいいなら、海斗君が亜美に告白しようとしてもほっといてよ!

 海斗君がダメで、生徒会長は良いのか?

 第一、私の何処が気になるって言うのよ!!

 あれか? ズバズバ言いたいことを言う私が珍しいとか、自分のことを好きにならないから意地になってるとか。

 そんな漫画とかでよくあるパターンか?

 ふざけんな!

「葵ちゃん、顔恐いよ」

 海斗君にちょっと引かれながら、指摘された。

 ……しまった。つい、心が荒れた。

「ごめん。つい」

 誰のせいだと思ってるのと怒鳴りたかった気持ちを抑えて答えたが、抑えきれなかった気がする。

 海斗君の顔がまだひきつっているから。

「とにかく、稲垣君は亜美ちゃんを追いかけたら? 生徒会長も手伝いをする人が増えた方が喜ぶんじゃないかな?」

「そうだね。関先生に言っておくよ。亜美を生徒会に薦めた本人らしいし」

 まるで鬼の首を取ったかのように言う真城遼一に、とりあえず同意して海斗君の引き離しを試みた。

「そうなんだ?」

「うん、そうそう。元は生徒会長から頼まれてたんだけどね。関先生から再度生徒会の手伝いを申し込まれたみたい」

 意外そうに尋ねる海斗君に、私は首を縦に振った。

 実際は亜美からちゃんと聞いた訳じゃないけど、私が先生に話した数日後にああなったということは、関先生が関わっていることは間違いない。

「ふうーん。そうなんだ。……関先生何したいんだろ」

 海斗君は最後にボソッとつぶやいたため、聞こえなかった。

「え、何?」

「いや、別に何でもないよ」

「そう。どうする? 海斗君」

 聞き直したが、笑顔で否定されたので気にしないことにして、別のことを聞いた。

「じゃあ、関先生にお願いしようかな」

「うん。分かった。頑張って告白してね、海斗君。応援してるから」

 亜美が海斗君を好きになる可能性が低くても、海斗君の友達としては応援している。

 亜美も俺様男よりは気がおけない優しい幼馴染みの方がいいかもしれないし。

「ありがとう、葵ちゃん」

「もし振られちゃったら、慰めてあげるよ。友達として。あ、なんだったら新しい相手も見つける手伝いもするから」

 友達としては海斗君はいいけど、恋人としては見られないので、ごめんね。

 だから、私を挟んで真城遼一と喧嘩することだけはやめてね。

「……うん。ありがとう」

 少し驚いたようにしながらも海斗君は答えた。

 今度は真城遼一は何も邪魔しなかった。

 難しい顔で考え込んでいた。

 気になるが、関わるとろくなことがないので、放っておくことにした。


 こうして、海斗君は関先生の後押しもあり、生徒会の手伝いをするようになった。

 亜美と仲良くやってるようで何よりだ。

 まあ、ゲームと違い、そんな簡単にいかないのが現実で。

 ――私はとある相談をされるのだが、その答えはとんでもない騒動を引き起こすことになる。

 私がそれを身をもって知るのはもう少し後のことだ。


たくさんブックマークや評価、読んでくださりありがとうございます。

まだ続きますので、よろしくお願いします。

更新は遅いので、申し訳ありませんが気長に待っていただけたらと思います。


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