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せっかく相談したのに

「いきなり黙ってどうしたの?」

 私が神様に文句を言っていると、怪訝そうに、真城遼一が顔をのぞき込んできた。

 顔が近い!!

「あ、もしかして、一緒に帰る気になった?」

 ふと思い付いたように言った彼はにんまりと笑った。

「いや、違うから。ならないから」

「じゃあ、何ー?」

 神様に助けを求めてました。

 心の中で答えてると、教室の扉が開いた。

「水原ー。いるかー?」

 来た!! まさに天の助け!

 気だるげな声と共に入ってきたのは、関先生だった。

 意外な相手だけど、この際、誰でもいい。

 早く助けて。

 私のすがりつくような視線を受けても関先生はいつもの気だるげな調子で口を開いた。

「あー。水原、お前、日直だろ。日誌書け」

 机まで来て、先生は日誌を置いた。

 普通ならお断りしたいところだが、今は助けになる。

「もう一人は帰っちまったみたいだしな」

「分かりました」

 私は先生に返事した後、真城遼一に向き直った。

「そういう訳だから、先帰って。じゃあね」

「えー、別にそれくらい待ってるよ?」

 せっかく別れを切り出せたというのに真城遼一はまだ食い下がる。

 今、その優しさはいらない。

「あー。水原、ついでに、俺の仕事も手伝って」

 また先生から助け船が来た。

 一も二もなく、私はその船に乗り込んだ。

「分かりました。いいですよ。ほら、遅くなるし、帰って」

 私がそう言うと、しばらく関先生をジッと見つめた後、真城遼一はあきらめたように席を立った。

「じゃあ、またね」

「もう、これからもないから」

 私の返事を気にすることなく、真城遼一は去っていった。


 真城遼一が去っていってから、私は深いため息をついた。

 全く、しつこいし、疲れた。

「どうした、ため息なんてついて」

 私の様子を見た関先生が尋ねてきた。

 なんかちょっと意外。

 面倒そうなことは避けそうだったから、無視するかと思った。

 まあ、関先生が助けてくれた訳だけども。

「まあ、色々厄介なことになってて」

「ふうん。厄介って?」

 事情が複雑すぎて説明をあきらめた私の簡潔な言葉を、関先生は掘り下げてきた。

「あー、その、関先生、話長くなりますよ?」

「別に、いいぞ。話くらい聞いてやる。相談にも乗ってやるし」

「なんか意外ですね。相談とか面倒くさがって、しなさそうだったのに」

 率直な私に、関先生は呆れたような視線を向けた。

「お前な、俺を何だと思ってる。仮にも担任の先生なんだから、それくらいするぞ」

 確かに、一般的にはそうかもしれないけど。

 関先生はなんか初対面から一般的な先生とは違ってたから、しなさそうだなって、思ってた。

 言わないけど。

「えーと、すいません。関先生もちゃんと先生なんだなって、思っただけです」

「それ、フォローになってないぞ」

 あ、失敗した。

「そんなこと言っていると、相談乗ってやらないぞ」

 ニヤニヤしながら、関先生は言い放った。

 やっぱり先生っぽくない。

「えー! まあ、いいですけど」

 別に先生に相談しても変わらなさそうだし。

「いや、お前、そこは焦って、関先生お願いしますって、頭下げるところだろう」

 何故か、先生の方が焦って私を引き留めてきた。

 なら、相談に乗らない、とか言わなきゃいいのに。

「だって、相談しても変わらなさそうだし。まあ、いいです。先生が聞いてくれるなら、話します」

「おう。なんだ?」

 まだ何か言いたげだったけど、私が話し出したら、関先生は黙って聞いてくれた。

 名前を出していいか迷ったけど、担任の先生だし、見てればすぐ分かるかと思って、全て話した。

「ふうん。そうか」

 話終わった私をじっと見て、関先生はそれだけ言って、考え出した。

 あら、案外真剣な顔で、考えてくれるんだ。

 しばらく考えた後、関先生は顔を上げた。

「よし、俺に任せておけ!」

 関先生は笑顔で、自信満々に宣言した。

 まあ、そこまで言うなら、任せましょうか。

 これ以上、厄介なことにはならないだろうし。

「じゃあ、よろしくお願いします。関先生」


 そうして、数日が過ぎた。

 関先生は何してるのか、真城遼一の反応は相変わらず、私に迫ってくる。

 亜美も変わらず、それを見て、笑ってるだけ。

 本当に関先生に何してるのー?

 不思議に思ってた放課後、先生に呼び足された。

 呼び足された屋上に行くと、何故か海斗君がいた。

「あれ? 関先生は?」

「さっき、職員室に戻ったよ?」

 キョロキョロと周りを見渡しながら言った私の質問に、海斗君が答えた。

 関先生、何したいんですか。

「えー、何で?」

「えっと、それは俺に聞かれてもこまるよ」

 海斗君は困ったように笑った。

「しかも、何で海斗君がここにいるの?」

「えーと、葵ちゃんが俺に話があるんじゃないの?」

 私の質問に、海斗君は何故かはにかみながら、少し気まずそうな顔で、そう答えた。

「え?」

「え?」

 さっぱり訳が分からなくて、思わずぽかんと海斗の顔を見つめると、海斗君も戸惑ったように首を傾げた。


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