生きる、生きて、生きよう
100人も入ることが不可能な児童養護施設にはお金があまりあるわけではない。彼女は畑の持ち主に会いに行き、頭を必死に下げた。
「お願いします。私にこの畑を1つ譲って頂けませんか?」
顔が広いリアは、すぐに承諾された。但し、条件があった。
“必ず何があっても子どもと施設を護る”ということ。彼女は泣きながら何度も何度も頭を下げた。それに入居者全員分にトウモロコシを提供してくださった。
リアは1人で一輪車にトウモロコシを乗っけて、施設へ帰った。
「皆、ただいまー」
リアが帰ると小さい子どもたちはリアの名前を呼びながらすぐにバタバタと寄ってくる。
「リア母さん今日は何か貰って来たの?」
「トウモロコシよ。皆感謝して頂くのよ」
周りを見渡しながら告げる。10歳の女の子が100本も持つのは重かったろうに。
「ごめんリア。俺たちも手伝えば良かったよな」
リアより上の子が気を使い、優しい声をかけてくれる。
「良いの良いの。気にしないで」
しかしリアはいつの日かとても疲れ切っていた。100人もの入居者面倒を見て畑も耕し、料理や家事もして生きていかなければならない。もう一つ施設を増やせるお金の余裕が無い。施設を増やすと一つメリットがある。大人の労働者が増えること。リアはどうすれば増やすことができるのか考えた。まずはお金が必要だ。
その日の夜良いことを思いついた。私より年上の人がいるんだから、家事とか手伝ってもらえば良いんだ。アルバイト代は出せない可能性は高い。だが、20歳になったら施設を出て独立しなければならない。1人暮らしをして1人分の食費を稼がないと生きていけない。働くということは.どんなに大変かをリアが一番良く知っている。
夕飯にトウモロコシを茹で、皆で美味しく頂いた。リアの分は無い。それを心配した18歳の一番上の子がリアに半分分けてくれた。
「……いらないわ。私は大丈夫だから」
嘘。本当はかなりお腹が空いている。
「良いから!俺お腹いっぱいなんだ」
この子も嘘。お腹いっぱいな訳がない。優しい嘘。
「ありがとう……」
リアはほんのり微笑み、トウモロコシをかじった。近所の方から頂いたトウモロコシ。本当に美味しかった。甘い甘いトウモロコシ。良く噛んで頂いた。
「皆、美味しかったね。今度皆でお礼を言いに行きましょう」
「はーいっ」
「なぁ、リア……俺たちも何か手伝う事はないか?」
その夜、リアが考え事をしているときに声をかけてきた上のお兄さんお姉さん。自分から言おうとしたのに彼らから聞いてきた。
「私も考えてはいたの。だけどお給料もあげる余裕がないのよ……」
「お給料なんかいらない。俺たちはリアのために何かしたいんだ」
リアはその言葉に泣きそうになった。
「ありがとう……皆。じゃあ明日からお願いするね」
リアは初めて上のお兄さんお姉さんに当番制というものを付けた。食事、洗濯、食器洗い、小さい子たちのお世話などの種類分けをして少しやることが無くなり楽に生活を送ることのできるように感じた。
翌日の朝、事件が起きた。
「あたしの下着触らないで!」
「なんだよ、折角人が洗濯しようとしてるのに」
リアは慌ててその声がする場所へと向かう。
「何よ?どうしたの?」
リアには何が何だか良くわからなかった。
物心が付いた女の子は男の子に下着を触られるのが不快だったみたいだ。それを聞いたリアはどうすれば良いのかを考えた。