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春のうたかた  作者: 四季
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春と秋

なかなか天青が戻らないので、春隆は清秋にわかれを告げて通りを歩いていた。ハツの話では、何処かの茶屋にいるらしい。行けばわかると思ったので案内は付けなかった。

結果、彼女はすぐに見つけたのだが・・・


共にいた彼らは何者だったのだろうか。


青年に、少年と少女。にこやかに話しているようには見えたが。

見えた、というのには理由がある。声を発していなかったのだ。


「謎が増えるばかりだな・・・」

「ハルさん?」


隣で首をかしげる顔を見下ろす。数珠と同じ色の目をした彼女。


「・・・いや」


師範に聞いた話が全て本当であるならば、不可思議な事の数々にも説明がつく。

本当であるならば、彼女はいつまでもここに置いてはならない。

本当であるならば・・・


「僕は、既に罠に陥っているのかもしれない・・・」




















『春』が走っていった方を見遣って夏は秋を見上げた。


「本当に、春というのはぼけぼけたやつが多いのだな。まさか使命を忘れるなど・・・・・・」

「うーん、あれはもう、性質だからねえ。でも、やはり愛らしい」


秋の言葉に、夏が咳ばらいをして眉を上げた。


「秋が春を好くのもまた宿命か」

「逆だからね。惹かれるんだよ」


諦めたような表情で、秋が夏の向日葵を持ち上げた。みるみる枯れて落ちる花びらに、視線も落とす。


「春がいれば、種が花になる。僕が触ると花が種になる」

「しかし不思議だな。そうすると、私と冬が愛し合ってお前達を成すように、お前達が何も成さないのは」

「ああ・・・・・・それか。まだ知らないんだね」

「やはり理由があるのか?」

「春は可憐で愛らしいでしょ。容姿もだけど、雰囲気がそうなんだ。だれかを幸せにすることを自分の幸福としていて、すべてに対して優しく、穏やかでふわりとあたたかい」

「惚気じゃないだろうな」

「違うよ。ただ、それが故に過ちも犯しやすいんだ」

「過ち?」

「・・・人間と恋に落ちる。・・・でしょう」

「冬ちゃん正解。そうなんだよね」

「それが、どう関係があるのだ?」

「春は人間と結ばれちゃうから、僕ら秋はあぶれるわけさ。生涯旅人でおしまい」

「ほう・・・・・・」

「君達も大きくなって遠く海が渡れるようになったら、西に行くといい。過ちを犯した春が沢山神話になってるから。外からこの国には、まだ弾圧されやすいから入ってこないけど」

「生まれた場所の人間に似せて擬態するからな。仕方ない。そういうお前は、異国の血が流れているようだが?」

「んー。僕は、大陸から来たからね」

「なるほど。よし、お前が良いというなら渡ろう。どうだ、冬?」

「行く」

「ん」


満足げに夏が頷いて、さりげなく夏と冬が手を繋ぐ。


「・・・ここにくる前に、面白い人に会った事があるよ」

「む?」

「最近ね。この国を一度ざぶざぶと洗濯するのだ!と言う人に会った。だから、君達が大きくなる頃には、この国も外との出入りがしやすくなるかもしれない。・・・ん?」


突然袖を引いた手に、秋は少し後ろを振り向いた。


「秋。禁忌を犯した春は、どうなるの・・・?」


冬が不安げな顔で山の方を見上げる。


「どうかな・・・。でも、歩みをやめた春は見たことも聞いた事もないから・・・。縁切りしてまた旅するんだよ、きっと。聞いた話によると、この国にいる春は、去り際に“涙”を流すらしいけどね」

「涙、か・・・」


夏は感慨深げに頷いた。


「そうだ、夏と冬は、ここらで何してるの」

「我々はまだ幼いからな。気を養っているところだぞ」

「なら、まだ当分いるんだね?」

「そういう事だ」

「わかった。じゃあ、僕も少し離れて滞在するから、ひと月くらいしたらまた会おう」

「春のところへ行くのだな」

「うん。連れださないとね」

「それは良いが・・・対のないお前が滞在して、問題はないのか?」

「大丈夫。・・・大きな夏が、近くまできてるでしょ」


秋の言葉に、夏と冬がくんと空を嗅いだ。


「・・・ほんとだ」

「ふむ。確かに。では秩序は崩れないな」

「そういうこと」

「わかった。ではまた」


夏が手を振って店先を離れる。


「あ、待ってよ夏」

「なんだ?」

「君さ・・・普段から、その・・・人間に紛れてる時もそういう口調なの?」


秋の質問に夏が眉間にしわを作った。


「・・・・・・そんなわけないだろ!餓鬼のフリしてなきゃ面倒なヤツに絡まれて俺だって苦労してるんだからなっ!!はやく行こう、影冬っ」

「待って、夏樹お兄ちゃん。またね、秋のお兄さん」

「僕は秋でいいよ」

「秋ー!またなーっ」

「はいはーい。・・・・・・ふふ」


兄弟のフリをし仮名で呼び合う二人を、秋は微笑みながら見送ったのだった。

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