3/39
ひろいモノ:弐
春隆は町の外れに一人で暮らしている。町ほどではないが、小集落のような村は、俗世から離れて静かに暮らしたい人間にはうってつけの場所だった。
「布団、布団・・・、と」
納屋に来客用の布団はあるが、干さないで使えるほどマメに手入れをしていない。
となれば、使えるものはひとつだ。
消えかかっている囲炉裏に歩きながら拾った小枝を突っ込み、その側に、座布団を枕がわりに女を横たわらせる。
「布団を敷くから、ちょっと待っていて」
寝室からまだ敷いたままだった布団を引っ張り出し、ずりずりと居間の端に敷く。未だ目を覚まさない女をその中に包み込んで、春隆は隣に刀を支えに座り込んだ。まだ警戒はしていたが、これに襲ったり逃げるような残っているようには見えない。その証拠が、幼子のような無防備な寝顔だ。
囲炉裏に枝を足して、それを眺める。
(この分じゃ、当分は目を覚まさんだろ)
春隆はもう一度布団をかけ直し、出掛ける事にした。